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母娘、二代続けての教え子から学んだ「先生であること」の意味


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:安居 長敏(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
新任だろうがベテランだろうが、ひとたび教壇に立てば「先生」と呼ばれ、児童生徒の学びを導き、育て、人生を説く役割を担う。経験の長短に関わらず、子どもたちから見れば同じ先生であり、決して「未熟だからできません」で許されはしない。
 
未熟さ故に不安があるのなら、いかにそれをカバーするか。自分で力量を高める努力をするなり、仲間の助けを借りてチームで対処するなり、対処方法を工夫すべきだ。
 
そんな中で、先生を「先生にしてくれる存在」として、私は「目の前にいる児童生徒」を一番に挙げたい。相手にする子供たちがいるからこそ、先生でいられる。そう思っている。
 
最初に勤めた学校を42歳で辞め、ラジオ局の運営やDJの傍ら、パソコンのオンサイトサポートで生活の糧を稼ぎながら勝手気ままに過ごした四年間を経て、再び教師として仕事を始めてしばらく経った頃の話。
 
入学希望者とその保護者を対象にしたオープンスクールで、こんなことがあった。
 
午前中のプログラムが終わり、参加者をカフェテリアに案内している時、案内係の生徒からこんな声がかかった。
 
「先生の前任校の教え子さんが、娘さんと一緒に来られています。旧姓Tさんといって、ぜひ先生とお話しがしたいと」
 
名字を聞いて、何人かの卒業生の顔を思い浮かべつつ、会いに行った。
 
「おぉ~、懐かしい。いいお母さんになってるやん!」
 
高校教師になって二年目。初めて担任として配属された学年団で、高二・高三と続けて二年間受け持った教え子が、かわいい娘さんを連れて目の前に立っていた。
 
娘さんの志望校の一つとして本校が候補に挙がっているらしく、学校案内に私の写真が載っているのを見つけ、直接、いろいろな話を聞けると思ってやってきたとのこと。
 
飛び上がるほど嬉しかった。
 
こんなふうに、かつての担任を頼って来てくれるなんて、なんと教師冥利に尽きることか。もう、何でもしてあげたい感情に流されそうになる。
 
当時から数えて25年以上も前に送り出した卒業生だったが、会えばすぐ、昔の高校時代にタイムスリップし、「あんなこともあった、こんなこともあった」と話が尽きない。その横で娘さんが、二人が話すのを笑顔で眺めつつ、「それでどうしたの?」と目を輝かせて話に入ってくる。
 
娘さんとは、この日が初対面。なのに、他人とは思えないこの感覚はいったいどこからくるのか。
 
「どう先生? 自分の孫みたいやろ」
 
そう笑顔で話す卒業生を前に、自分が担任として接してきた当時の関わりが間違いではなかったと気づくのに、さほど時間はかからなかった。
 
「今も毎日言ってるの? “シャキッとせ~”って!」
 
「えぇ〜っ、よく覚えてるなぁ」
 
ロングスカートが大流行りの、ヤンキー姐ちゃん全盛期。私は、授業中もなかなか勉強に身が入らない彼女たちに、毎日、振り回されてばかりだった。
 
「でもな、いい先生やったと思ってる!」
 
「だから、娘もお願いしようって。そう思ったねん!!」
 
当時、まだ大学を卒業して間もない、教師としての経験もゼロに等しい私が、彼女たちにどんなことを教えられたというのだろう。いきなりこんなことを言われて戸惑う私に、彼女は続けた。
 
「久しぶりに会っても、同じこと感じるもん。やっぱり先生は教師が天職やな。よ~く似合ってるわ!」
 
一時期、学校とは全く別の世界に身を置いた私だが、教壇に戻って四年目。改めて教師の世界、教育の現場に魅力と生き甲斐を感じられた瞬間だった。
 
さらに話は続く。
 
翌日の朝、彼女からこんなメールが届いた。
 
『先生、おはようございます! 昨日はお会いできて、本当に良かったです。学校の事について知ることができました。ありがとうございました。正直、娘もまだ迷っていますが、先生のお話を聞いて気持ちにゆとりが持てたように思います。先生との話は、娘にとって希望の光になりました。諦めかけていた私立高校への進学が、自分の頑張りしだいで実現できるのだとわかったみたいです。ねっ、まさかですよね。まさか親子でお世話になるなんて。まして、学校も違うのにね。いや~、ホンマに私の担任が先生で良かったです。安居先生、ばんざ~い(^_^)v』
 
ちょうど、昨日のことを自分のブログに書いたばかりだった私は、その連絡も添えて、すぐ彼女に返信をした。
 
『昨日はご苦労さまでした。ほんと、まさかの再会っていうか、ビックリでしたね。僕の方こそお会いできて嬉しかったです。お嬢さん、なかなかステキじゃないですか。しっかりしているし、元気がよくて、かわいいし。ぜひ本校に来てほしいです!』
 
夜になって、彼女からまたメールが届いた。
 
『先生、ブログ見ました!! 娘が「会話までバッチシやわ~」ってニコニコして読んでいました。メッチャ久しぶりに会ったのに、先生はあの当時と何も変わっていなくて、出会った瞬間に「3年C組」に戻りました。個別相談の時、先生が笑顔で娘を見ているのがすごく印象的でした。「シャキッとせ~よ!」も忘れられません。私も娘にいつも言ってるしね。私だけでなく、先生が担任した生徒たちは誰もが「先生で良かった」と思っています。ず~っと教師していてくださいね。ヨボヨボになっても辞めないでください。そして、私たちみたいに「先生が担任で良かった」っていう生徒を育ててください。先生ホンマ、教師が天職なんやから。教え子が言うてるし、間違いないからねっ!』
 
卒業生が、お母さんになってもこんなふうに言ってくれる。
 
それだけで十分。
 
いえ、こういう教え子を持てたこと自体、教師としての自分がどれほど助けられていたかってこと。
 
その後、卒業生の娘さんは本校に入学。立派な成績で高校を卒業し、看護学校へと進学。いまはステキな看護師として頑張っている。
 
一生懸命やっている姿は必ず相手に響き、相手を思う気持ちは必ず相手に通じる。そんなことを感じさせてくれる教え子たちこそ、「私の先生」だ。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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