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メディアグランプリ

モニタリングはまだ終わらない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イマムラカナコ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「それって、治らないんですか?」
 
まるで医療ドラマのワンシーンだった。目の前が、文字通り真っ暗になった。
 
先生に告げられたのは、聞いたこともない病の名前。原因すら不明という。
まさか自分がそんなことになるなんて。一体何の罰が当たったんだろう。答えの出ない問いを、心の中で繰り返した。
 
「これから生涯付き合っていく病気です。完治は望めないので、手術をするかしないかは、本人の意思です。ただ、数年後悪化したときに手術を望んでも、もう機能は回復しないと思って下さい……」
病状について、淡々と説明していく先生。
 
あまりに驚くと、人は頭をシャットダウンするらしい。
もう先生の声は、遠くにしか聞こえない。
それどころか、私の頭は勝手に現実逃避モードにスイッチオン。
そうだ。きっとこれは、「モニタリング」みたいなドッキリカメラに違いない。 そのうち誰か、診察室の扉からカメラを持って笑いながら入ってくるにちがいない。
そんな妄想まで引き起こしていた。
 
テレビで見ている「モニタリング」は、仕掛け人が、芸能人や一般の方にあり得ない状況を設定して、そのリアクションを見る番組だ。
そして、クライマックスには、必ずネタばらしがある。
それなら神様、お願いだから早くネタばらしをしてください。
願っても、その時は訪れては来なかったけれど。
 
平凡な日々を過ごしていた私に異変が起こったのは、病院に行くひと月前。
指先に力が入らない。物を何度も落とす。パソコンを打つ手が震える。それに、船酔いのような気分の悪さ。ズキズキする腕の痛みが日に日に酷くなっていく。
これは何かがおかしい。
ひと月我慢した挙句、ようやく病院へと向かった。
 
悩んだ末に、少しでもリスクを抑える方に賭けて手術を選択した。
術後2、3日は困惑の日々が続いた。
背もたれがあるにもかかわらず、真っ直ぐ座ることすらできない。着けている装具に慣れずに、寝返りを打つのもままならない。
なかなか治まらない痛みと共に、どうしたらいいのか分からず情けなくなった。
 
1週間ほど経つと、リハビリが始まった。少しでも早く筋力を取り戻したい一心で、毎回指定された時間よりも早く訓練室に向かった。
まずは日常生活で支障が出ないようにしたい。
そうしないと、家に帰っても家族のお荷物になってしまう。
「そんなに頑張らなくていいよ」
そう先生が心配するほど、私は焦っていた。
 
少しずつ、少しずつ。呪文のように繰り返す。
挫けそうになる自分に発破をかけながら、トレーニングでクリアできた回数を毎日記録した。諦めずに努力することって無駄じゃない。
粘り強く続けることで自信がついていき、少しずつ筋力を取り戻していった。
 
私の病は、見た目には分からない。
だが、体調が悪くなり痛みが酷くなっても、それを治す薬がない。痛み止めが効かないこともある。
自分の体なのに、悔しいが自分でどうすることもできない。
 
迷った末に、私は20年以上続けた仕事を辞めた。
 
仕事を辞め、ここ1年で私の環境はすっかり様変わりした。
もちろん収入が減ったことは、我が家にとっては大打撃だが。
 
でも、悪いことばかりではなかった。
病気になったことがきっかけで、手に入れたのは時間と心のゆとり。
些細なことに感動できる余裕が生まれた。優しい音楽を聞くと心が穏やかになるように、今は、昼間の柔らかな光が私の心を解いてくれる。
 
学校から帰ってきた娘と、おやつを食べながら語り合う時間が持てる。日中ゆっくりと献立を考えながら、買い物ができる。もう、スーパーの閉店間際に、小走りでお惣菜を買うこともない。終わらない仕事に追われて、休日に職場に行くこともない。
 
そう、悪いことばかりではなかった。
初めは、なぜ私がこんな目に遭うのかと嘆いていた。
以前とは違う自分の体。
だが、何もできないわけじゃない。まだ動く体の有難味。
そして、できないことでなく、できることを貪欲に探すようになった。
また、できないことは、人に助けを求められるようになった。
試練は、私の心をシンプルにし、心の整理整頓が以前より上手くなった。
 
幸いなことに、今のところ病状は現状維持。
無理さえしなければ、日常生活に支障はない。
私の体を常に気遣ってくれる家族にも感謝だ。
 
もちろん病気になったことは、不運だと思う。
この先、病状が悪化する日が訪れるかもしれないし、不安は常につきまとう。
でも、不運と嘆いてばかりはいられない。
 
常に前向きにとはいかないが、神様のモニタリングに出演しているつもりになってみよう。
以前のように現実を受け入れられずにそう思うのではなく、今度は怖がらずに、そう思ってみよう。誰かに見守られていると思うと、少し背筋が伸びる気がする。
病気になったことが、モニタリングの設定なのだ。そして、私がどうリアクションするか、どういう風に乗り越えていくのかを試されているのだ。
 
それならば、開き直って、私にできる限りのベストなリアクションをしていこう。
自分の力でどうにもならないことの中で、どう生きていくのか向き合っていきたいから。
ネタばらしをされた後、笑えるように。
 
 
 
 ***
 

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2020-06-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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