プロに本業でボコってもらえる将棋の魅力
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記事:村人F(ライティング・ゼミ 超通信コース)
「もう将棋にハマってから5年経つんだなー」
藤井聡太先生のニュースを観ながら、しみじみ思いました。
14歳で最年少プロ棋士になった藤井先生も高校を出て社会人ですし、四段から始まった段位も最高位の九段まで昇段しています。
8つあるタイトル戦も2冠を達成しているし、本当とんでもないスピードで階段を駆け上がっているんだなぁって感じます。
そして藤井ブームで将棋に興味を持った私も、5年近く追っかけているわけです。
それまでは難しすぎてわからないとスルーしていたのに、今では10時間以上もやっている将棋中継を観戦するくらいになっちゃいました。
本当、藤井先生の力は大きいですねぇ。
そんなこんなで将棋にハマってからの間、様々なイベントにも参加してきました。
その中で最も特徴的だと思ったことは指導対局でした。
これはプロの将棋棋士の方と将棋を指すファンサービスですが、考えてみれば凄いことをしています。
なぜなら、プロに本業の将棋でボコってもらえるわけですから。
この凄さを野球と比べて考えてみましょう。
たとえば、大リーグの大谷翔平選手に対して素人の私が、「160kmのボールを投げてください!」なんて要求することは不可能です。
球にかすりもしない以前に、メチャクチャ危ないからです。
だからプロのやっている競技で直接対戦するなんて、ありえないことになります。
でも、将棋だとそれができちゃうんです。
頭しか使わないので、相手は決してケガをすることがありません。
そのためプロもファン相手に将棋を指すことができるのです。
これは大変すばらしい環境だなぁと思います。
プロがプロである理由を、本業の将棋を通して感じることができるわけですから。
私も指導対局を受けた経験があります。
対戦相手は先崎学九段。
「うつ病九段」の著者であり、羽生善治先生と同じ世代の棋士です。
そんな彼の経営している道場に行き、指導していただいたのです。
あの体験は今でも印象に残っています。
私は将棋がそんなに強くないので、先崎先生には駒落ちという最初に置く駒を少なくするハンデを付けてもらいました。しかし、それでもボコボコにされてしまったのです。
穴熊というディフェンスに特化した陣形で挑んだはずなのに、バナナの皮をめくるかのようにアッサリ丸裸にされ負けました。
向こうは使える駒が少ないのにこれですから、どんだけ将棋強いねんと衝撃を受けました。
この指導対局の魅力は対局後にもあります。
私が指した手のどこがよかったのか、悪かったのかを詳しく教えていただけるのです。
その内容がわかりやすいだけでなく、グサッとくるのです。
あの将棋で最も厳しく指摘されたのは、なんとなく駒を動かした一手でした。
「この一手はですねぇ、全く意味がないんですよ。得もしないし損もしないし、なにより意思を感じないんです」
こう先生に指摘されたとき、私はハッとしました。
普段の仕事でもよく怒られているポイントだったからです。
なんとなく仕事をした結果ミスをしてしまい、「もっと考えて行動しなさい」と言われることが多かったのですが、それを将棋でも指摘されたのです。
たった1局指しただけなのに、私の性格上の問題を把握することができるなんてプロは凄いと思いました。
これは一手指すのに1時間以上考え続けられるからできる芸当なのでしょう。その中で彼らは先の展開だけでなく、相手の心情までも察することができるのです。
プロの凄まじさを実感した瞬間でした。
この指導対局は、各地で実施される将棋イベントの花形です。
そのため、そういった場所に行けば皆さんも気軽に体験することができます。
そしてプロ棋士には個性的な方がたくさんいます。
藤井先生に対して闘志を200%むき出しで戦う佐々木勇気七段。
あまりにもストイック過ぎて「軍曹」というあだ名で呼ばれる永瀬王座。
そんな彼らと直接将棋を指して得られる経験は、なによりも格別なものでしょう。
もちろん始めたばかりの方でも問題なくできます。
駒落ちというハンデもありますし、なによりプロは相手に気持ちよく指してもらう方法を知っています。
だからスマホゲームでは体験できない将棋の魅力を肌で感じることができるでしょう。
プロに本業でボコってもらえる。
このスポーツ界ではありえないことが、将棋なら当たり前にできます。
ここで得られるものは、その道を極めた人にしか示せない真の面白さです。
皆さんも近くにプロ棋士のいる道場や将棋イベントがある場合は、是非いらしてみてください。
そこには、人生の教訓とまでなりうる特別な世界が待っていることでしょう。
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