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フリック入力の現実


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ロケットえんぴつ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
『文字を打つ』ことには自信があった。
高校生の頃からパソコンを使い始め、仕事でもプログラミングや書類作成をするので、かれこれ20年以上タイピングをし続けている。
 
「文字打つの早っ!」
一緒に仕事をしてきた人たちには、驚かれることも多く、私も軽くドヤ顔をしていた。
 
ところが、スマホとなると話が別だ。
パソコンのキーボード入力をする私が、オリンピック選手なら、スマホの入力をする私は、運動音痴だ。転んだり、時間がかかったりして、なかなかゴールへたどり着けない。
 
スマホの文字入力では、「あ」から「わ」など 12 個のキーで入力する、テンキー入力の場合、2種類の入力方法が準備されている。
 
1.トグル入力
 
あ:『あ』を1回打つ
い:『あ』を2回打つ
う:『あ』を3回打つ
え:『あ』を4回打つ
お:『あ』を5回打つ
 
2.フリック入力
 
あ:『あ』を1回押す
い:『あ』を押したまま9時方向へスライド
う:『あ』を押したまま0時方向へスライド
え:『あ』を押したまま3時方向へスライド
お:『あ』を押したまま6時方向へスライド
 
スマホ世代の若者たちは、2のフリック入力が主流かもしれない。
しかし私は、ガラケー世代。
ガラケーは、1のトグル入力しかなかったので、メールを打つときは、いつもボタンをポチポチと文字打ちしていた。
私の手に染みついたトグル入力のクセは、スマホになっても変わることなく、相変わらずポチポチ入力をしている。
 
LINEでメッセージのやり取りをしていると、その入力の遅さは顕著に現れる。
 
相手のメッセージに対し、私が返信を打ち込もうとしているのに、相手から次々と会話が入ってくる。
私が1つメッセージを送るのに、相手は3つも4つも送ってくるような感じ。
 
ちょっと待って! 今、返信しようとしてるのに!
 
会話がどんどん進んでいくので、せっかく入力した文字を消して、最新のメッセージに対し、必死で返信を試みるも、会話のスピードに追いつけず、私がメッセージを既読スルーしたようになっている。
 
スマホで早く、文字を入力できるようになりたいと思っても、ポチポチ入力には限界がある。時間はかかるし、ポチポチの回数を間違えて、誤字も多くなる。
かといって、フリック入力を試してみても、慣れないせいか入力しづらい。
「なんで、こんなフリック入力とか作ったんやろう?」
そんな風に思っていた。
 
ある日電車で、スマホを持った女子高生が、LINEのやり取りをしている姿が目に入った。
信じられない速さで文字を打ち込んでいる。
2倍速、いや、3倍速を見ているのかと思い、思わず二度見をしてしまった。
しかもフリック入力を使っているじゃないか!
私にとっては、衝撃でしかなかった。
 
「慣れたら、フリック入力の方が早いですよ」
一緒に仕事をした若手の男の子が、いつか言っていた言葉を思い出していた。
あの言葉は、あながち嘘じゃないのか……
 
私もフリック入力にチャレンジしてみよう!
そう思い、会社の後輩に声をかけた。
「LINEの文字って、フリック入力しよる?」
「はい、してますよ」
「私、いつもフリックじゃなくて、ポチポチって何回も押して入力しよるんやけどさ、時間かかるけん、フリック入力に変えたいんよね」
「えっ? ちょっと見せてください。“おつかれさまです”って入れてもらってもいいですか?」
 
ポチポチポチポチ……(“おつかれさまです”と入力中)
 
「おっそ! 笑」
「えっ? やっぱ遅い?」
「遅いですね。めっちゃ、大変じゃないですか? そんなにポチポチしてたら」
「じゃぁ入力してみてよ」
 
シュッシュッシュッ……(“おつかれさまです”とフリック入力中)
 
「はやっ! 嘘やん! なんでそんな早いと!?」
「いやいや、もっと早い人とかいますよ。私、遅いほうですって!」
 
「フリック入力ってさ、どこに『い』とか『え』とかあるか、覚えきらんのよね」
「えっ!? 覚えなくていいですよ! 感覚でいけますよ!」
 
『感覚でいけますよ……感覚でいけますよ……感覚でいけますよ……』
そのことばが、頭の中で3回くらいリフレインした。
私にとって、希望のようなことばだった。
“感覚”って……
文字の位置を一生懸命覚えようとしてたけど、フリック入力は“感覚”で入力できるように、ちゃんと配置されていたのか。
何それ、最高やん!
 
その日の夜、ちょうど友達とLINEをしていたとき、そのことを思い出し、さっそく“感覚”でフリック入力をしてみた。
 
『いえいえ、どういたしまして』 と入力したかったのに、
 
『おうおう、……』 となってしまう。
 
ん? 顔をしかめ、文字を全部削除する。
 
感覚! 感覚! と我に言い聞かせ、もう一度入力する。
 
『おうおう、……』
 
フリック入力は、「あ」を中心として、スライドする方向が、9時スタートの時計回り。
「 い(9時)→う(0時)→え(3時)→お(6時) 」
 
しかし、私の”感覚”は、「あ」を中心として、スライドする方向が、0時スタートの時計回りになっているようだ。
「 い(0時)→う(3時)→え(6時)→お(9時) 」
 
残念なことに、私の“感覚”はズレていた。
 
『文字を打つ』ことには自信があったはずなのに。
 
……?
 
フリック入力は『文字を打つ』じゃないのか!
 
『文字をスライドして入力』やん!
 
フリック入力の現実を知った私は、正しい“感覚”を体に覚えさせるため、トレーニングをはじめている。
運動音痴レベルから、オリンピック選手レベルにとは言わない。
せめて人並みレベルにフリック入力ができることを目指して。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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