メディアグランプリ

私の大切な相棒Fiddlerさん


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記事:citron(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「さあ、今日も行くよ~、citronさん」Fiddlerさんは演奏会に行く前にいつもこう言う。Fiddlerさんは私の合奏のパートナー。大正9年生まれ、御年101歳、私のピアノの先生のお父さんだ。彼はアマチュアのヴァイオリニスト。101歳の今も現役だ。私は彼のヴァイオリンのピアノ伴奏者。老人福祉施設を中心に、慰問演奏を行っている。コロナ禍になり、この活動は休止しているが、それまで4年程近隣の老人福祉施設で慰問演奏を行っていた。
 
Fiddlerさんの音楽経歴はちょっと異色だ。大学卒業後、商社に就職が決まっていたものの、召集令状がきて、第2次世界大戦に出征。幸い無事生き残り、復員されたが、一時期商社は仕事ができなかったので、その間に大学時代にやっていたヴァイオリンをもう一度学び直そうと思われたらしい。東京音楽学校(現・東京藝術大学)のヴァイオリン専科に欠員募集
があり、合格し学び直されている。
 
無事卒業され、その頃から商社の仕事が本格的に忙しくなり、Fiddlerさんはモーレツ社員として商社で世界を股にかけて忙しく働かれる。そんなFiddlerさんの音楽活動は、商社でのサラリーマン人生を終えてからまた花開く。70歳の頃から、六本木の「ドナウ」というビアレストランでヴァイオリンを弾き、ソロでヴァイオリンを奏でることに目覚め、そこから演奏活動を本格化される。ウィンナーワルツはFiddlerさんの得意なレパートリーの一つだが、ここから始まったようだ。
 
Fiddlerさん、Fiddlerというハンドルネームを使われているが、Fiddlerという言葉の意味は、ヴァイオリン弾き。Fiddlerさん曰く、「私はヴァイオリニストではなくチンドン屋」なのだそうだ。チンドン屋とは言い過ぎかもしれないが、確かにFiddlerさんのヴァイオリンの音色は「きれい」というよりは「味がある」と言う方が、表現が合っている気がする。とても味のある音色を奏でられ、その音色は酒場で聞くととてもしっくりくるかもしれない。
 
私がFiddlerさんの伴奏を始めたのは、彼は95歳くらいだっただろうか? Fiddlerさんには歴代伴奏者がいた。皆美人の若い女性らしい。娘である私のピアノの先生に、「父の伴奏者がいなくなったから、やってくれない?」と頼まれたのがきっかけだ。私はアマチュアのピアニスト。4歳からピアノを習っているが、音楽を専門的に学んだことはないし、合奏もしたことはなかった。ただ頼まれてやってみたら、妙にFiddlerさんと息が合ったので、私はFiddlerさんの伴奏をすることになった。私は最後の伴奏者になるのだろうか?
 
Fiddlerさんは年齢を感じさせない。いつも明るく、ウィットに富んだ面白い会話をしてくれ、なんと私の方が元気をもらうのだ。元商社の営業マンだったFiddlerさん。まだ日本国民の誰もがパスポートを持っていない時代から、世界中を飛び回っていただけに、異国情緒にあふれる話が豊富で、演奏会での曲の説明はまるでそこにいるかのような情景が浮かぶような話を聞ける。私はこの曲の解説が大好きで、伴奏者なのにいつも聞き入ってしまっていた。Fiddlerさんには、女性ファンが多い。女性を虜にしてしまう魅力が、音色と話術にある、と一番近くで見ながら私はそう思っていた。
 
そんな味のある魅力的なFiddlerさんに長生きの秘訣を聞いてみた。「やっぱり好きなことをやることだね。音楽はいいよ。特に歌もいいね」とのこと。Fiddlerさん、97歳からなんと声楽を始められた。「医者に歌を歌うといいと言われてね。でも私はカラオケが好きではないから、だったら声楽を習おうと思って」97歳で新しいことに挑戦されるその気力がとても素晴らしく、脱帽だ。そして歌がだんだんうまくなり、声量も増えていくから驚きだ。97歳でもまだまだうまくなるらしい。101歳の今もヴァイオリンだけでなく、歌も歌われている。最近はむしろ歌がメインになりつつある。
 
Fiddlerさん、ヴァイオリンや歌の練習はあまり好きではないらしい。「僕はオイストラフ方式でいくんだ」とよく言われているのだが、それはオイストラフというヴァイオリニストが練習はそれほど気合を入れず、だが本番ではきちんと弾く。それを真似している、とのことだそうだ。練習をしない言い訳のようにも聞こえるのだが、101歳にもなると、全てに全力投球では体力、気力ともにやっていけないから、Fiddlerさんなりに手を抜いているのだろう。101歳までヴァイオリンを現役で弾けるコツは、適度に手を抜きながら、楽しむことなのだろう。アマチュアのヴァイオリニストだからこそできることなのかもしれない。
 
Fiddlerさんには、今お気に入りの歌がある。ドリス・デイのケセラセラ。それもFiddlerさんは歌詞をこう変えて歌っているそうだ。「ケセラセラ~なるようになる~明日のことなどわからない」私もFiddlerさんを見習って、人生楽しく長生きしたいものだ。
 
 
 
 
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2022-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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