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メディアグランプリ

一期一会の『店』


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久松 晃子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ラーララララララーララー、ララー、ララララララー(白鳥の湖)
店先(玄関先)で友だちと目を合わせた。
 
17、8年前の京都の旅のこと。2泊3日の旅は宿坊に泊まった。
テレビもない部屋で語りつくした夜が明け、朝食をとっていた時、一緒になった2人組の男性と「面白いところありましたか?」と情報交換をしていた。
そこに出てきた店に友だちと2人で食いついた。
清水寺のふもとにある不思議な○○○屋さんがあるとのこと。興味津々に、場所を聞いた。今のように、スマホの地図で確認することはできなかったので、その聞き入れた情報を頼りにお店を探した。
 
「ここじゃない?」
「ここっぽいね、入っていいかな?」
恐る恐る入って行った。狭い間口から続く細い道を通り玄関に着く。
 
「こんにちは」
「すみませーん」
 
「はーい」
しばらくすると白い割烹着を着た女性が現れた。
 
「宿坊で一緒になった人から話を聞いて伺ったのですが、○○○ありますか?」
恐る恐る聞いてみた。
女性は困ったような顔をしながら
「うちは卸でご覧のとおり店売りはしていないのです」
(京都弁だったと思うのだが、覚えてなくうまく表現できない)
「納める商品に少し余りがあるので、それで良ければ……」
と言ってくれたのだ。
「お願いします」
 
女性は奥に戻っていった。
「聞いた話と同じだね」
友だちと、目を合わせた。
 
宿坊で仕入れた情報と通りだった。
私たちが食いついたお店は和菓子店だった。(実際には生菓子の製造卸売りのお店だったと思う。)
入り口は普通の民家としか見えない。看板は出ていない。
バックミュージックはクラッシックというのだ。
私たちの「面白そう」のアンテナはピンと立った。行くしかない! 探そう!
 
たどり着いたお店には男性たちが話していた通りクラッシックが流れていた。
店先(玄関先)から見える家の中は、土間があり、正面の飾り床には花が活けられていて、普通の民家だった。お菓子のショーケースもなければ、和菓子屋の気配は全くない。
和の建物にクラッシック、しかも和菓子屋さんなのに……。と不思議で面白かった。面白くて、ニヤニヤしていたと思う。
 
戻ってきた女性に手(お盆)にはそれまで見たことのない生菓子が乗っていた。きれいで繊細な彩りと形。おそらく、季節の主菓子だったのだろう。
目を奪われ、友だちとワクワクしながら選んだ。
包むために奥に戻られて、私たちはまた玄関で待つことになった。
待つ間の静かな間にもクラッシックが流れる。
再び奥から女性が現れ、きれいに包装された和菓子を受け取った、無事に購入することができた。
 
店(家)からまた細い道を通り、清水寺のふもとの通りに出た。
「あったね!」
「買えたね!」
「美味しそう!」
「食べよう!」
友だちと歓声を上げながら、すぐに包を開け、素敵な和菓子を食べた。それまでに味わったことのない生菓子だった。面白いと美味しいととても満足した思い出だ。
 
あの店はどこにあったのだろう。いまでもあるのだろうか。
ふと思うことがある。あの経験を再びしたいと思うのだろう。
ネットで検索してみる。『和菓子』『清水寺』『卸』思いつくキーワードを入れてみるが出てこない。
記憶を引きずり出し、歩いたであろう道をスマホの地図アプリで辿りながら検索する。ここだと思う場所はある。あるのだが、店の名前はでていない。
情報がなさすぎるのだ。
 
清水寺、平等院、舞妓体験など、この旅の写真はたくさんある。しかしそこの店、和菓子の写真が一つもないのだ。不思議だ。
おそらく興奮しすぎて写真を撮ることを忘れていたのだろう。
思い出はただ、二人の記憶にあるだけなのだ。
 
記憶の中にしかない不思議な和菓子屋を思い出しながらに「幻だったのかも……」と思う時もある。
 
幻ではなかったと、あのお店に行って、あの雰囲気を周りに伝えたい。私たちのあの時の興奮を味わって欲しいと思う。
 
「一期一会」とはこういう事か!
 
茶道のお稽古で良く飾られる軸の言葉を思い出した。
あの時は再び戻らない。あの気持ちを再現できることはないと思う。あの場はあの場限りなのだ。こんなに月日が経っても思い出し、面白いと思えることはそうないと思う。一度きりだから強く記憶に残っているのだろう。まさに一期一会だ。
 
少々美化されているかもしれない思い出は、これからもたまに検索しながら面白い思い出に浸る時間を私に与えてくれる。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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