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カメキチは生きる

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:笹谷幸恵(ライテイング・ゼミ平日コース)
 
 
僕は亀。
名前はカメキチ。
クサガメである。
生まれて20年はたったと思う。
 
僕は、ペットショップで、人間に買われるのを待っていた。
小さな体で水槽を泳ぎ、周りにはたくさんの亀友達がいた。
毎日にぎやかな水槽の中では、お客が来るたびに話すのさ。
「この人の家に行くのかな?」
「たくさんご飯食べさせてくれるかな?」
この狭い所から、出ていけると思うと嬉しくてドキドキしていた。
 
ある日、夫婦が僕たちの水槽をのぞいていた。
ペットショップのお兄さんは、何をお探しですか? と、その夫婦に聞いた。
「この亀が欲しいです」
この亀ですか?
大変失礼ですが、ご主人は何歳ですか? と、突然年齢を聞いた。
「48歳です」
亀は40年から50年行きますので、お客様には亀を売ることは出来ないです。
「えっ?」どうしてですか。
飼い主が先に死んでしまったら、亀はどうしたらいいのでしょうか。
亀の命はとても長いです。飼い主がいなくなった後、亀がどう生きるかまでの責任を取れる人にしか、売れないのです。
お客様は納得しのだが、僕たちを見る目は買えない寂しさであふれていた。
「そうだね」と言いながらペットショップを去っていった。
 
次の日、家族連れが来た。
「私、この亀欲しい」小学生の女の子は言った。
ペットショップのお兄さんは、女の子に向かってこんな話をした。
亀は40年から50年生きるよ。
お嬢さんが、お嫁に行くとき、亀を一緒に連れて行ってくれる?
女の子は、ポカーンと聞いていた。
命の大切さと、最後まで責任を持って育ててくれる人にしか、売れないことを話すと、両親は納得をしてくれた。女の子はがっかりしていたけど、簡単には買えないこと、責任があることをぼんやりと、わかってくれた。
 
それから、しばらくしておばちゃんが店に入ってきて「亀ください」と言った。
ペットショップのお兄さんは又聞いた。
何歳ですか?
「えっ? 私ですか」おばちゃんは失礼な人と思いながら「53歳です」と答えた。
亀は40年から50年生きるので、売ることは出来ないとお兄さんが話し始めると、そのおばちゃんは言った。
「私が飼うのではなく、保育園で子どもたちに命の大切さを、教えたいので買いにきたの」と言った。おばちゃんは保育園の園長先生だった。
 
ペットショップのお兄さんは喜んだ。
大切にしてくれところが見つかったのだ。
 
そんなわけで、僕の保育園生活が始まった。
名前は、こども達で考え「カメキチ」になった。
みんなから、大切に可愛いがってもらえると思っていた。
 
僕のいる場所は、5歳児クラスの部屋「そら組」
直径60㎝の、丸くて青いタライのなかで生活している。
タライの中には、5センチにはった水と、僕の体がのるくらいの石が1個あるだけ。
亀当番が、世話をしてくれるのだが、乱暴だ。
5人のグループが4つあり、一週間おきに変わる。
 
仕事の内容は
1、 タライを外の水道のところまで持って行く。
2、 タライから僕を出して散歩させる。
3、 僕の甲羅を亀の子たわしで洗う
4、 タライと石を亀の子たわしで洗う
5、 きれいになったタライに5㎝ぐらいまで水をいれる。
6、 僕をタライに入れそら組まで戻す。
7、 餌をもらう。
 
大人がやれば時間がかからないが、あの子たちがやると、最低でも30分はかかる。僕は散歩が出来て嬉しいのだが、「かめきちを洗う!散歩させる!」と喧嘩が始まる。
僕の体を持って取り合いが始まり、何度も痛い目にあった。大変な騒ぎだよ。
喧嘩にも慣れたある日、いつものように広い園庭を散歩していた。
こども達も、僕の散歩を見ながら、まったりと過ごしていた。
園庭は気持ちが良かった。
4、3歳児のクラスも園庭にでてきて、鬼ごっこが始まった。鬼ごっこをしていた先生が、子どもから逃げようと僕の方に走ってきた!
 
僕の方に、巨大な足が近づいてきた!!
僕は巨大な足に踏まれた!!!
 
ボキ。グニュ!
変な音と共に地面に押し付けられた。
「ぎゃーーーーーァ」と叫んだ。
血がでてきた……。
 
それを見ていた先生が「大変だ」と叫んだ。
周りの、大人もこどもも大騒ぎ。
園長先生は、すぐに動物病院に電話をして、病院に連れて行ってくれた。
 
病院に着くと、動物病院の先生は言ったよ。
「これは酷いですね。やれるところまでやってみます」
甲羅は、ひびが入っていたが、内臓は無事だったらしい。
甲羅はホチキスのようなもので止め、ひびが入っているところはボンドのような接着剤を塗りこんでくれた。消毒をして終わった。
 
保育園に戻ると、みんなが心配してくれた。
次の日から、病院でもらってきた消毒液を、毎日塗りながら少しずつ元気になった。
 
今も生きている。
多少の事では死なない。
ペットショップのお兄さんが、言っていたことを思い出した。
色々なことが毎日起きるが、生きているから幸せだと思うようになった。
そろそろ冬眠の時期がやってきた。やっかいな時期だ……。
 
僕の背中には傷がある。
「傷ありカメキチ」と呼んでくれ。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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