不思議な体験から始まった、夏休みの自由研究で分かったこととは?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:石川サチ子(ライティング・ゼミ日曜コース)
それは、ある年の夏休みの出来事でした。
ジリジリ蝉の鳴く、炎天下の中、プールから帰ると、見慣れない車がわが家の庭に停めてありました。ナンバーを見ると「函館」と表示されていました。
わが家は、東北の片田舎にあり、「函館」からは数百キロも離れています。
母屋の座敷からは、話し声が聞こえ、中を覗くと、見知らぬ大人が4人ほど、祖父母と何やら話をしていました。
トイレに席を立った祖母を捕まえて
「誰?」
と座敷の方を指して聞くと、祖母は
「お客さん」
と答え
「あいさつしなさい」
と言うので、渋々お客さんのいる座敷に行って、頭を下げると、お客さんの一人が
「お嬢ちゃん、何年生なの?」
と聞きました。
私は、「4年生」とだけ答えて、恥ずかしくなってその場を立ち去りました。
当時から私は極度の人見知りでした。
それから数日後、庭で飼い犬のポチと遊んでいると、家の前の道に白いライトバンが止まりました。祖母くらいの年配の女性が車から降りてきて、わが家の門をくぐり、「ごめんください」と言いました。
私が、ポチと一緒にその女性の傍まで行くと、女性は「こちらは、石川権兵衛さんのお宅ですか?」と聞きました。
私は、「そうです」と答えて、二階にいる祖父を呼びました。
その間に、女性は、ライトバンに一緒に乗っていた人たちを呼んできていました。
ライトバンの車のナンバーを確かめると、「練馬」と記されていました。
それから数週間後、横浜ナンバーの車で見知らぬ家族がやってきました。
このように、1ヶ月足らずの間に、わが家とは交流の無い、見知らぬ家族が続々とわが家にやってきたのでした。
彼らに共通していたのは、「祖父の名前を頼りに、住所も分からないわが家に、道の途中途中で何人もの人に聞きながらわが家にたどり着いた」ということでした。
なぜ、彼らが、祖父の名前を知り、住所も分からないような場所にわざわざやってきたのでしょうか。
当時、祖父は、60代でしたが、ずっと百姓。付き合いと言えば、親戚と近所の人くらい。他人に名前を知られるような理由は何一つありません。
わが家にやってきた見知らぬお客さんたちは、なぜ祖父の名を知ったのか、
その理由を、祖父母が話してくれました。
「亡くなったおばあさんが、毎晩毎晩、枕元に立って、何度も祖父の名前を言っていた」
「亡くなったお母さんが、朝方、2週間も枕元に出てきて、祖父の名前を言っていた」
見知らぬお客さんたちが、口をそろえたように言っていたそうです。
そして、会社の夏季休暇を利用してわが家を探し、訪ねて来たのでした。
この不思議な出来事は、当時10歳の私にとってわけがわからず、頭の中は大混乱。
「なぜ?」
「どうして?」
祖父母や両親を質問攻めにしていました。
祖父母たちは、しばらく考えて、言いました。
「お墓の区画整理かもな」
お墓の区画整理とは、その年の春に行われた、お寺の敷地の整備でした。
当時、お寺にあった墓地は、土の上に大小様々な墓石が散在している状態でした。
山の斜面に墓石があったので。お墓参りの前日から当日に雨が降ると、足元が滑り、転ぶ危険もありました。
それで、それらの墓石を一度全部取り除き、墓地をコンクリートで整備し、区分して、それぞれの家族の場所が割り当てられることになりました。
墓石を取り除く行程で、その場所に埋められた遺骨も掘り出し、それぞれの遺骨は、骨壺に移し、新しい墓石の下に置くことになりました。
その作業をする中で、うちのお墓の近くに、どこの家の墓なのか分からないものがいくつかあったようなのです。
半世紀以上も誰一人墓参りすることなく放置されたままでした。
そこで、祖父が、それらの墓石とその下に埋まっている遺骨を集め、わが家の墓石の隣に「無縁仏」として葬ると言いました。
当然、家族は大反対でした。
「何で、うちがわざわざ、どこの誰とも分からないような家の墓の世話をしなくてはいけないのか」
しかし、祖父は一度「やる」と決めたら、絶対に意思を曲げない人でした。反対を押し切って、わが家の墓石の隣に「無縁仏」を建て、その石碑の下に、よそ様の家の遺骨を葬ったのでした。
わが家に訪れた見知らぬお客さんたちが、祖父の名前を、夢枕で知ったのは、ちょうどこの時期と重なっていたようでした。
見知らずお客さんたちは、わが家に訪れた後、お寺まで行き、住職さんに過去帳を見せてもらい、わが家の無縁仏の下に眠る遺骨が彼らのご先祖様たちのものだと確認して帰って行ったようです。
それ以来、私は、この不思議な体験が、どういう仕組みで起きたのか、無性に気になって気になって仕方なくなりました。
「そういうものだよ」
と、大人たちに言われても、何がどう「そういうものなのか」分からなかったし、「分からなくて良いし、追求などする必要なない」と言われれば、怖いものみたさに追求したくなりました。
この年の夏に起きたこの不思議な体験は、夏休みの自由研究として、ずっと残ってしまいました。
毎年、ジリジリという蝉の鳴き声が始まると、「あぁ、今年も自由研究やらなくちゃ」と、にわかにスピリチュアル関連の本を読み出しています。
そして、あーでもない、こーでもないと、鈍い私の頭の中で色んなことを推測しては、まとまらない研究に行き詰まっています。
しかし、何十年も研究して少し分かったことがあります。
それは、この世界は、不思議と奇跡に満ちあふれている。
だから、生きていることは、どんな時でも面白い。
どんなことがあっても、生きていることは、面白いんですよ。
***
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