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生きていくのはひどく難しく素晴らしい。


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記事:能勢 拓人(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
2015年3月12日のFacebookの投稿で、僕はこう書き残している。
『生きていくのはひどく難しく素晴らしい。』
 
この3ヶ月ほど前から憂鬱な日々が続いていた。大きな原因ではなく、部屋に埃が溜まるように、小さな「うまくいかない」が積み重なっていた。
営業成績は落ち、同僚との関係もうまくいかず、自然と友人や家族とも連絡を取らなくなっていた。小さい頃からお世話になった人が亡くなっていたことを、後から知ったのもショックだった。さらに、恋愛もうまくいかず、29歳の誕生日は1人で迎えることとなった。あと1年で30歳という節目の前に、日々孤独に過ごしていることが妙にプレッシャーを与えてもいたと思う。
友人と連絡を取ることでさえ億劫になっていたから、ただ一人、漠然とした悩みを抱えていた。
 
何がきっかけだったのか、フッと緊張の糸が切れた瞬間があった。仕事が終わって家に帰り、電気もテレビも暖房もつけず、ベッドに寄りかかってボーっと座っていた。10分程度だったのか、数時間経っていたのかも分からない。寒い冬だったけれど、寒さを感じることすらなかった。
 
生きている意味が分からない。楽になりたい。
そう思った瞬間、冷たい涙が頬を伝っていた。
 
どちらかというと楽天的で、いつも「どうにかなる」と思っていただけに、全てがどうにもならない状況の対処の仕方が分からなかった。楽になりたいと思っても何か行動を起こす勇気すらなく、気分が晴れないまま生活を続けていた。気づけば心の底から笑うことを忘れてしまっていた。
 
そんなある日、ふらっと映画館に立ち寄った。映画館に並んでいるポスターを眺めて、何となく惹かれた映画のチケットを買い、席に着いた。あまり期待はしていなかった。ただ何も考えずにストーリーを眺めていられれば、なんだってよかった。それだけのはずだった。
 
頭の中が空っぽになっていたのだろう、気が付けば映画の世界に入り込んでいた。
舞台はアメリカ。主人公は末期がんを患っている17歳の女子短大生、ヘイゼル。甲状腺がんが肺に転移し、外出するにも酸素ボンベを手放せない。母親に連れられてがんの支援団体の集まり「サポートグループ」に参加し、オーガスタスと出逢う。オーガスタスは、骨肉腫を克服するため、片足を失った18歳の男の子。以前はバスケットボールをしていて、前向きな性格。クールなヘイゼルにスグに惹かれる。
通院と服薬、それに行きたくもないサポートグループへの参加の日々に嫌気がさしていたヘイゼルも、オーガスタスの登場で日常に色を取り戻し始める。
 
2人の距離を縮めたのはヘイゼルの愛読書『An Imperial Affliction(大いなる痛み)』。
文章の途中で突然終わるこの小説の続きを知りたいというヘイゼルの夢をかなえるため、オーガスタスはオランダのアムステルダムに住むこの本の作者へコンタクトを試みる。すると、作者本人から返信があっただけでなく、アムステルダムへの招待をも受けることになってしまった。果たして、ヘイゼルとオーガスタスは資金面をクリアし、ヘイゼルの病状を支えながら、無事アメリカからアムステルダムまでたどり着くことが出来るのか? 作者に会い、小説の続きを知ることはできるのか?
死に直面している若者とその家族の生き様を、若者特有のユーモアを交えて描いている。
 
希望と絶望が繰り広げられる物語に、終わるころにはすっかり涙を流しきってしまっていた。周りに誰もいない端っこの席を選んだのは正解だった。でも、この時の涙は一人部屋で泣いていた時の冷たい涙ではなく、暖かい涙だった。
エンドロールが終わるころには、嵐が過ぎ去った海のような静けさが心の中に訪れた。そして、ひっそりと決意していた。
 
必至に生きていかなければならない。
 
そう覚悟を決めると、憂鬱な気分も晴れ、自然と笑みを取り戻すことができた。
やりたいことを、できるうちにやっておきたい。そこから次のステップへ進む決断は早かった。半年で会社を辞め、海外へワーキングホリデーに行くことを決めたのだ。ワーキングホリデーというビザ(入国許可)を取得するには30歳までと年齢制限があるため、この年が最後のチャンスだった。
無事に海外生活を終え、帰国した後の就職活動でも海外の経験が役立ち、5年経った今でもその経験が僕を支えてくれている。
 
好きな映画はたくさんあって、あれもこれもと迷ってしまう。けれど、僕を救ってくれた映画は1つしかない。
『きっと星のせいじゃない。』
もしあの時、この映画に出逢わなければ、あのまま憂鬱な気持ちを抱えたまま過ごしていたら、どうなっていたのだろう? 今とは全く違う人生を歩んでいたことだろう。
 
もし、生きることに疲れ果ててしまって、辛くなってしまった時、この映画を観てみて欲しい。あなたもこう感じることになるかもしれない。
 
生きていくのはひどく難しく素晴らしい。
 
 
 
 
***

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2020-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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