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【私的福岡・番外編】そういえば京都には僕も4年間住んでいた


koikeさん

記事:Ryosuke Koike(ライティング・ラボ)

 

【注意】
この記事は、Mizuho Yamamotoさんの「そういえば京都には2年間住んでいた《おいでやす編》」をお読みになってから読んだ方が、きっと楽しめると思います。

 

先月のある朝、数年ぶりに大学時代の友人から連絡があった。
今日、出張で福岡に来るので会えないかということだった。
福岡の地で大学時代の人と会う機会は滅多にないので、職場に着くなりスケジュールをやりくりし、昼から休みを取った。

そういえば、4年間の大学生活を終えてから十数年が経つ。
待ち合わせの場所へ向かう途中、頭の中で懐かしい情景を思い出していた。

大学は関東ではなく関西を選んだ。
当時、近々関東で大きな地震が起きるのではないかと本気で思っていたし、物理を学んでいなかった僕は、飛行機という鉄の塊が空を飛ぶことが信じられなかった。そういう理由で実家からでも新幹線で2~3時間で行ける京都の大学を選び、なんとか合格した。

大学時代では、色々な経験をし、様々なことを学んだ。
といっても、親の監視下を離れモラトリアムを謳歌していた僕は、通った大学のステレオタイプ的な学生のように、大学にあまり行かなかった。
サークルに励み、バイトに勤しんだ。夕方から明け方まで4人でコタツを囲み、頭と指の体操に興じていた。
阪神が十数年ぶりにリーグ優勝した日には、鴨川のほとりで知らない人も交えビールを浴びた。
円山公園の桜の木の下で、翌日の花見のためサークル仲間と徹夜で場所取りをした。
初めて彼女もできた。残念ながら、鴨川等間隔の法則を体験する機会はなかったけれど。

今の僕とは違い時間はたっぷりとあったが、お金には困っていた。
入学したばかりの1回生の頃は、まだバイトを満足にしておらず、仕送り日の数日前は、財布と冷蔵庫のにらめっこが続いた。
栄養失調による貧血で倒れてはいけないと思い、鉄分といえばホウレンソウという考え方から、束で買っては小分けにしてゆでていた。
僕は、ゆでたあとに絞ってから切る方だった。火傷しそうな熱さは、一回きりにしてほしかったからだ。

そんな僕をあわれんでか、大学の友人が自宅での夕食に誘ってくれたこともあったし、サークル仲間の他大学の女友達が、僕のために夕食を作ってくれたこともあった。
学生時代にしか築けない、不思議な関係があったように思う。

京都は学生の街と言われる。
そのためか、サークルでも、バイトでも他の大学の学生と知り合うことが多かった。
また、関西地方出身が多かったものの、僕のように他の地域から出てきた者も少なからずいた。
色々なバックグラウンドを持つ人と出会うことができて、多様な価値観に触れ合うことができた。

一人暮らし、楽しい思い出、苦しかった生活、初めて実った恋、そして今も続く多様な人脈。
現在の自分を語る上では欠かせない4年間だったが、同時にその4年間で身に染みたことがある。

よそ者は京都には住んではいけない。

京都の人がよそ者には冷たいとか、厳しいといった理由からではない。学生の身分であったせいかもしれないが、そういった感覚を当時の僕は感じなかった。

それではなぜか?

暑いのだ。
とにかく暑いのだ。
うだるような暑さなのだ。

京都は盆地のためか、街中を歩いていてもあまり風を感じることはない。
梅雨時期から秋にかけては、無風でムシムシとした日々が続く。
不快指数がじわじわと体力を奪っていくのだ。

海に近く、風の流れを感じることができる実家で育ってきた僕には、この環境はたまらなかった。
お金はないといいながら、夏の間エアコンだけは毎日稼働していた。

おっと、住んではいけない理由がもう一つあった。

寒いのだ。
うんと寒いのだ。
体の芯から冷える寒さなのだ。

雪が降る日の寒さは、数は少ないけれど福岡でも体験している。
けれど京都での雪が積もった日の、底冷えする寒さは比べ物にならない。

温かくしても温かくしても、寒い。
お金はないといいながら、冬の間もエアコンは毎日稼働していた。

そうはいっても、古くからの伝統と文化を体験できる京都。
神社やお寺が数えきれないほどあるし、祇園祭をはじめとした華やかな祭りもあり、日本屈指の観光都市といえる。
福岡は、京都と同様に若い人が多く活気あふれる都市と言われているが、食はともかく観光の面では全く歯が立たない。
住むのはもう遠慮したいなと思う僕でも、京都には旅行では毎年一回は行きたいと思っているくらいだ。

京都に行きたい!

大学生の頃、京都の四条河原町という繁華街での飲み会のあとは、木屋町三条にある博多長浜ラーメンをよく食べて帰っていた。
現在、福岡天狼院に設置されている「のぞき見天狼院」のパネルを見ると、東京、表参道のほか、既に「KYOTO」の文字が刻まれている。
福岡と京都。
両方と縁がある僕にとって、京都天狼院のオープンがとても楽しみである。

京都天狼院に絶対なくてはならないもの。

本よりも、書棚よりも、檸檬よりも、
エアコンである。

そう力説したいけれど、天狼院なら「こたつ」があれば十分か。

 

***
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2015-12-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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