メディアグランプリ

12年前の私へ


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記事:内田智子(リーディング・ライティング講座)
 
 
36年間生きてきて、たぶん初めてだと思う。
漫画でもなく、映画やドラマでもなく、本を読んで笑ったこと。
一人で本を読んでいて、声出して笑ったこと。クックックッ……とかじゃなくて、ハッハッハッ……って、電車の中でも笑っちゃったけど、コロナ禍で幸いずっとマスクしてるから、助かったよ。
人生楽しまなくちゃ損。今の自分に自信を持って、幸せな自分に気づいて、それを受け入れて行動し続けていくことを楽しむ。この想いを確固たるものにしてくれた1冊の本。
思い返してみると、読みながら声出して笑っちゃうぐらい面白かったこの本と出合うチャンスは、12年前にもあったんだよね。
 
社会人になりたての年、たぶん季節は秋。ある深夜ドラマが面白くて、毎週楽しみにしていた。
『夢をかなえるゾウ』確かドラマも同じタイトルだったと思う。
12年経った今でも、俳優の顔ぶれとか、ガネーシャが関西弁なところとか、何となく思い出すことができる。ドラマの主題歌まで、サビだけでなくほとんど全部、伴奏まで頭の中で再生できるほどよく覚えている。
 
あの頃はゆっくり本を読む習慣なんてなくて、毎日ギリギリに飛び起きて出勤し、帰宅したら食事も適当にダラダラ過ごして寝る。家にある本といったら、仕事に関する参考書—医療関係の本—ばかりだった。といっても、仕事だけに邁進するのではなく、病院という狭い異質の世界に飲み込まれないように、休日は趣味とか遊びに気が向いていたような気がする。このまま病院の中だけでいいのか、本当に自分のやりたいことって何なんだろうかと悶々をしながらも、只々、目の前の患者さんと向き合っていた。
 
そんな12年前の自分に伝えたいことが1つ。
あのドラマの原作『夢をかなえるゾウ』を読んでみて!そして毎日ちょっとずつでいいから行動してみて!もっと早く自分のやりたいこととか、大事なこと、大切にしたいことがわかるはず!
ドラマを毎週楽しみに観ていたときの自分だったら、この本の面白さ、いや、人生の面白さとか、意味とか、もっと早く、深く理解して実行できていたんじゃないかな。もっと早く病院から飛び出して、自分が心から楽しいと思える毎日を進むことができたんじゃないかな。
 
ある日突然、インドの神様「ガネーシャ」の置物が人間に化けて現れる。その日から主人公とガネーシャの共同生活が始まる。今までにたくさんの自己啓発本を読んだが、三日坊主な性格もあり「成功したい」「お金持ちになりたい」「変わりたい」と願い続けるだけの主人公。
あの頃の自分もそうだったなと主人公と12年前の自分を重ねて読み進める。
 
「ただ決めるだけか、具体的な行動に移すか。それによって生まれる結果はまったく違ってくるんやで」
10個目の課題について話すガネーシャの一言。
良い本を読んで一時的にやる気になっても、結局考えるだけで行動に移せず、継続できず、「変わる」ってところまでいけないんだよな。結局、私が変わるための第一歩を踏み出せたのも、あのドラマを観ていた頃から8年も経ってからだった。
 
ガネーシャは1つずつ主人公に課題を出し、それを実行していく中で主人公は成長し、行動していく。
ガネーシャが出した課題は、小さいことだけど、的を得ていた。本を読んでいる最中も、私はふんふんと頷き、印を付けながら読み進める。私も主人公と一緒に変わった気になっていく。
そしてあるガネーシャの言葉で、主人公も私も衝撃を受ける。
 
「ワシが教えてきたこと、実は自分の本棚に入ってる本に書いてあることなんや。ワシの教えてきたことには何の目新しさもないんやで」
 
そう、それまでの課題は全て今まで読んだ本に書いてあったことだった。それは私にも全く同じことが当てはまり、目新しい課題はなく、どこかで聞いたことがあるものばかりだったことに気づく。しかも、私に至っては、一度この本を原作にしたドラマを観ているのだった。
 
愕然とした。私も12年前から何も変わっていないんじゃないか?
いや、違う。少なくとも、私自身は今から4年ほど前にやっと病院という世界から飛び出し、同じ医療に携わる仕事の中で、心から楽しく、幸せを見いだせる仕事ができているはずだ。
人生楽しんでいる? と聞かれたら、迷わずYesと答えるだろう。
思い切って転職して、努力して、変わって、行動していたつもりでも、また変われずもとの自分に戻ってしまっているんだろうか。
ガネーシャと主人公とのやり取りは、テンポのよい漫才を観ているように面白く、楽しく、どんどん本を読み進めていきたいのだが、同時にどんどん不安になっていく自分がそこにいた。
 
しかし、ガネーシャからの最後の課題の章を読んでいて、気づく。
私はちゃんと変われている。
なぜなら、ガネーシャからの最後の課題を、私は言い当てることができたのだ。
 
「毎日、感謝する」
 
満たされている自分、幸せな自分に気づいて、感謝する。
気づけば、後輩や患者さんにガネーシャと似たようなことをすでに話している私がいる。
私の日々の生活に紐づけて、相手に何か気づいて行動に移してほしい。
そう願う自分がいることに気づく。この本を読んでいて二度目の衝撃だった。
私、ガネーシャになってるやん!
 
まだまだ修行中だけど、少しずつ変われていることに気づけた私は、もう一度ガネーシャからの最後の課題の章を読み返す。やはりこの本にもっと早く出合いたかったという悔しさが溢れてくる。
私はこの本に出合っていれば学べたことを得るのに、なんと12年もかかってしまった。
早くこの本を12年前の自分に届けて、少しでも早く気づいてほしい。
実際は過去に戻れるわけではないので、今の自分がこれから更に進化し、どこまで変わっていけるかが勝負。
行動していくしかない。
 
12年前の私へ。ぜひこの『夢をかなえるゾウ』を読んで、どんどん行動してもっと変わってくれ!
でももしこの本に出合わなくても、ちゃんと12年後には変われてるから安心してね。
かけがえのない日々を、今を十分に楽しんで。幸せいっぱいに生きてください。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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