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メディアグランプリ

昔の敵は今の友。コンプレックスは解消せずとも力になる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石田友希(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
新規顧客を獲得しようと、アポイントの電話をかけるたびに、心に迫る恐怖感。
飛び込み営業しようと、ターゲットとなる顧客の前に立った時の緊張感。
今も思い出すと、ドキドキが止まらなくなるのは、壁を乗り越えることができなかった
という負い目なのかもしれない。
 
新卒時に入社した会社は、担当業務の二本柱のうちの一本が営業だった。
基本は既存顧客への提案が主だったが、さらなる売り上げアップを目指して
いくらか新規営業もかけていた。これが私にとっては、苦行以外の何物でもなかったのだ。
扱っていたのは、知る人ぞ知る商材だったので、会社名を言ったところで通じるはずもなく、競合は全国有数の企業だった。うまくアポイントをとれるはずもなく、無理やり外へ出る
けれど、誰にも相手にされることなく失意のままに帰社する毎日。
「忙しいから後にして」「それ使ったところで、どれくらい効果あるの?」
「A社の方が、性能いいでしょ?」「他との付き合いがあるから」
都合のいい断り文句だと分かっていても、打ち返せるところがあれば、提案を詰めて
再度足を運んでいたけれど、なかなか結果に結びつくものではなかった。
 
ふと隣を見れば、同期が新規顧客を獲得し、先輩が何度もアタックし続けた営業先に
契約をとりつけて帰ってくる。日に日にプレッシャーが増し、何度も心が折れかけた。
とはいえ新規が振るわなくとも、既存顧客との契約額をアップすることで、何とか体裁を
保っていた。原因は私の性格上の問題だ。「誰かに何かを売りに行く」という抵抗感を
ぬぐえず、自社の商品を信じなければならないのに「思うような効果を生み出せるだろうか」という不安を消すことができなかったのだ。紆余曲折あって、その会社は退職して
しまったけれど、結局、営業への苦手意識は、自分の中に残ったままだった。
 
当然、次の就職先は営業以外の仕事がいいと転職活動に励み、縁あって今の会社には
10年ほど在籍している。
様々な業務を担当させてもらい、数年前から携わるようになった部署では、なんと自分が
営業を受ける立場になったのだ。もちろん、聞いたこともない都会の会社から営業の電話も頻繁にかかってくるようになった。
電話をかける側の気持ちも痛いくらい分かるので「ちょっとくらい話を聞いてみても」と
思う反面、ありがたいことに多忙を極める職場ゆえ、居留守を使うことも多々。
様々な企業の、様々な営業マンから直接話を聞く機会も増えた。
たとえばB社の営業さんは、広範囲のエリアを担当して、忙しいはずなのに
私のいる地域に足を運ぶ時には、必ず立ち寄って耳寄りな情報を届けてくれる。
C社の営業さんは、見た目はチャラいけれども、熱いトークで相手の懐に入ってくる。
D社の営業さんは担当になって日が浅く、相手との距離感をつかみきれないのか、
なぜか私が忙しい時にアポイントの電話をかけてきて、のんびり話をするので困りものだ。
E社の営業さんは、こちらの要望を聞かないまま提案をしてくるので、軌道修正に正直
難儀している。
そしてF社の営業さんは、とにかく抜かりない。後発という自覚をもって他社を
研究し尽くして、自社の持ち味を的確にアピールし、こちらの疑問にも具体的に答えて
くれる。おまけに提案内容も群を抜き、アフターフォローも万全だ。
 
まさに10年前の私に伝えたい実例が満載で、今更ながら自分に足りなかったところが
見えてくる。あの頃の私は、相手のことを理解しようとしていなかったのだ。
B社の営業さんは聞き上手で、こちらに不足しているところを丁寧に汲み取り、自分の足で稼いだ情報で補うという形で問題解決してくれた。
C社の営業さんは、こちらの悩みに共感することで、私達と並走しているという
安心感を与え、精神的なパートナーの役割を担っていたのだろう。
F社の営業さんは、こちらの潜在的なニーズを引き出そうと、徹底的に質問してくる。
返ってくる商品やアイデアも「そうそう、これを待っていたの」と思えるものばかりなのだ。そのうえ面談後には、頭の中を整理してもらったような充実感までついてくる。
 
営業というのは、相手の困りごとを探しあて、解決へ導く仕事なのだと、今更ながら実感
する。昔の私は、単にモノを売るのではなく、そのモノの先に効果を生み出し、付加価値を届けるという基本が理解しきれていなかったのだ。逆の立場になった現在でいえば、営業の方に自社のどこに不足を感じるのか、伝える努力が必要なのだということだろう。
課題がなければ解決策が生まれるはずもなく、問題がないのに答えが出るはずもない。
営業の人達の力を最大限にお借りするなら「これが欲しい」「あれが足りない」を意識して
おくことが顧客としての大前提だ。
 
自分なりの答えにいきついたところで、営業の仕事に再挑戦してみたいかといえば、
なかなかYesとは言い難い。けれど営業の人が頼もしいサポーターなのだと考えると、
今まで以上に仕事が発展していきそうな期待感がある。そうこうしているうちに、マイペースなD社の営業さんから入電。まずは要件を整理してから連絡してもらえないか、打診してみようと思う。明日の打ち合わせ相手は、話を把握しないまま提案しがちなE社の営業さんだ。こちらの課題を整理して、もっとかみ砕いた表現で要望を伝えてみたいと思う。
 
昔抱いたコンプレックスは、ただの負い目でしかないと思っていたけれど、今の仕事の糧となっていることに気づく。営業の人達は大いなる味方だ。以心伝心の関係を築くまでには、時間がかかることもあるが、戦友になれたら、目的地までのあと一歩、もう一歩をぐっと
引き寄せる存在になる。最終地点はまだ見えていないが、まずは中継地点に向かって、
頼れる伴走者と走っていきたいと思う。
 
 
 
 
***

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2020-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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