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アンサング・シンデレラな私たち


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:臼井真知子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「アンサング・シンデレラ」といえば、石原さとみさん主演の今期の連続ドラマだ。石原さとみさんが病院薬剤師を演じ、医師や患者との間に起こるいろいろな問題に向き合うという内容だ。
「アンサング」は、英語で「unsung」と綴り、「sing」の過去分詞形「sung」、そこに否定の「un」をつけて「unsung」。もともとの意味は「歌われていない」、そこから「報われない」「表に出ていない」という意味を持ち「unsung hero(アンサング ヒーロー)」、影の功労者、縁の下の力持ち、という風に英語ではよく使われる。
なるほど、「アンサング・シンデレラ」は普段医療の現場ではあまり表に出ない薬剤師に焦点を当ててドラマにしているわけだが、今日は、薬剤師よりももっとアンサングな「臨床検査技師」という仕事にスポットを当てたい。
 
臨床検査技師は一言でいえば「地味」。
一般の人に、病院で働く職業を挙げてくださいといったら、医師、看護師、薬剤師、レントゲン技師、理学療法士、えーと、あと何だっけ、となると場合が多い。臨床検査技師、あー、聞いたことあるかも? という人もいるが、実際どんな仕事内容か説明できる人はあまりいないのではないだろうか。私の家族でさえ、長らく私が何の仕事をしているのかを理解していなかった。
そんな臨床検査技師だが、最近、幸か不幸か認知度が上がってきた。昨今テレビのコロナ報道でPCR検査という単語をよく耳にするだろう。PCR検査をする人、まさに「臨床検査技師」なのだ。白衣を着て、試験管を振ったりしている人、それです。血液検査や尿検査、身体から出るものは何でも検査する。
患者さんの症状だけでは病気の診断ができないので、血糖値を検査して糖尿病を診断したり、コロナウイルスを身体の中から発見して、コロナの診断をする。結構重要な任務を背負ってそうだが、病院に来る患者さんの前に出るシーンは少ないので、認知度が低い。
 
そんなアンサングな私たちはドラマの主人公になれないのか? と思ったが、臨床検査技師にドラマチックな展開は一切不要、トラブルが起きないのが正しい姿なのだ。
日々淡々と業務をこなし、「今日も何事も無くてよかった」と、ドラマが起きなかった一日にほっと安堵し、仕事を終える。
 
テクノロジーの進化によって、多くの検査は自動化された機械がやってくれるので、医療業界の中では悪い意味を込めて「機械のボタンを押すだけの人」と揶揄されることすらある。が、実際には、ひとつの検査を滞りなく終えるには、めちゃくちゃ沢山のトラップがあるのだ。
 
(ここからの話は、分かりやすく伝えるためで実際の業務とは多少異なります)
試験管立てに10本の血液が並んでいる。私が検査したいのは佐藤さん。佐藤さんの隣には斉藤さんの血液が並んでいる。佐藤さん佐藤さんと思って、手に持った血液が齊藤さんでヒヤッとする。うそ? なんで? satoとsaitoを見間違えた? 自分では集中しているつもりでも、後ろで同僚が話していたり、リーンと電話が鳴り、ピーと機械のアラームが鳴り、気が散るポイントが山のようにある。
 
さて、佐藤さんの検査を始めましょうと、薬品AからEを順番に入れる。A、B、Cと入れたところで、次はDだっけ? あれ? ほんとにCを50ml入れたんだっけ? と焦る。一滴の血液、失敗は許されない、と思うと心臓がドキドキする。自分では作業に集中しているつもりでも、ふと前日に彼氏とケンカしたことや、母に言われた小言を思い出し、一瞬、集中力が途切れる瞬間があるのだ。そんなのプロじゃない、という人もいるかもしれないが、人間だもの、毎日8時間を集中して過ごすって結構シンドイ。
 
ともあれ、無事に検査を終え、結果を医者に渡す。
しばらくすると電話が鳴り、医者から「この結果本当に合っているかな? 患者さんの症状と合わないんだけど」なんて電話がかかってくると、ビルから飛び降りたくなる。
間違えてない、私大丈夫、と思って作業場に戻る。よーく見ると、薬品の製造番号がXXYだ! まずい、XXXを使わないといけないのにどうしよう、焦る。同じパッケージなのに製造番号XXXとXXYではわずかに成分が違ったりするので、事前に機械の調整をしなきゃいけないんだった! この後の100人分の検査がパーになる! この後の各部署へのお詫び行脚を考えると吐き気がする。
ミスをして上司から厳しい叱責を受けることもあるが、怒られたことよりも、なんでこんな単純なミスを起こしてしまったんだろう、バカヤローと自分を責める。
 
臨床検査技師の仕事は、こんな作業を一日に何百件も繰り返し、ヒヤっとして、ハッとすることの連続だ。
1000回同じ検査をして、1000回同じ結果を出すこと。
傍から見ていると単なる流れ作業をしているようにしか見えないのだが、たった一回のミスを起こさないために、何気ない作業の一つ一つに神経をすり減らしながら仕事をしている。
近頃は、コロナウイルスによる医療従事者への差別や偏見などが取り沙汰され、本当に腹立たしく思うが、全ての医療従事者はシンプルに「みんなに元気になってほしい」という想いで仕事をしていると思う。
 
私は今、現場を離れ別の仕事をしているが、病院で働いていた当時を振り返ると、身体が自然にいろんなことに気配り目配りしながら日々仕事をしていたのだなと感じた。アンサングだけど医療の現場に欠かせない臨床検査技師、そしてこのコロナの状況下で働くすべての医療従事者の皆さんに改めて深い感謝と敬意を表したい。
 
 
 
 
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2020-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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