イケメンで学生時代にスポーツをしていた優しい男性を募集しております（できれば30～35歳くらい）
＊この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：川端彩香（ライティング・ゼミNEO）
いや、こんなはずじゃなかったんだよ。
30歳独身女の私は、毎日一回は思う。こんなはずじゃなかった、と。
私の予定では、27歳くらいで結婚を前提とした彼氏ができて、30歳くらいで結婚して、32歳くらいで子どもが生まれて、幸せな家庭を築いていて、時短勤務でしっかり働いていて、犬も飼っていて、という生活を送るはずだった。
薄々お気づきだろうと思うが、予定が大幅に崩れてしまっている。
冒頭に「30歳独身女の私」と書いてしまっている。そう、私は30歳の現在、結婚していない。そして結婚を前提とした彼氏もいない。ということは、もちろん現段階で子どもが生まれる予定もない。
「結婚してそうなのにね」とか「彼氏いそうなのにね」とよく言われる。お世辞なのか、本音なのか、気を使ってくれているのか、はたまた遠回しの嫌味なのか。正直どれでもいい。でも、それを言うなら誰か紹介してくれよ！！！ というのが30歳独身女の本音である。誰か、結婚したいけどできない、且つ候補の誰かもいない、この結婚に関して全方位にデリケートな30歳独身女を、助けてくれよ！！！！
……と、少し心の叫びを吐き出したりしてみるが、叫んだところで何も変わらないのは本人（30歳独身女、つまり私）が一番よくわかっている。
いやしかし、まずい。これはまずいぞ。
私の予定からは大幅にずれた現実が進んでしまっている。こんなはずじゃなかったのに。
先日、「占いに行きたい」という友人と共に、とある占いの館に行った。
占いのすべてを信じているわけではないが、何か思い悩んだときや友人や同僚以外の意見を聞きたいときは参考にしている。
占ってもらうのは、もちろん結婚運だ。仕事運なんて、どうでもいい。いや、どうでもいいというと少し語弊があるが、そのへんは自分でどうにかするから、とにかく結婚運を見てほしいのだ。占いをすべて信じているわけじゃない私も、結婚に関して五里霧中な状況の今、占いの結果でくらい「大丈夫ですよ、もうすぐ素敵な相手が現れて、もうすぐ結婚できますよ」と言ってほしいのだ。
その日、私が指名したのは関西ローカルの複数のテレビ番組に出演経験のある、60歳すぎのおじいちゃん占い師だ。テレビ出演が多いから、なんとなく他の人より信用できるかな、という少しミーハーな理由で選んだ。生年月日、生まれた時間と手相を組み合わせて占ってくれた。
「どうですかね、私、結婚できますかね」
前のめりで聞く私に、隣で一緒に聞いていた友人は少し引いていた。でもそんなの関係ない。ミーハーな理由で選んだ占い師に「結婚できるよ」と言ってほしくて必死だったのだ。
「うん、まぁ結婚はできるから安心しなさいな」とおじいちゃん占い師は言った。
「うお！ まじですか！ やった！ よかった！ ありがとうございます！」と謎のお礼をおじいちゃん占い師に言ってしまうくらいにはテンションが上がった。
結婚は、できるらしい。その点は、すごく安心した。
「ちなみに、いつ頃その人と付き合うんですかね？」
もう完全におじいちゃん占い師を信用しきってしまった私は、ずんずんと質問しまくった。結婚できるとなれば、残る知りたいことは、いつ頃、どんな人と、ということだ。
「だいたいやけど、今年の夏以降かな～、下半期やな。で、来年に結婚！」とおじいちゃん占い師が言い、先ほどまで私の必死さと圧に少し引いていた友人も「おお！」と興奮していた。もうすぐじゃないか！ 少し計画はズレたが、私の描いていた明るい未来、もうすぐやってくるじゃないか！
「じゃあ、どういう人がいいんですかね？」
「えっとね、イケメン」
……ほう。
「イケメンで、学生時代にスポーツやってて、優しい人がいいですね。で、できたら年上。年上すぎると合わないから、35歳くらいまでかな。年下も悪くないけど、その場合も25歳くらいやな。うーん、でも、年上の方がいいですね！」
イケメンで、学生時代にスポーツやってて、優しくて、30～35歳の人。
……いや、おらんがな。絶対おらんがな。
先ほどまで一緒に興奮していた友人も、スンとした顔になっていた。
オーバー30でそんな好条件、おらんやろ。
だいたいイケメンというのは、昔から競争率が高い。そしてその競争率が高いイケメンは、だいたい女子の中でもカースト上位の美女により争奪戦が行われ、その争奪戦で勝利した美人とくっつくのだ。カースト下位のそのへんに転がっていそうな「性格は良さそうだけど……」と顔面に関するコメントに少し気を使わせてしまうような女（つまり私、ちなみに性格はよろしくない）は、そのイケメン争奪戦に参戦する権利も資格もないのだ。そう、顔面偏差値50くらいの可愛くもないが「ブス」ともイジりにくい中途半端な女（つまり私）にとってイケメンは見る専門なのだ。眼福の対象として置いておく存在なのだ。そして諸々の中途半端さをウリにして、自虐で笑いを取らないといけないという謎の使命を抱いている少々面倒くさい女（つまり私）はイケメンと人生が交わることは決してなく、そういう好条件すぎるイケメンはカースト上位の美女と早々に結婚してしまっているのだ。その年齢相場はおおよそ24～27歳くらいの間だろう。イケメン（しかも好条件）と人生を共に歩むには、もう早々に試合は始まっているはずなのだ。そして、その試合はもうほぼ終わっているだろう。すなわち、好条件イケメン（未婚、彼女なし）はもう絶滅危惧種といってもいいだろう。
しかし、それを捕まえて、結婚できると。
しかも、学生時代にスポーツをやっていた爽やか系。
しかも、性格まで優しい。
そして、年齢は30～35歳（25歳までなら年下も可）。
いや、おるか？ おらんだろ？
「顔で選びなさいよ～」とおじいちゃん占い師は笑顔で私たちを見送ってくれた。
私は本当に結婚できるんだろうか……。
翌日、妹から連絡がきた。
「お父さん、お姉ちゃん（私）にまだ彼氏おると思とったで。いつの話やねん、もうとっくに別れとるで、って伝えといたから」と。
そういや数年前に彼氏の有無を聞かれ「いる」と答えたな。その数ヵ月後に別れてしまったが、わざわざ報告することでもないだろうと、そのままにしていた。まさか、まだ彼氏がいると思われていたとは。
「お父さん、めっちゃ心配しとったで」と妹から連続で送られてくる。
「自分が育てた娘が、誰にも選ばれないというのがつらい」と。少し心が痛んだ。
というわけで、結婚相手、絶賛募集中です。
イケメンで、学生時代にスポーツをやっていて、性格は優しくて、年齢は30～35歳くらいの人（25～29歳も可）を知っている方は、ぜひ私までご連絡ください。
今年の夏以降に、ぜひお会いしましょう。
＊＊＊
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