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メディアグランプリ

「頑張らなくてもいいよ」は残酷な言葉でもある


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記事:深谷百合子(共感ライティング特別講座)
 
昔からずっとずっと違和感を感じていた言葉があった。
相手には悪気はない。いや、むしろ私のことを気に掛けて心配してこう言ってくれるのだ。
 
「そんなに頑張らなくてもいいよ」
 
だけど、その言葉を聞いた途端に、心の中でメラメラと燃えてたものに、しゅっと水をかけられたような、なんだかどうしようもない違和感を感じてしまうのだ。
 
初めてそう思ったのは30歳の時だった。
当時私は、1日4時間程度のアルバイトをしていた。仕事を再開するのは4年ぶり。アルバイトとは言え、自分が誰かの役に立てているという実感があった。そして、仕事を通じて、今まで知らなかった事を知る楽しさを味わった。
 
「今度、こんな感じの資料を作ってほしいんだけど」と手渡された下書きの原稿を見ながら、パソコンで作り上げていく。
 
最初はただ作っているだけだったが、そのうち、資料の中身が気になってくるようになった。
 
「この言葉の意味って、具体的にどういうことですか?」
「どうしてこの対策をとると、この問題が解決するんですか?」
 
資料を上司に手渡す時に、色々質問してみたりした。
上司は熱心な人で、丁寧に教えてくれた。そして新しい知識が、ひとつ、またひとつと増えていった。
 
そうすると、言われたことをやるだけでは次第に物足りなくなってきた。
「もっと仕事をしたい」と思うようになった。なんだか自分を持て余していた。
 
当時の職場は仕事が山積していて忙しかった。私は自分の中にある物足りなさを仕事量で満たした。4時間程度のアルバイトと言いながら、残業して実働8時間働く日も多かった。
 
そんな私に周囲の人は、「アルバイトなんだから、そんなに頑張らなくてもいいのに。なんでそんなに頑張るの?」と聞いてきた。
 
なんで? って言われても……。私はただ頑張りたいから頑張っているだけだ。認められたいとか、お金が欲しいとか、そういう気持ちが無かったわけじゃないけれど、そんなことよりも私はただ、自分の中で持て余している力を何かにぶつけたかったのだ。
 
そうして私は来る日も来る日も頑張り続けた。でも、自分の中にある物足りなさが満たされることはなかった。それどころか、職場で談笑している人たちを見て、こんな風に感じている自分がいた。
 
「なんで私だけこんなに頑張らなきゃいけないんだろう? なんか悔しい」
 
頑張りたいから頑張っているはずだったのに……。
気持ちとやっていることが嚙み合わず、泥沼にスタックした車のタイヤのように、空回りしていた。
 
もうなんか辛いな。そう思っていた時、上司が1冊の本を持ってやってきた。
 
「この間資料作ってもらった時に、これってどういう意味ですか? って聞いてきたでしょ。興味あるんだったら、これで勉強してみれば? きっと受かると思うよ」
 
上司から受け取った本は、公害防止管理者試験の問題集だった。
いやいやいや、こんなの無理でしょうと思ったけれど、挑戦しない理由もない。
 
最初は問題文の意味すら分からなかったけれど、ここで諦めたら自分の中で何かが終わってしまうような気がしていた。とにかく解答を見ながら、できそうなところから少しずつ取り掛かっていった。
 
続けていくと、関連する法律や公害問題を取り巻く世の中の動向など、少しずつ頭に入ってくる。
「あぁ、あの時作った資料に書かれていたのはこの事だったのか!」
と、点と点が結びついていくような感覚があった。
 
少しずつ分かり出してくると面白くなる。
私の中でくすぶっていた「頑張りたいエネルギー」は、この新しい手ごわい目標に注がれた。仕事も、ただ頑張るためだけの仕事ではなく、今のこの仕事をどう自分に役立てていこうかと思うようになった。
 
仕事量は減らなかったけれど、
「なんで私ばかりが頑張っているんだろう?」と思うことはなくなっていた。
新しい目標ができたおかげで、はまっていた泥沼から脱出し、全速力で走り出したのだ。
 
「頑張らなくてもいいよ」って優しい言葉だ。確かに頑張りすぎて、心も体も疲れ切ってしまうことも現実にある。私も、本当はやりたくないのにやらなければならない事を頑張り続けることはできない。でもそんな時はひょっとしたら、「頑張らなくてもいいよ」というよりは「もう我慢しなくてもいいよ」という言葉の方が響くかもしれない。
 
「もう頑張れない」という状況がある一方で、「もっと頑張りたい」という状況だってある。はたから見たら、どちらもしんどそうに見える。けれど、「もっと頑張りたい」と思っている時、「頑張らなくてもいいよ」と言われてしまうと、自分を否定されてしまったかのように感じてしまうこともある。
 
今や私も年齢を重ね、人から相談を受ける立場になっている。
目標に向かって頑張っている人には応援の後押しを、頑張りたいのに空回りしている人とは道筋を一緒に探し、もう頑張れないと座り込んでしまった人には「我慢しなくていいよ」と寄り添う、私はそんな存在であれたらいいなと思う。
 
《終わり》
 
 
 
 
***

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2021-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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