メディアグランプリ

グルメバーガーのように生きていこうと決めた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:アキ・ミヤジ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「もう普通に歩けていますね!」
と、驚きと喜びまじりで周囲から言われるほどまで、私は歩けるようになった。
脊髄の手術を受け、リハビリを続けて半年。
車椅子生活を覚悟するように言われたことがウソのようだ。
 
けれども、まだ元通りに歩けているわけではないのが実感だ。
これまで通りに動かせない身体への不安はつきない。
歩けるようになっただけでもありがたいことなのはわかっている。
でも、歩けるようになると、元通りに身体を動かしたいと欲がでる。
 
欲が増えると不安になる。
これからどこまで回復するのだろうか。
この身体で、ちゃんと仕事ができるのだろうか。
また家族に負担をかけることにならないだろうか。
 
身体の回復のため、ヘトヘトになるまで歩くようにと、医師からは言われている。
もともと歩くのは好きだったので、たくさん歩くことに抵抗はない。
黙々と歩くことで不安な気持ちも忘れられる。
 
けれどもさすがに、ただ歩くだけでは飽きてしまう。
できれば、何か歩くことが楽しくなるゴールがほしい。
そう考えたとき、入院中のリハビリでお世話になった作業療法士Hさんの趣味を思い出した。
 
バーガー百名店めぐり。
5,6年ほど前から、素材にこだわったグルメなハンバーガー屋が増えているそうだ。
テレビドラマの題材にもなるなど、ちょっとした話題なのだとか。
そんな中、グルメレビューサイト「食べログ」がユーザーから高い評価を集めた百店のハンバーガー屋を選出したのが、「バーガー百名店」だ。
 
このバーガー百名店をめぐることが、ハンバーガー大好きHさんの趣味のひとつなのだそうだ。
ただ、医療従事者のため、コロナ禍ではまったく行けないと残念そうだった。
 
入院中でのHさんの話を思い出した私は、リハビリで歩く目的地をバーガー百名店にしよう! と決めた。
月に数度、ハンバーガー屋を目指して歩くことにした。
 
いくつかの店を訪れ、ハンバーガーをいただくと、たかがハンバーガーなどと侮るなかれ、お店の個性がそれぞれにあって、かなり楽しい。
 
ハンバーガーのメイン材料は、バンズと呼ばれる丸パンと、パティと呼ばれる薄手のハンバーグだ。
バンスを上下二つに割ったものの間に、パティ、ソース、野菜やチーズなどを挟み、かぶりついて食べる。
 
シンプルで豪快な食べ物だが、味わいは店によって様々。
パティの肉のかみごたえ抜群の店。
肉のジューシーさと甘みが強烈な店。
肉の焼いた香ばしさとバンズの小麦の香りが口に思い切り広がる店。
バンズ、パティ、ソース、野菜がひとつに調和したバーガーが楽しめる店。
 
店内で調理の様子が見えるのも楽しみのひとつ。
鉄板の上でバティがジュワッと焼ける音や、ふわりと漂う肉の香りがたまらない。
味覚の楽しみの前に、聴覚、嗅覚、視覚を刺激する、憎い演出だ。
 
こうして、リハビリ目的でハンバーガーを楽しんでいたら、次第に自分でも作ってみたくなった。
そこで、自宅でのバーガーづくりにチャレンジすることに。
 
まずはバンズ。
生地を練って丸めてオーブンへ。
焼き上がると、バンズの香ばしく甘い香りが鼻をくすぐる。
つぎにパティ。
牛ひき肉を軽くこねて、フライパンで両面を焼く。
焼きたてのパティ、好みの新鮮野菜、チーズ、ソースと一緒にバンズの間に重ねて、出来上がりだ。
 
人生で初めての手作りハンバーガー。
我ながら上出来で、家族もみな喜んで食べてくれた。
 
自分で作ったことで、ただ食べているだけでは気づかなかったグルメバーガーのこだわりも見つけられた。
一番の驚きは、バンズの間に重ねる具材の順を変えることによるバーガーの味わいの変化。
 
最下段にパティを置いてから野菜などを挟む。すると、食べたときに肉の旨味や食感がダイレクトに舌で感じられて、肉のインパクトが強い。
逆に、パティを野菜の上に置く。すると、肉の旨味を野菜の瑞々しさが包み込むようで、味のバランスが良い。
 
具材を変えれば味わいが変わるのは容易に想像できるが、具材の順番を変えても味の楽しみが変わることまでは想像できなかったため、衝撃的だった。
 
こうして歩いて、食べて、作って、グルメバーガーを楽しんでいるうちに私は、グルメバーガーが秘める味わいと同じ多様な可能性が、自分の人生にもあるのかなと思うようになった。
 
元通りには歩けないかもしれない。
走ることも難しいかもしれない。
そう思うと不安でしかたがない。
 
けれども、歩けること、走ることだけが私の人生のすべてではない。
これまで使っていた具材のひとつやふたつが使えなくても、これまでとはまた違った味わいの人生を過ごせばいいのだ。
これまで使わなかった具材を試してみてもよいし、まだ残された具材の組み合わせを変えてみてもよい。
そうすることで、驚きの新しい味わいに満ちた人生が過ごせるに違いないと思うようになった。
 
どんな具材が私の人生を驚きの味わいにするのかは、やってみなければわからない。
それは試行錯誤で、めんどうなことかもしれない。
自分の身体が不安なことには変わりはないかもしれない。
 
そんな風にすこし弱気になったとしても、グルメバーガーを口いっぱいにほおばれば、私はまた思うのだ。
様々な味わいが楽しめるグルメバーガーのように、私は人生を楽しみたい!
 
 
 
 
***
 
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2021-11-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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