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51歳のおばちゃんがまつ毛エクステサロンに通う理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:辻恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「デザインは、セクシーな感じ、キュートな感じ、ナチュラルな感じのがありますが、どれになさいますか」「カールはどんな感じをご希望ですか」「本数は何本にされますか」
矢継ぎ早に、娘よりも若い美しい店員に質問され、おどおどしながら答えた。
「もういい年なので、あまり派手にならないようナチュラルな感じで……お任せします」
 
友人と食事をした際、もともと年齢より若くえる彼女の瞳が、いつにも増して大きく輝いて見えたので、これは何かやったなと勘ぐった。
「整形なんかしてへんで、マツエクや。年のせいでまつ毛が細くなってきたし、美容院で勧められて通いだしたんや」
確かに、まつ毛が長く多くなったせいで、目がぱっちり大きく見える。
「子どもも大きくなって手が掛からんようになったし、そろそろ自分に少しくらいお金をかけてもバチは当たらへんよ」
 
そう、昔からおしゃれは嫌いじゃなかった。ただ、最近まで、おしゃれは生活の中の必須ではなかった。自分のやるべきリストの中では下位に位置していた。
仕事に家事、育児、介護、と追われる毎日が続き、趣味や楽しみはあくまで「時間ができた時」
おしゃれもその部類で、今は余裕がないと後回しにしてきた。
というか、面倒だったのかもしれない。
会社には大体決まったシャツを着ていき、美容院は3ヶ月に1回のペース。化粧品はそれなりに使用するも、ここ何年同じものを使っている。
「時間ができた時」の言い訳を回避するため「時間を作ればいいや」と最近になってようやく、趣味や楽しみに費やす時間を作ることに成功した。
おしゃれについても、ここらで一度冒険してみるのもありかもしれない。
 
「ごめんなさい! やっぱり目がパッチリ大きく見えるよう、キュートな感じでお願いします」
せっかくマツエクするのに、まあまあの金額支払うのに、ナチュラルではもったいない。
エクステ120本、細くヒョロヒョロの自まつ毛につけてもらい、目に少し違和感を感じながら、サロンを後にした。
「うわあ、みんな変だと思ってるんやろな」すれ違う人みんなが、マスクから覗くバチバチのまつ毛を見ているように感じた。
家に帰って、娘達の反応を何も言わず待つ。
しかしながら、思っている以上にリアクション薄く「ああマツエク行ったんや」のみだった。
 
下の娘は、私に似ておらず、完全に夫の遺伝子が強い顔をしている。
私は、若い頃から、美人な方でなく、モテる方でもなかった。「もう少しきれいに生まれていたら、もっと違う人生を歩めたかも」と自分の容姿にコンプレックスを持っていた。
下の娘は、そんな私の若い頃と比べたら、それなりに男性からも声がかかっているようにも見える。
本人いわく「仕事の一部や」
実は彼女は、「地下アイドル」とやらというのをやっている。多分、人並み以上に自分磨きに取り組んでいると思う。お金がないので、高い化粧品やエステに通うというわけではないが、ひたすら毎日筋トレをする、日焼けに気をつけるといったところだ。
何よりも、きれいになってアイドルとして人気が出るようにと、努力を重ねているように見える。
美への追求といういのが、半分仕事になっていると言えるだろう。
「がんばれ娘!」
 
上の娘は、残念ながら、私そっくりに生まれてしまった。顔が丸く鼻が低い。
それでも、大切にしてくれる彼氏ができて、最近では結婚も視野に入れているらしい。
彼氏と会う日には、華やかな香水をつけて、髪を巻き、美しいネイルをして出かけていく。
 
二人とも、それなりに美しく成長してくれた。
 
50代を迎え、改めて自分の姿を鏡に写してみた。
日焼けを気にしていなかったせいで、顔や腕に小さなシミができていた。髪には、少ない方であるが白いものが混じっている。お腹の贅肉は、毎晩の晩酌のせい。
歳を重ねたおばちゃんが、そこには立っていた。
おしゃれなんて程遠い存在。そもそもおばちゃんにおしゃれなんか必要なのか。
いい歳をして、マツエクしたことろで、誰が見てくれるのだろう。夫は当然のことながら、私のまつ毛のことなんか気にも留めていない!
 
それでも、私は次回のマツエクサロンを予約した。
 
すれ違う人が、私の目元に注目しているわけはなく、今さら男性の目を意識するということもない。
ただ、おしゃれをすることで、自分の中に何か満たされる快感が生まれた。
目元がぱっちり大きくなったことで、背筋をのばして姿勢良く歩いてみようと思った。
「今度少しヒールの高い靴を買ってみようかな」
長いまつ毛に合うような、アイシャドウも購入した。
 
遺伝的に引き継いだコンプレックスのある容姿は、歳を重ねることでさらに衰えを感じさせる。しかし、ただ歳を重ねただけでなく、私もそれなりに人生経験を積んできたつもり。
その経験の上にある、今の私の容姿に対して「お疲れ様」の意味を込めて、これからは、丁寧に磨き、大切していこうと思う。そして、おしゃれをすることで、人生の楽しみを更に増やすことができる。
それが50代の「おしゃれ」なのではないだろうか。
 
娘たちにも負けてられない。
「がんばれ私!」
 
 
 
 
***
 
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