動き出した心の万華鏡
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事・堀口 恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
万華鏡は、回転させて、中に入っているセロファンやスパンコールの配置や色の変化を楽しむものだ。クルクルクルクル。目まぐるしく変わる、目の前の景色。光の加減でセロファンが透けて色が変わるのが楽しくて、子供のころはよく万華鏡を回していた。
もしも、万華鏡が一つの模様しか出せない道具だったとしたら。色の濃淡しか出せない道具だったとしたら。果たしてこんなに気に入ったのだろうか。たちまち飽きてしまったに違いない。
何をしても閉塞感があった。
まるで、一つの模様しか出せない、動かない万華鏡のようだ。
「自分の力で、誰かの役に立てる仕事がしたい」
「【自分】だからこそできる仕事がしたい。誰でもできる仕事はもう嫌だ」
と、通い続けたアロマスクール。念願かなってアロマセラピストのディプロマも取得したというのに、いざ施術に入ると、まったく面白くない。「アロマセラピストになる!」と意気込んで、お金も時間も掛けて通ったアロマスクールだったのに。同期との差はどんどん開くばかり。先生の言葉も、心なしかきつくなっていくようだ。
焦ってイベントに出て経験を積もうとしたが、苦しいだけ。「それより大事なことがあるんだけどなぁ……」と先生がぼやいてらしたということを聞き、さらに自信を喪失し、ついにはアロマから離れてしまった。
今度こそはと始めた、占星術。
星座の概念を使わず、生まれた日のホロスコープ(天体図)から、意味のある角度で繋がる2つの星の意味と、繋がる角度が持つ意味から相手の使命や役割を読み解くという、シンプルな手法だった。シンプルなのに、奥が深い。自分の星を見てみたが、特徴をよくつかんでいる。
「これなら、今度こそ誰かの役に立てそうだ」
心の在り方や集客の方法も教えてくれるという触れ込みで、有料講座へも進んだ。
そして、教えてもらったことを活かし、占星術の鑑定を始めた。
最初は良かった。楽しかった。喜んでもらえて、やりがいも感じた。
だが、その喜びも、数か月しかもたなかった。
LINE公式アカウントにて、「この日はこういう星の動きでこういう影響があります」という配信を行っていたのだが、それがまず辛くなった。
「こういう影響なかったじゃないか」
「〇〇という言葉で書けばよかったのに」
どういう観点でホロスコープを読み解いているのか。どういう文章を綴るのか。書き手はどんな人となりなのかを伝えるものだったはずが、いつの間にか、「その日の動きを読み当てる」ことに重点が置かれるようになってしまっていたのだ。
鑑定も同様に辛くなっていった。
「お金を戴いているのだから、完璧な鑑定書を渡さなければならない」
使命や役割を読み解くこともさることながら、完璧な読み解きをしミスのない鑑定書をお渡しすることや、お客様の性格や気質と読み解いた結果を一致させることに重きが置かれていたからだ。
動かなくなり、一つの模様しか出せなくなった、自分の中の万華鏡。
最初は希望に満ちてクルクル回るのに。進みだすと、どうして固まってしまうのだろう?
時と場合に応じて、自由に動かしたいのに。色々な模様を見せたいし見たいのに。
万華鏡を自由に動かしたくてたどり着いたのは、「内観」だった。
考えや気持ちを客観的に見つめる。プラスの考えもマイナスの考えも、ただそこにあることを認める。
考えを書き出しているうちに、とある考えが出てきた。
「<最善を尽くす>ことは<完璧である>ことと同じだと思っている」
「完璧でなければ、期待に応えることができない」
「期待に応えるためには、完璧なものを提供しなければならない」
……じゃあ、<完璧>ってなんだろう?
完璧なものは、美しいものだ。計算しつくされた美がそこにはある。。
鑑定も、そんな美を目指していた。美しくスマートで、的確な鑑定。
だが、完璧ではない自分が読み解いたものが、完璧になるのだろうか。その時<完璧>であると思ってお渡ししたものだって、自分のスキルが上がり成長すれば、もう<完璧>ではなくなるのだ。
できもしない<完璧>を求めて、ミスや納得のいかない部分を徹底的に潰し、一部の隙もない鑑定をする。当然、お客様の前でも完璧でいなければならない。お客様には「リラックスして飲み物でも飲んで下さいね~」なんて伝えていたが、今思えば、こちらの緊迫感は、お客様にも伝わっていたのではないだろうか。
……<完璧>なんて、存在しないのでは?
そう気づいたときに、何かが動いた。
固まっていた心の万華鏡が、サラッと音を立てた。
ミスをなくす、鑑定時には相手のことを一番に考えるといった<最善を尽くす>ことは、<完璧>とは違う。最善は尽くせても、完璧な鑑定をすることなんて、人間が機械でない以上、土台無理な話なのだ。それなのに、気が付けばいつも、<最善を尽くす>ことを<完璧にする>ことに置き換えてしまっていた。
アロマだって、完璧な施術をしなければと思うから、苦しく辛くなっていたのだ。
いらしたお客様に<完璧に>リラックスして欲しい。お客様のご要望や体調に応じて、<完璧に>効果を出すオイルを選びたい。
そこには、「なんとなく気持ちよかった」「ちょっと楽になったみたい」というあいまいな結果はいらない。完璧で、かつ最高の満足を提供しなければいけない。
占星術のLINEの配信も、同じことだった。
ある日の星の動きを、<完璧に>当てなければならない。降水確率100%と同じくらい、絶対でなければならない。
それが、占星術師としてお客様に情報を配信するということだ。
こんな思いが、常に自分を縛り付けていた。
<完璧>なサービスを目指している自分は、じゃあどれだけ<完璧>なんだ。
そもそも、<完璧>ってどういう状態?
人類みな<完璧>じゃないんだから、<完璧>である自分なんて存在しないんじゃない?
そう気づいたときに、とても心が軽くなった。
欠点がある不完全な自分だからこそ最善を尽くせるし、最善を尽くすために学べるのではないだろうか。穴の開いた自分のまま、その時々の最善を尽くせばいいじゃないか。
固まっていた万華鏡が、自由に動くようになった瞬間だった。
こう思ってからは、今までは無理して行っていた配信や投稿が、何となくだが楽にできるようになった。「(まだ完璧にできないから)来ないでくれ」と思いながら行っていた集客活動も、ゆとりを持ってできるようになってきた。
「来ないで」と思っていたときにはゼロだった申込が、ゆとりを持ち始めてからぽつぽつと入り始めたのには、驚いた。投稿文にもゆとりが出てきたのだろうか。
子供の頃、自由に動かして楽しんでいた万華鏡。
大人になり、心の万華鏡は時々固まって動かなくなってしまった。
そんな心の万華鏡が、内観を経てようやく動くようになってきた。
これからは、何をするにも少し楽になれそうな気がする。
心の万華鏡を自由に回し、その時々に応じた模様や光の濃淡を楽しみながら。
≪終わり≫
***
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