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結婚式、やるのかやらないのか問題


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:シマザキ キミコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「なんで結婚式やらないの?」
久しぶりに会った友人にそう尋ねられた。
「え? やったよー」
私は携帯に入れておいた挙式写真をここぞとばかりに見せる。
友人は、若干納得していないという雰囲気のまま、その写真を眺めていた。
 
(ああ、こんな時のためだけにでも一応挙式しておいてよかったなぁ)
 
私は友人を眺めながらそんなことを思っていた。
私が行った挙式は親族のみが出席する神前式だった。
 
わかってる、本当は友人が『結婚式=披露宴』という意味で質問をしてきていることを。
だが、私がなぜ披露宴をやらないのかを説明したところで、下手に相手の価値観を否定するような流れになってしまったりするのが面倒臭くて思いっきり話を逸らしたのだ。
 
質問をしてきた友人は、都内の有名ホテルで盛大な披露宴を執り行っていた。
(彼女は普段クールでさっぱりした印象だけど、意外ときっちりした式をする人なんだな……)くらいの印象しかなかったが、冒頭の質問を受けて私の中の友人への印象はまるで違うものになった。
(そうか、この人の中では披露宴を行うのが当たり前なのか……)
(私より年下なのにな……まあ、そんなの関係ないのか……)
 
別に披露宴を否定しようとは思わない。
私もこれまで何人かの友達の結婚式にお呼ばれしては、幸せな門出を迎えた姿を見て感動もするし、涙することだってある。
テレビで幾多の困難を乗り越えながらも晴れの日を迎えた赤の他人にだって、感動して液晶画面に向かって拍手喝采を送ることだってある。
 
だが、それはあくまでも他人様のことだから楽しく拝見できるのであって、
自分自身を披露宴の真ん中に置きたいとは1ミリも思わないのだ。
 
まず、披露宴を開くための準備のシンドさったら無い。
誰を出席させるだのさせないだの、会場をどこにするのか、どんなお料理を選ぶのか、ドレスはどーだ、お色直しはあーだ、和装なのか洋装なのか、どんなイベントを用意するのか、BGMはどうするのか……
私にとっては考えるだけでうんざりするようなことのオンパレードだ。
 
そもそも、大した美女でも無い私がウエディングドレスを着ただけで、
突然、新垣結衣のように可愛らしくなるわけでもなければ、冨永愛のようなスラリとしたバディに変身できるわけでも無い。
 
なのに、そんな自分を宴の真ん中において祝っていただくなど、逆に拷問に近いとすら感じる。
そもそも結婚式やらなきゃダメ? というのが、私の立ち位置だった。
なので、結婚を報告したい友達とは、個別に小さな飲み会を開いてはゆっくりお話したりという時間を作っていた。
 
それでも入籍をした後になってから、
(さすがにウエディングフォトくらいはやっておいてもいいかな、お互い初婚なんだし、一応本当に結婚したという物的証拠として……)
(てか、結婚式って一応儀式じゃん?自分を主役にするっていう以外の意味ってなんかあるのかな……)
 
古来儀式には、それを執り行う人間に対する何かの作用があるから行われるのであって、ただウェディング産業が潤うために存在していたわけではないだろう。その真意を自分なりに考えてみたくなった。
 
そこで私が頼ったのは結婚した後の生活の不満を描いた主婦たちの掲示板やブログだった。なぜだろう、理由はよく分からない。
だがとにかく、結婚した後の生活の不満にはどんなものがあるのかを読み漁り始めたのである。
 
そこには、女性は結婚したら多くの場合名前も変わるし、生活も大きく変化する、なんなら出産や子育てという体の変化まで起こるので
(ああ、結婚したんだなぁ……)
という実感がすぐに沸くのだが、男性はこれといって大きな変化が感じにくいのでいつまでたっても独身時代の気分が抜けなかったりするケースが多い、というようなことが書かれてあった。
 
(ああそうか、きっと結婚式って男の人に人前で『俺、この人を娶ります!』って宣言させて、既婚者になったのだという自覚を芽生えさせる効果を狙ってる部分もあるんだな……)
 
そう思い至ってからは、結婚式も少しは必要な気がしてきた。
 
ある時、夫に
「結婚式どうする?やらなくてもいいかな、とも思ってるんだけど、
もしやるなら家族婚みたいなあんまりお金かけないやつがいいかな……」
と、控えめに相談してみた。
「うん、まあいいんじゃない?」
あっさり快諾してくれた。
 
出来うる限りお金をかけたくないという私の希望もあって、格安婚のサイトをいくつか見て、二人でここに相談に行こう、と予約を入れた。
 
打ち合わせ当日、プランナーの見せてくれた資料の中から親族の集まりやすさと費用の折り合いのつく神社を選び、挙式にあたって必要最低限なことをざっくりと決め、その場で式当日に切る衣装も選ぶことになった。
打ち合わせに来る回数も最小限にしたかったのである。
和装で挙式することになったので、打掛を選ぶのだが、選び始めて5分と経たないうちに私は飽きていた。
そもそも普段着る服を選ぶのも大して好きではないのである。
 
どれもこれも似たような白い着物で、何も決め手になるものがなかった。
まして、うっかりオプション料金が発生する高い打掛などは選びたくなかったのである。
私が心底飽きているのを察した夫が「これがいいんじゃない?」と頑張ってその場を盛り上げるように花嫁衣装を選んでくれた。
 
(夫のためにやろう)と心の中で思ってはいたが、結果、夫にめちゃくちゃ気を使わせることになってしまい、申し訳ないなぁと感じつつ、
(あ—、本当に披露宴とかやらなくて正解だわ。絶対喧嘩するわ、やりたくないこと多すぎて)
と改めて思っていた。
 
神社だから、結婚指輪の交換なんてないだろうとタカをくくっていたら、
神主さんとの打ち合わせでさっくり指輪交換するかと聞かれた。
結婚指輪も買っていなかったので「やりません」としれっと答えてその場をやり過ごした。
(くそ、ここでもか……)
どこまでも私のやりたくないことは世間一般から考えると常識になっていることばかりだった。
 
挙式当日、プロのヘアメイクの方に顔面と髪の毛を仕上げてもらいながら
(これめっちゃ気合いの入ったコスプレだな……)
と感じていた。
そのことを着付けとメイクの方にお伝えするとだいぶ笑われてしまった。
 
それでも、神様の前で宣誓の祝詞を読まされれば、なんとなく背筋は伸びるような思いだし、きっちり証拠写真も撮れたし、やることやってやったぞ、文句言わせねえぞ! という気持ちにはなった。
 
そもそも、やってもやらなくても誰も文句なんか言わない。
でも、私はアレコレ理由をつけてみたものの、目には見えない何かと戦っていたようなフシがどこかにあった。
 
(これ、服を選ぶときになんか似てるかもしれない……)
 
結婚式も結婚指輪も、自分のためにやりたいようにやればいいのである。
それは普段から自分がどんな服装で、どんな生き方をするのかということと同じだと思った。
 
私は私にとって必要な選択をしたにすぎない。
たとえ友人と価値観が違っても、ああ違ったなというだけのことなのだ。
 
ちなみに今のところ、結婚指輪は結婚生活10年が達成されたら購入検討しようという目標である。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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