メディアグランプリ

農家民泊へいらっしゃい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三木 幸枝(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「やっべえ!」
男子高校生の声が響く。
「やっべえ! ガチかえる! ガチかえる!」
見ると、風呂上がりのタオル一枚で、小さなあまがえるにスマホを向け写真を撮りまくっている。
「俺、本物のかえる初めてよ。 すっげえな! お風呂入ったら、窓にぴったりくっついてたんだよ。 すげえな!」
 
星空に感激していたのは、関西から来た中学生だ。
「こんないっぺんにたくさん、信じられん・・・・・・」
当初おとなしそうに見えた少年は、うっとりとした顔でつぶやいた。
明け方なら、空気も澄んでいるからもっとよく見えるよ、伝えると、ぜひ見たいとのこと。スマホのアラームを午前4時にセットしていた。
 
私も、気になって朝4時に起きた。すると少年はもう外に出て星空を眺めていた。
ちょっと肌寒かったので、彼と私の分のストールを持ち私も庭にでた。
私に気がついてこちらを向いた彼は、なんだか夢を見ているような顔だった。ストールを巻いて見上げた空には、昨晩よりさらに多い数の星々がくっきりと見えた。
私も一緒にしばらく眺めていた。すると、スーッと星が流れた。
「えー! すげえ! びっくりした! 俺、流れ星見たの生まれて初めてや」
声がはしゃいでいた。
「ここに来てよかった」という少年の言葉に、私も胸がいっぱいになった。
 
私たちの住む徳島県のにし阿波地域には、主に春と秋、関西から中学生が、関東からは高校生が農家民泊体験にやってくる。
険しい山間で受け継がれてきた循環型の伝統農法や、山里の暮らしを地域資源として、急傾斜地での農作業や田舎料理作りなどを体験できるプログラムが売りだ。
 
私の実家も修学旅行生の受け入れ家庭だ。今年で3年目。私もときどき受け入れのお手伝いをしている。
 
都会の中高生がうちにやってくるなんて!
当初、田舎者の両親や私は、内心おっかなびっくりであった。
 
なんにもない田舎をばかにされるんじゃないかなとか、お高く止まった子や擦れた子がやってきて、話のキャッチボールもできなかったらどうしよう……、などなど。
 
しかし、そんな心配は無用であった。大阪はミナミのど真ん中にある中学校や、東京は渋谷にある高校、また、偏差値がものすごく高い進学校の子など、さまざまな生徒を受け入れたが、みんなもれなく素直で、きらきらした瞳で田舎暮らしを楽しんでくれた。
 
1泊2日(長くても2泊3日)の田舎体験は、野菜の収穫や川遊び、また、母特製のよもぎだんごを一緒に作るなどで、ここで育った私には、いつもの、なんでもないことであった。けれど、都会育ちの彼らには、とても新鮮に映るようだ。
 
「川がきれい!」と言った子に話をきくと、これまで濁った川しか見たことがなかったそうだ。川で遊ぶとか泳ぐといったイメージがなく、澄んだ川に驚いたそう。日が暮れるまで、河原で石切に興じていた。
 
畑になっているトマトやキュウリを収穫した子は、夕食時に何杯もサラダをおかわりした。今まで食べてきたものと全然味が違うそうだ。
 
家にきてすぐは、緊張の面持ちであった子も、帰りは、ものすごくリラックスした顔で「すごく楽しかったです! また来たいです!」と言ってくれる。短い滞在なのに、お別れの時はお互いに涙をにじませることも。
 
学校の先生方も、この農家に宿泊する教育旅行を、貴重な体験で教育的効果が高い、と大変評価してくれているらしい。その証拠に受け入れの希望数は年々うなぎのぼりだ。
 
初めは、田舎の体験をさせてあげる、大自然の恵みを味あわせてあげる、核家族が多いだろうから、祖父母世代との交流をさせてあげる……といったように、こちらから多くのものを提供してあげるといったイメージであった。
 
しかし、受け入れを初めてみて、そのイメージはがらりと変わった。どちらかというと、受け入れ側の私たちが元気をもらっているのだ。
田舎暮らしに素直に驚き楽しむ子どもたち。その様子をみていると、私たちの田舎での暮らしって、実はとてもすばらしく得がたいものなのではないかな、と思うようになった。
 
それまでは、田舎は都会に劣っていると思いがちであった、そして憧れながらも、都会の人は冷たいといった偏見も持っていたように思う。
けれど、実はそうではない。
自分が何気なく享受している自然の恵みとは、とても尊いものであるということ。そして、都会の子どもたちも、田舎の子どもと同じように素直でかわいいということに気づくことができた。
 
高齢の両親も、孫の世代の子どもたちと一緒に過ごすのがとても嬉しいようだ。
後日、学校経由で届く御礼の手紙を何度も読み返している。あの子はこうだった、この子はこうだったと思い出話に花を咲かせている。ニュースで子どもたちの学校のエリア付近のことが取り上げられると、他人事ではない様子で見入っている。
 
農家民泊は、子どもたちのみならず、受け入れ家庭も元気にする。
とてもすばらしいプログラムだ。
血縁でも知り合いでもない子どもたちとの交流が、こんなにも気持ちを豊かにさせるとは。
 
今年はコロナのせいで、春季の受け入れが全て無くなってしまった。秋季の実施は未定であるが、是非再開して欲しい。はじけるような子どもたちの笑顔に、はやく元気をもらいたいと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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