メディアグランプリ

「グリーンなあいつ」に虜な私。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北 花音 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「グリーンなあいつ」が大好きです。
 
昔からなかったはず、と思っていたけど、
グルメな人の周りには、昔からあったのかもしれません。
 
「アメリカで人気者の、カリフォルニアロールの中に入っている」
そんな印象はうっすらと持っていたものの、
少なくとも私の子ども時代にも、学生時代にも、新婚時代にも身近にありませんでした。
 
その「グリーンなあいつ」はいつの頃からか、私の側にやって来ていて、
食卓に頻繁に上り、私を喜ばせるようになりました。
 
サラダにして、レモン汁で作ったドレッシングとあえる。
クリームチーズやサーモンと一緒にクラッカーにのせ、カナッペにする。
グラタンの上にスライスしたものを乗せ、とろけるチーズをたっぷりかけて焼く。
ディップにしてトマトと共にサンドイッチにはさむ。
細かく刻んで納豆と一緒に泡立つ程混ぜる。
塩昆布やポン酢など、和ものとあえて「和風仕立て」でいただく。
 
すみません、書き出してみると、愛があふれて止まりません。
そんな自分に、驚いています。
 
しかも、皆さんご存知ですか?
どんな食材ともマッチしてしまうことに加えてこの子は栄養面でも目を見張るものがあります。
 
「森のバター」と呼ばれるほど栄養価が高く、なんとギネスでも「世界一」と認定されているらしいのです。
また、「こってりまったり」の正体は、約20%含まれる脂肪分ですが、うれしいことにその脂肪分は、皮下脂肪になりにくくて血液をサラサラにする効果が期待できる「不飽和脂肪酸」なんだそうです。
そして、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類、鉄、ミネラル、たんぱく質、食物繊維など、「美を意識する女性」にうってつけの栄養素を豊富に含んでいます。
 
そう、「食べる美容液」なんです。
 
何となくあのグリーンの「ビューネくん」を思い浮かべませんか?
 
私にとって、そのグリーンなあいつ、「アボカドくん」のイメージは、
「やさしく守ってくれるイケメン、しかも年下」だということで固定されていきました。
 
……そしていつしか私はその虜になっていました。
 
黒味がかって、へたの部分が浮き始めた、ほどよく仕上がっている子をスーパーで見つけると、いてもたってもいられなくなります。
 
しかし、ここであせりは禁物なのです。
焦らずいきましょう。
 
「あと一歩の残念賞くん」は、キッチンでしばらく待っていてもらうことになり、今晩のおかずとしては「おあずけ」になります。
 
「ちょっと熟れすぎちゃったくん」には二重丸で注意が必要です。
家に帰り、鼻歌交じりの慣れた調子で、「包丁くるっ」をやるのですが、
中には茶色い筋張った斑点が…… 。そして柔らかすぎな上に変色しているのです……。
 
そう、アボカドくんはほどよい柔らかさだからこそ、きれいな優しい緑色だからこそ
美しく、おいしいのです。
 
「あと一歩で食べられるところまで来ていたのに!」
 
痛恨のミスを悔やみきれず、スーパーへ戻り、店員さんをつかまえ、
「これ、もうだめでした。交換お願いします」
とレシートと共に鼻息荒い言葉と現物を受け取っていただいたことも、何度かあります。
 
購入時に見極めることが重要なんですね!
でも、べたべたと触って確かめたり、両手でふたつ持って比べたり、などの行為は当然禁止です。
「後悔するもんか」と、ついやってしまいがちですが、我慢ですよ!
 
最後まで判断に妥協を許さず、じっとじっと見つめ、
「エイや!」っとかごに入れましょう。
 
さて、この子に関してもうひとつ、記しておきたいことがあります。
それは、「育てる楽しさもあるんだよ」ということです。
 
「種から育てられるらしい」との情報は頭の隅にあったものの、
じっくりと調べることもせず、思い付きで初めてみた、我が家の水栽培。
 
それがつい最近、急に白い根っこが伸び出てきたかと思うと、なんと、パカっと割れたすきまから可愛らしい芽まで伸びてきたのです。
 
これには大変、あたたかい気持ちにさせられました。
 
だって、「種がきれいに取れたからやってみよう」
と栽培を始めたのは、確か4月の中頃でした。
 
それから約5か月。
 
5か月の間、本当に、「しーん」としていました。
 
「もうだめだね」と、無情にも生ごみとして捨てようとしたことも何回かありました。
 
「空気を含んでいる白いタッパーが何となくよさそう」
と、根拠なく納豆の空パックにポイ、と入れられ、
たまにしか水を替えてもらえなかったのに……。
あんなに「うんともすんとも」言わなかったのに……。
 
種の中で、ゆっくりと何かを育み、この時のためのパワーをため込んでいたのです。
 
なんと健気なんでしょうか……。
騒がしい我が家の日常を横目に見ながら、窓辺でまどろみ、懸命に水分を吸収し、しっかりと生命としての本能的活動を行っていた。
 
その事実に、大変感動を覚えました。
 
こうなると、益々愛着がわいてくるものです。
私は調べ始めました。
 
残念ながら、これが大きくなっても、美味しい実がなる可能性は低いそうです。
でも、発芽までこぎつけられた今、その後の成長はスムーズにいくことが多いらしく、「観葉植物」としては十分に楽しめるんだとか。
 
「冬の寒さには弱いですよ」「大きくなってきたら土に植え替えましょう」
「根づまりを起こすと生育が悪くなるから、大きめの鉢が良いでしょう」
 
……ふむふむ。そうなんだね!私のアボカドくん。
 
よし、こうなったら食べられなくても
「おしゃれグリーン」としてイケメンに成長するまで、愛情をたっぷり注いでいこう。
 
そして立派に育った時には、夜な夜な私の相手をしてもらおう。
 
しつこい愚痴も、優しい笑顔で受け止めてくれるに違いない!
あのビューネ君のように「頑張ったね」とささやいてくれることもあるかもしれない!
 
日常の楽しみが、小さな夢が、またひとつ増えた喜びを感じています。
 
妄想、万歳。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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