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営業はナンパから


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:黒原 拓朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「暑い……なんで、僕はこんなところにいるんだろう」
照りつける日差し、ビーチで騒ぐ人々の熱気。
 
僕は平日に湘南のビーチにいた。
 
さかのぼること2週間前、7月の終わりごろ。
部長が営業部の新卒3人を会議室に呼んだ。席に着くなり、一言
 
「お前らには営業としてのスキルが足りない」
 
確かにその自覚はあった。不動産会社で毎日必死に営業するものの、契約が取れない。
新卒だからとか、まだ営業を始めて2ヶ月だからまだ焦らなくていいと慰めの言葉をかけてくれる先輩もいたが僕は焦っていた。
同期が「真っ暗なトンネルをずっと全力疾走させられているみたいだ」と言っていたが、
本当にその通りだと思う。
 
部長が言うには営業とナンパは同じだと。
営業は知らない人に話しかけて、物件をもらう。
ナンパは知らない人に声をかけて、1杯付き合ってもらう。
 
そして部長は言った。
「今度の水曜日は由比ヶ浜で営業研修をやるぞ」
 
そして、僕は平日の真昼間に湘南のビーチにいる。
 
部長は海の家のVIP席にどっかりと腰掛け、ハイボールを飲んでいる。
始めからビーチでお酒を飲みたいだけだったのでは…と僕は思いつつも
営業研修と称した、湘南のビーチでのナンパ大会が幕を開けた。
 
最初は先輩と2人組になって、先輩の声のかけ方や話し方を学びつつ
実際にナンパをする。部長の待つVIP席に女の子を連れて来ることができれば合格。
 
新卒内でじゃんけんに勝った順に教わりたい先輩を選ぶ。
僕が一番最初に勝ったので、一番ナンパが上手いとされる先輩を指名した。
 
そして先輩とビーチに繰り出したのだが、先輩の調子が悪かったのか
足を止めてくれる女の子が全くいない。
 
1時間後、先輩は僕を足手まといだと判断したのか別行動でナンパしようと提案してきた。
「えっ、何も教わってないんですけど……」
と漏らした僕の嘆きは砂浜に吸い込まれていった。
 
それから僕は必死に声をかけた。
灼熱のビーチを歩き回りながら、声をかけ続けた。
でも相手は僕と飲むメリットが感じられないのか何度もお断り。
断られるならまだマシで、無視されることの方が多かった。
 
炎天下で熱中症になりかけながら、ふらふらしていると携帯に
「昼は全員でご飯をたべるから、戻ってくるように」
とメッセージが入っていた。
 
僕は「助かった……」と思いながら、皆のいるところへと向かった。
ちなみに僕が指名した先輩は昼ご飯にも来なかった。
 
他2人の同期は先輩と女の子を連れて来たと楽しそうに語っていた。
僕は誰も連れて来ることが出来なかったので、肩身の狭い思いをしながら話に加わった。
 
天国とも思える昼食の時間は終わり、ナンパ大会午後の部が始まった。
 
午後は僕が先輩に捨てられたため、別の先輩が指導役としてナンパの仕方を見せてくれることになった。
その先輩のナンパは営業の鏡とも言えるようなナンパで、かなり戦略的だった。
 
「まず部長のいる海の家に近いところでナンパしろ」
先輩が言うにはわざわざ遠いところまで行くのはこっちも女の子も疲れると。
 
「相手に頼むお酒やジュースは全部おごると伝えろ」
先輩曰く、相手にメリットを提示すれば自然とついてくると。
 
先輩の言っていることは理に適っていると思った。
僕が女の子だったら遠いところまで行くのは嫌だし、何より楽しくおしゃべりしながら
自由に飲み食いできるならば断る理由があるだろうか。
 
先輩が手本を見せてやると女の子に声をかけると
たった3組目で連れて来ることに成功した。
先輩にはあとは1人でやってみろと背中を押してもらった。
 
先輩からのアドバイスをもとに、居酒屋の客引きの如く
女の子に声をかけ続けた。
 
「お姉さん、一緒に向こうで楽しく飲みませんか」
「上司に連れてこいって言われてて」
「もちろん、飲み物代はこっちが払います」
 
そして、15組ほど声をかけたあたりだろうか
 
「仕方ないなぁ、じゃあ1杯だけね」
 
と2人の女の子を部長の待つ海の家へと連れて来ることができた。
30分ほど楽しく飲んで、女の子とは別れた。
 
同期は先輩達と離れて、2人で組んでナンパをしていたようだが
とうとう海の家には連れて来ることが出来なかったようだ。
 
ナンパ大会が終わった後、僕は確かな手ごたえを感じていた。
 
「ナンパと営業は全くの別物のように思えるけど、本質は一緒だ」
 
相手をどうやってこっちのペースに巻き込むのか、どのようにして興味を持ってもらうのか。ナンパも営業も試行錯誤する必要がある。
 
それからは毎日、反省と改善を繰り返しながら営業活動を行った。
そうすると真っ暗なトンネルにもたまに光が差すようになり、
数か月後、僕は同期内最速で契約することができた。
 
僕はナンパで真っ暗なトンネルを駆け抜けた。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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