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笑いは、ぽかぽかの太陽のように


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:冨田裕子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私が社会人になり、入社した会社の営業部門に配属されたころ。上司から、「営業の赤本」という本を渡された。営業初心者のための、「営業とは」という哲学に重きをおいた内容で、そこに書かれた一つ一つの項目を読むたび、営業とは自分を磨く仕事なのだと、これから取り組む仕事に期待を膨らませた。
時が経ち、そこに書かれた言葉のほとんどは忘れてしまったが、一つだけしっかりと覚えているものがある。それは、「笑わせれば契約がとれる」。
この本のなかで、最も意表を突かれた内容だった上、その後10数年営業の仕事をしてきて、確かにそうだと身をもって納得した内容でもある。
 
笑うことが嫌い、という方は、あまりいない。
滅多に笑わない、という方はいても、それは、嫌いだから笑わないというより、面白いと思わなかったり、その気持ちが顔に出づらい方であることがほとんどではないだろうか。
私は、笑うことが大好きだ。お気に入りのお笑い番組は、次に何を言うか覚えるほど何度も観てしまうし、日常的に面白いことを言ってくれる人も好きだ。ここでいう「面白い」は、興味深いというより、ただ可笑しい、笑ってしまう、という「面白い」である。
 
笑いは、心を健やかに保つのにとても有効だ。笑っている時は、心が楽しさを感じ、ハッピーになり、元気になっていくと感じる。実際、笑うことで免疫力が高まる、という話も聞いたことがある。初めて会う人も、最初の会話の中で笑いが生まれると、とても親しみやすくなると感じる。決して大爆笑である必要はなく、かといって作り笑いでもない、自然に笑顔がこぼれるような会話ができると、空気が一気に柔らかくなる。多くの方が、そんな経験をしているのではないか。笑いは、ちょうど春一番が過ぎたあとにやってくる、ぽかぽか陽気の太陽のようだ。
 
最近は、冒頭の営業スキルだけでなく、子育てにおいても、笑いが有効であることがわかった。
「赤ちゃん」と呼ばれる時期を超え、少しずつ色んなことができるようになり、言葉も話すようになると訪れる、「イヤイヤ期」。自我が芽生え意思表示をする、という、人の成長には欠かせないプロセスではあるが、ついこの間まで、ふにゃふにゃと流れに従っていた我が子が、理由もわからずあれもこれも嫌がり泣きわめくので、親にとっては大変ストレスがかかる時期である。イヤイヤの度合いは成長と共に和らいでいくし、そもそも子供自身に言葉で表現する力がついてくるので、「なぜ嫌なのか」を親が理解することで、解決できることが増えてくる。一方で、理由はわかってもそれを受け容れられない場合、延長戦で折り合いをつけなければならない。そんな時、有効な方法が、笑いである。
 
例えば出かけた先での帰り道、寄り道したい子供と、早く家に帰って夕食の準備にかかりたい母親。親としては、子供の睡眠を確保したいし、子供が寝た後にやりたいこともある。寝るのが遅くなれば、子供も親も、明日の朝が辛くなる。さっさと帰って一日の予定を滞りなく進めたいが、子供は目の前にある魅力的な遊びを、睡眠のために放棄する必要など全く理解できない。
全く違う価値観がぶつかり合うとき、話し合いで折り合いをつける事は、ほぼ難しい。
そんな時、ふと思いついて、黙ってユニークな走り方や歩き方をやって見せた。すると、子供はまだ少し文句を言いながら、笑ってそれをまねし始めた。私は子供と二人で、変な走り方ではあるが、帰宅を急ぐことができた。
 
その時、営業の赤本にあった、「笑わせられれば契約が取れる」を思い出した。そして、営業だけでなく子育てにも応用できる事を実感した。
 
笑いという太陽は、積もった雪をじんわり融かす。子供を見ていると、笑うことで怒りの感情が薄くなったり、表面的なこだわりが解けていくように感じる。時にぐっと踏み固められたような雪も、あたたかい太陽があたると、少しずつ角が取れて、透きとおった水にまとまりながら、静かに流れていく。流れたあとには、変わることのない、人間が本来持っている優しさや素直さ、「楽しく生きたい」という気持ちがそこにある。
 
そして、もう一つ。
子育てには、親の心の余裕が必要だ。子供と気持ちが合わない時は、しばしばイライラしてしまうが、そのイライラは、子供の気持ちや行動を決して良い方には変えてくれない。心に余裕をもって、子供の気持ちに寄り添うことで、歩み寄ることができると感じる。とはいえ、自分と違う人格でかつ生まれて数年という、全く違う背景の人間の価値観を理解することは、多大なエネルギーを使う。笑いは、そんな緊張や疲労をやさしく融かし、心にスペースを作ってくれる。親にも、笑いが必要だ。
 
好きなお笑いの動画を見るもよし、面白かった出来事を思い出すもよし。思えば、子供自身がその素材を提供してくれることもしばしばある。大人にはできない自由な発想で、積み木が思いもよらないものに変身したり、突然大人の言葉をそっくりに真似してみたり。その感性や思考はとても面白く、かわいらしく、私を容易に春の陽気で包んでしまう。
あたたかい陽の光をいっぱいに浴びるように、まず、私がたくさん笑おう。
 
 
 
 
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2020-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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