メディアグランプリ

走り続ける都市に住む


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記事:宮崎真帆(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
東京。
なんて素敵な響きなんだろう! そう口にすれば出身の方には苦笑されそうだけれど、私みたいな地方育ちにとってそれは本当に魅力的な言葉だった。西の田舎のテレビに映る、地元の話題と東京のニュース。書店では発売日に合わせて新刊が並び、美術館では大掛かりな展覧会が開かれている。毎日のように新しい商業施設がオープンし、季節ごとのイルミネーションがキラキラと輝く。東京は、憧れがそのまま固まった宝石のようだった。お城の舞踏会に憧れるみたいに東京に憧れを募らせた子供は、たぶん私だけではないと思う。
極めつけは、子供の頃、実際に足を踏み入れた東京の光景だ。当時、ある漫画が大好きで趣味の集まりに向かった私は、そのあまりの賑わいに息を呑んだ。これは都市で育った人にはなかなか想像しづらいと思うのだけれど、人が多いだけですでに凄いのだ。田舎はそもそも人がいない。しかも、同じ趣味を持った人、に絞るとその数は極端に少なくなる。
帰ってくる頃にはすっかり魅了されて、いつか絶対あの街に住むのだと心に決めた。たしか、中学三年生の冬のことだったと思う。
 
そうして今、私は東京に住んでいる。
移り住んでみて、理想との落差に肩を落とす日々……にはならず、やっぱりきらきらと輝いたままだ。
だた、住んでわかったこともある。この街はとにかく、体力を使うのだ。
 
なにしろ、すべてが目まぐるしい。田舎と時間の流れが違う。
またまた東京育ちの友人を困惑させそうなことを言っている気もするけれど、比喩表現じゃなく、本当に違うのだ。
歩く速度も話す速度もまったく違う。もちろん個人的な差はある。けれどやっぱり、総じて東京は速いのだ。ここでは「のんびりと話すよね」と言われる私も、田舎に帰れば「ずいぶんと早口になったね」と言われる。それぐらいの差がある。
電車の来る間隔だって驚異的な短さだ。いつもどこかが改装中で、駅ビルだってあっという間に生える。流行の移り変わりも激しい。本当にずっとマラソンをしているような街だ。止まることなく走り続けて、休むことがない。
それがたぶん、この街を輝かせている理由のひとつなんだろう。ずっと走って、変化し続けて、いつも新しい景色を見せてくれる。
 
もちろんそれがいいことばかりだとは限らない。振り落とされそうだなと思う時もある。目まぐるしく変わる風景の中、自分がどこを歩いているかわからなくなる感覚はちょっとした恐怖だ。私のような憧れとは逆に東京に恐怖を感じる方もいるというけれど、それはそれでとても正常な感覚なのではないかなと思う。無防備に飛び込むと大変なことになるのは間違いない。
 
けれどその恐怖と並走してでも、ここに暮らす意味がある。
少なくとも、並べられるたくさんの「最新」に、目を輝かせられる人たちは。
 
この街は国内からだけでなく海外からも、様々なものが集まってくる。物質的なものはもちろん、様々な人が住んでいるし、価値観も様々で更新も早い。自分のアップデートを迫られる頻度も多いけれど、その分、確実に視野は広がるし得るものも多い。自分が力を費やした分だけ、見られる景色も増えていく。目の前が、新しく開けていく。
インターネットが発達したおかげで、どこにいたって昔ほど情報の格差はない。スマートフォンをタップすれば知りたいことはだいたい知ることができるし、それで特に困らない。けれど最新をその目で見たいなら、感じたいのなら、この街に来て暮らしてみるべきだと思う。別に一生住む必要はない。少し暮らしただけでも、その経験はあなたに何かを残していく。それがどういうものかは人それぞれだろう。けれど、あなたにとって良いものであればいいなと思う。
 
とはいえこの東京についての様々な感覚は、地方の田舎で育った人間だから感じるものに違いない。幼い頃から住んでいる人には何ひとつピンとこない話題だろう。話は逸れるけれど、そういう方は一度ぜひ田舎で暮らしてみてほしい。一、二週間ほど暮らせば、私が言っていることの何割かはわかってもらえるのではないかと思う。あと、どちらが良いとか悪いとかいう話ではないことも付け加えておく。
 
コロナウィルスの流行で、東京は最初から大きな騒ぎになった。今もずっと渦中のままだ。色々なものが制限されてしまって、楽しみにしていた演劇にも美術館にも行けていない。飲食店はすぐ閉まってしまうし、シャッターの降りた商店だって多い。けれど、この街の魅力は変わらない。
いつもより速度を緩めた街を歩きながら、それでも「ああ、夢のような日々だな」と思う自分に少しだけ笑ってしまう。
 
 
 
 
***

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2021-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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