わたしはパンダになりたい
記事:Shimaya.Sさま(ライティング・ゼミ)
これ以上の矛盾は、みたことがない。
辞書ですら、やすやす認めている矛盾。
何十年も残っている、壮大な矛盾。
誰もが目の前のこの矛盾を、見て見ぬ振りをする。
これは由々しき事態である。
日本人の不干渉の態度が、実に見事にあらわれている。
この問題の本質は、一種の民族問題なのか!
この大問題に今、決着をつけよう。
「二度あることは三度ある」VS「三度目の正直」!
なぜみんなして共存を許しているのか!
白か黒かを決めないのか。
パンダだ! みんな、パンダだ!
みんな白黒両方ほしがる、どっちつかずだ!
それはパンダの専売特許、
人間ならばどっちか選ぶべきだ!
今日こそ白黒はっきりさせようじゃないか。
3番勝負でいざ、決着をつけよう。
選手紹介!
「二度あることは三度ある」!
知らないとは言わせないこの名ゼリフ!
デジタル大辞泉によると、
「二度あったことは必ずもう一度ある。物事は繰り返されるものである」
「必ず」とな! 言い切った! 言い切りよった!
かなり自信ありだ!
「三度目の正直」!
こちらも聞いた回数は数知れず!
体言止めも活用してこれ以上ない要約がされている!
デジタル大辞泉によると、
「占いや勝負で、一度や二度は当てにならないが、三度目は確実であるということ。
転じて、物事は三度目には期待通りの結果になるということ」
確実! これは期待出来る!
まずは第1戦、
「あのコをあきらめられない彼のリベンジ」
あなたの友人が、憧れのあの人に告白しようとしている。
聞くと、これまでに2回、しくじっているようだ。
それでも恋心はノンストップでヒートアップ、友人は3度目の告白を決意。
友人の言い分はこうだ。
「三度目の正直って言うじゃん! 今度こそいける気がする!」
それを聞いたあなたは、そう、
(二度あることは三度ある、とも言うよ……)
間違いない。仰る通り。
しかし、今のあなたの友人には間違いなく
「三度目の正直」が好都合なのだ。
そして、やはり挑まなければ結果はないのもまた、事実だ。
友人なら、彼の背中を押してやろうじゃないか!
「三度目の正直」の勝利!
続いて第2戦、
「三回目にしてやっと、宝クジ当たった! 次も買おうかな」
めげずに買い続けたLOTO7。
前回前々回はなんの報いもなかった。
しかし今回やっと、当たったのである。
ツキがまわってきた!
このツキを、続かせたいものだ。
「三度目の正直」では、三度目で目的が完了されてしまうことを
暗に示している。
四度目以降については知らぬ存ぜぬである。
ケチである。非常にケチくさいのである。
もうLOTO7に望みはないのである。儲ける期待は失われた。
一方「二度あることは三度ある」では、四度目以降の繰り返しについて言及していない。
しかし、数学でさせられてきたように、
「二」を「n」、「三」を「n+1」とするならば、
「n度あることはn+1どある」ことになる。
つまり、同一の現象は幾度となく、永久的に繰り返されることになる。
やっと引き寄せたこの運は、また次も味方してくれそうである!
「二度あることは三度ある」の勝利!
そりゃ誰だって、このツキに乗っかって、また良い思いをしたい。
その可能性を残すのは「二度あることは三度ある」だった。
最終戦までもつれ込んでしまった。
ここまできたら、実証実験あるのみだ。数字こそは、軍配をあげてくれるはずだ。
最終戦は「数学者にお任せ」である。
まず、「二度あることは三度ある」確率を考える。
二択であった場合、まず「二度ある」確率は
1/2×1/2=1/4
それが三度目にも起こる、つまり「二度あることは三度ある」確率は
1/4×1/2=1/8
よって、12.5%という確率になる。
次に、「三度目の正直」になる確率を考える。
まず、これまでの二回は達成されていないはずなので
1/2×1/2=1/4
三度目にして初めて達成されている、つまり「三度目の正直」となる確率は
1/4×1/2=1/8
よって、12.5%という確率になる。
同じだ。見事に同じである。数学者も、かなわない。
引き分け。
3回の勝負の結果、
一勝一敗一分。
決まらなかった。
白か黒かに決まらなかった。
みんなパンダになるしかないのか。
結局、この矛盾は放っておいていいのか。
いや、よくないはずだ。
先日、母娘ケンカをした。
まさにこの矛盾がもとになったケンカである。
スポーツバイクを愛する私は、一人で、マイペースに自転車旅をすることが大好きである。
昨冬と昨春とも、自転車旅した。とても素晴らしい思い出である。
しかしこの自転車旅で、少しばかりのケガと事故とがあった。
私はそれでも、この夏も旅に出たい。
ケガも事故も大したものではなかったし、対策も講じた。「三度目の正直」を訴えた。
しかし、母はやめてほしいと言った。「二度あることは三度ある」と、聞かなかった。
互いに譲らない2人。と、2つのことわざ。
かなり、もめた。
何を言おうと、
感情論で話をする母と理論的に話を進める私で、
まったく話がかみ合わない。
話がかみ合っていないと、私の言っていることが伝わっていないと、
そう言っても感情的になっている母には伝わらない。
結局、悲しい事に私と母との間には
相容れないところがあるのだ。
どちらも悪くない。
白黒どちらかにできる話ではないのだ。
無理に合わせれば、グレーになる。
グレーにはなりたくない。
くすんでしまう。
どちらも失われてしまう。
ケンカして、少し口をきかない間に思った。
どっちも認めよう。
お互いに隣り合って、線引きを認めて、受け入れ合おう。
どちらも悪くない。どちらも無くしたくない。
パンダになろう。
白も黒も、もっていよう。
とりあえずこの夏は、旅に慣れている親戚のおじさんにでも同行してもらおう。
感情的になってしまう母を受け入れ、母の気持ちを思いやった話し方をしよう。
「二度あることは三度ある」VS「三度目の正直」は、
結局白黒つかなかった。
しかし、それで良いのだ。
世の中にははっきりさせる必要のないことが
たくさんある。
パンダになろう。
白も黒も、もっていよう。
***
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