メディアグランプリ

カラオケというコンプレックス


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記事:ばる(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
僕はカラオケが大嫌いである。僕の嫌いなモノのランキングで、断トツの1位だ。理由は単純で、死ぬほど下手だからだ。いわゆる音痴なのだ。
妻と一緒に何度かカラオケに行ったことがあるが、僕が歌っているあいだ、妻はずっと肩を揺らしながら笑い続ける程だ。たまに下手過ぎて心配される。
最初に自分の歌唱力が他の人と違うと気付いたのは、中学時代の合唱祭の練習の時である。大声で気持ちよく歌っていた時に、先生が「誰かズレてるぞー」と、その時は誰か分からなかった。もう一度みんなで歌うと、先生から僕に対して「少し声を小さくしようか」と指示をされた。次から声のボリュームを落として歌うようになった。ズレている原因が自分だったのか分からなかったが、それでも何とも言えない違和感を覚えた。
そして、確証に変わったのが、高校時代である。3ヵ月に一度ぐらいのペースで友人とカラオケに行っていた。僕だけカラオケの点数がいつも低かったが、今から15年も前の田舎のカラオケの機械を誰も信じてはいなかったため、そこまで気にしていなかった。ただ、1回も高得点が出ていないのは、僕だけだった。
ある日、部活帰りに友人と帰宅していると、僕は無意識に鼻歌を歌っていた。歌っていると友人から「音がズレてるよ」と、鼻歌を指摘されたのだった。歌っているところを指摘されるならまだしも、鼻歌を指摘されるとは思っていなかったため、ショックだった。
家に帰ってからも、何度か歌って確かめたが、音がズレていることに自分では気付けなかった。その友人は周りから歌が上手いと評判で、その友人が間違っているとは思えなかったため、その時初めて、僕は音痴なのかもしれないと思ったのだ。
中学時代の合唱祭の練習、カラオケでいつも点数が低いこと、今回の友人からの指摘、点と点が線になっていった。学生時代の僕は、グループのリーダー的な立ち位置だったため、人からいじられることがあまりなく、周りが僕に気を遣って、歌が下手だということを言わなかったのだろう。今思えば、相当言いやすい関係でない限り、「きみは歌が下手だよ」と他人からはなかなか言われないかもしれない。
何も知らずに堂々と歌っていた自分が恥ずかしくなり、それからは、積極的にはカラオケにはいかないようにした。
 
ところが社会人になってから、更にカラオケが嫌いになる。学生時代よりも人付き合いや飲み会が増加し、その結果、断れない2次会のカラオケに行く回数が増えた。しかも、学生時代の自分の立ち位置とは関係なく、先輩や上司が容赦なく僕に対して「歌が本当に下手だねー」といじってくるようになった。挙句の果てには、カラオケでみんなが入れた歌の2番を全部僕が歌わされるようになる。10人ぐらいでカラオケに行くと、10回連続で僕が2番を歌うのだ。知っている歌すらまともに歌えない僕が歌えるはずがない。歌を入れた人の歌が当然ながら上手く聞こえ、そして頑張って歌っている僕の様が下手で笑えるらしい。いつもみんな爆笑していた。今考えると、間違いなくパワハラだ。
 
カラオケが下手なことは、今でも間違いなく僕のコンプレックスである。当然ながらカラオケ以外にもたくさんのコンプレックスがあるが、カラオケと同等かそれ以上のコンプレックスが実はもう1つある。
それは、白斑症という肌の病気を幼いころから患っていることである。白斑症とは、今だに原因が分からない肌の病気で、皮膚の色素の素であるメラニンを生成するメラノサイトという細胞が機能停止して、メラニンが作れない病気である。簡単に言うと、肌の一部分や全体が白くなってしまうのである。痛みやかゆみ、人に感染することは一切ないので、ただ見た目が悪くなるだけである。有病率は全人口の約0.5%~1%程らしく、おそらく身近に白斑症の人がいたり、街で一部分だけ肌が白い人を見かけたりすることがあると思う。有名人では、もう亡くなってしまっているが、森光子さんやマイケル・ジャクソンさんが白斑症だったと言われている。僕は、幸いにも元々の肌の色が白かったため、そこまで目立たなかったが、肌の色が黒い人や黒人は目立ってしまう。また、白斑症ができる部位はその人によるが、僕の場合は洋服で隠せる部位が多かったため、あまり気付かれなかったかもしれない。それでも特に見た目に敏感な思春期には非常に悩まされたし、プールや銭湯は死ぬほど嫌いだった。
そんなに嫌だった白斑症も実は今ではそんなに気にならなくなっている。どう克服したかというと、非常に単純で、気にするのをやめたのだ。今まではできるだけ人に見られないような服装をし、プールや銭湯ではずっと隠していたが、それらをやめたのだ。友人などにも自分から白斑症であることを打ち明けるようになり、その悩みも身近の人には伝えるようにした。
以前に比べ僕が白斑症であることや肌が白いことを気付かれているはずなのに、隠していた時よりも自信を持って人と接している気がする。もちろんコンプレックスがなくなったわけではないが、自分自身で白斑症であることを素直に認め、それを嫌がるような人がいれば付き合わないようにしようと気持ちを変えたことで、前向きに生活できるようになった。
 
人は、形は違えど様々なコンプレックスを抱えて生きている。簡単に人に言えるものもあれば、口が裂けても言えないものまである。他人からは「そんなこと」と思えることでも、当の本人は深く悩んでいることも多くある。特に現代では、他人と比べる手段が多くあるため、余計に悩み、傷つくのかもしれない。むしろコンプレックスというものは、他人から見て何か言われるというよりも、自分自身の問題であることも多いかもしれない。他の誰よりも自分は自分と接しているため、コンプレックスを意識する回数が多い。
 
しかし、それでも僕は、人と比較して自分の方が優れている点や劣っている点を探すのではなく、今の自分で堂々と生きる方がよっぽど自分の人生らしいと思う。明日からいきなり考え方を変えることは難しいと思うが、少しずつでも自分らしく生きられるように工夫することはできると思う。
 
話を最初に戻すが、僕は今でもカラオケがコンプレックスである。なかなか克服できない。今の自分で堂々と歌いたいのに歌えない。他人の目を物凄く気にしている。白斑症という病気については、あまり気にしなくなったが、カラオケは別だ。病気の方が重たいコンプレックスだと他人は言うかもしれないが、そんな人は僕の音痴を舐めていると思う。コンプレックスというものはそういうものだ。
ただ、僕はコンプレックスに負けたくないし、カラオケごときに負けたくない。他人から下手だと思われたとしても、自分が満足するカラオケをしたい。身近な人とのカラオケで堂々と歌って少しずつでも良いから克服してみせる。他人からしたらどうでも良いと思える僕のカラオケコンプレックスを克服するという決意表明をここに宣言する。
 
 
 
 
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2021-07-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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