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私は”おべんとうのから揚げ”らしい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:梅とら (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「”おべんとうのから揚げ”のような扱いをしてごめんねー!」
ある日の帰り際に突然マネージャーからこんなメッセージが送られてきた。
 
「おべんとうのから揚げ……?」
おべんとうのから揚げと言えば「定番」、「美味しい」、「好物」……あなたは何を思い浮かべるだろうか。私はこのメッセージの意味が理解できずに、「重たい」や「脂っこい」とネガティブにとらえ、正直少し落ち込んだ。
 
私は春から在宅でカスタマーセンターのアドバイザー業務をしている。今までとは違う業種で、異なる業務、また、このご時世もあって初めての在宅ワークで四苦八苦である。業務用のパソコンやシステムの使い方、周りとのコミュニケーションの取り方など、基本的なことすらわからず、自分の知識や経験不足を痛感し、落ち込んでは、立ち上がりを繰り返している。
 
そんな私が彼女に出会ったのは3ヶ月前である。部署異動があり、キャリアアップした先の部署での最初のマネージャーが彼女である。最初の印象は……厳しい人。新しい部署での不安の中、困難な課題を課し、バリバリに指導を実施! それも在宅ワーク。顔も知らないまま、声だけのやり取りである。その時の彼女の声は非常にとっつきにくく、この部署でやっていけるのかと恐怖と不安に襲われたことを覚えている。
 
五感とは不安を解消するためのセンサーである。動物としての本能だろう。人間は五感を使い、自分のいる状況が安心できる状況であるかいなかを必死に読み取ろうとする。同じ言葉でも顔が笑っているのか、怒っているのか。それだけで状況は異なる。出会っと時の彼女の声からはお世辞にも安心は感じられなかった。後々彼女にそのことを尋ねると「絶対に優しくしない!」との気持ちで接していたとのこと。なるほど、すごく伝わっていた。素晴らしい演技力である。このことは声の仕事に就く私にとって、とても貴重な経験になった。
 
そんな不安からスタートした彼女のマネージメント。今では絶大なる信頼を置くまでになっている。
 
彼女は「プロ」のマネージャーであった。私たちの「接客応対=コール」を聞き、心理状態を把握し、改善点を見つけていく。時には厳しいことも言いながら、カスタマーセンターという大海原でもがく私たちの心のケアもし、前を向けるようマネジメントしていく。
 
多種多様なお客様への接客を声のみで行う私たちはまるで船乗りだ。その日の天候である入電傾向や起こっている事態を把握し、ヘッドセットをつけ大海原に出ていく。どんなに天候を読んでもクレームと言う嵐に襲われる日も、夕凪の中で急に舵取りができなくなる時もある。どんな波が来るのかは予想がつかない。「海を甘く見るな」という言葉が本当にピッタリな仕事である。
 
ベテランでも失敗する航海があれば、初心者でも必死に立ち向かい成功する航海があるのがアドバイザー業務の面白いところである。接客業である以上、知識だけではなく相手にどう向き合うのかも重要である。真摯に向き合えているのか、誠意は示せているのか、それが相手に伝わっているのか。航海の中での最も重要な要素と言っても過言ではない。アドバイザーとして、航海がうまくいくように私たちの心もマネジメントし、海に送り出す。港にいる整備士のような存在がマネージャーの彼女である。
 
スポーツでも最後に勝つのは「自分を信じた者」と言われるがアドバイザーも同じである。自信がなけれキモチが声に表れ、それがお客様に伝わり、良い航海ができなくなってしまう。自信をなくすことはこの仕事にとって命取りである。彼女は自信を失った時の声かけがうまい。絶妙なタイミングで、ピッタリな言葉をさらっとかけてくれる。過不足なく、適量を。その声を聞くと胸につかえてたものがすっと取り除かれ、私たちはまた大海原に出ていけるのである。
 
そんな彼女にかけられた”おべんとうのから揚げ”という謎ワード。過不足以前に謎である。これは本人に直撃するしかない!
 
彼女曰く「から揚げって安定の美味しさじゃない?」。ふむふむ、私のコールは安定しているってことなのね! と理解。「後味って大事で、私、おべんとうの最後にから揚げを食べるの!余韻に浸れるように……あなたのコールは安定していて安心できるから、どうしても1日の最後に持ってきちゃうんんだよね。安心のまま1日を終われるように」なるほど!!! これはかなり深く、そして嬉しい言葉である。
 
「表現が独特って言われませんか?」と問う私に「うん!何でだろうねー!!!」とケラケラと笑う彼女の声は、出会った時とは違い私に安心を抱かせるのに十分であった。
 
つかず離れず、でも彼女がいるという安心感は私の背中を押し続ける。
 
彼女曰く、自分では気付かずに良くも悪くもコールは変わっていくらしい。
このライティングゼミが終わる頃、私のコールはどのようになっているだろうか。変わらずにから揚げでいられるだろうか。
 
から揚げでいられるように……今日もまた部屋のパソコンのスイッチを入れる。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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