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メディアグランプリ

なぜ詰める?そこに穴があるから


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田 光(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
パソコンの前に座っているくせにキーボードも叩かず固まっている私を見て、何をしているのかと中学生の娘たちが言う。ライティング講座の課題に取り組んでいるのだがネタに悩んでいると答えると、ならば私たちについて語ればよい、私たちを愛で、私たちを褒めたたえる話ならいくらでもできるだろうと、子どもの立場としては自信満々の、しかし親を試す気も満々の答えが返ってきた。これはもはや提案ではなく命令である。
しかしそうはいっても、親からすると子どものことで真っ先に頭に思い浮かぶのは「やらかし系」の話ばかりだ。だってそうだろう。一歩間違えば命にかかわることでも無自覚でやらかすヒヤリハットな時期が確かにあったのだ。少なくとも、ものの道理が分かるほどに子どもたちが成長したころ、私は肩の荷が下りた気がした。よって娘たちよ。すまんが君たちが望むような話にはならないかもしれない。
よく聞く話だが、幼児が穴を好きなのは子育てを通じてよく分かった。正確には彼らは、穴を見ると①何かを詰めたい②穴を広げたいという衝動に駆られるようだ。
長男は4歳のころ、自宅の漆喰の壁に直径6センチほどの穴を掘った。友達と二人で二階の部屋に閉じこもり、やけに静かにしているので嫌な予感がして上がってみると、二人で壁に貼り付いてグリグリと穴を広げていた。元々そこにピンホール程度の穴があったのだろう。それを見つけた二人は好奇心の赴くまま、ボールペンの先を突っ込んだらしい。
「壁に穴が開いているけど、どうしたの?」
と尋ねると、
「なんにもしてないのにちょっと触ったら穴が開いた」
などと言う。うちの壁は豆腐かよ! と突っ込みたくなったが、二人の目が泳いでいるのをみると、悪いことをしたという自覚はあるらしい。それに壁の穴開けなどネズミでもやること。この程度の被害なんぞ屁でもない。本当に注意すべきは、子どもたちが自分の耳の穴と鼻の穴を自覚したときだ。
わが家の子どもたちはみな小さいころに食物アレルギーがあったので、保育園に症状を報告するため、定期的に主治医に検査をお願いしていた。
あるとき病院に行くと、長女の鼻の中を覗いた主治医が「右の鼻粘膜だけ腫れています。アレルギー症状の鼻炎ですね」と言った。それ自体はアレルギーっ子によくあることなので疑問に思わなかったが、2~3か月ほど経ってから、長女が大きなくしゃみをした瞬間に鼻から何かが飛び出てきた。見ると小指の先ほどの大きさの赤いボタンだ。そういえば長女のお気に入りの赤いブラウス、ボタンが一つなくなっていたっけ。
「このボタンが鼻から出てきたけど、入れた?」
「分からん」
「ですよね~」
数か月も前のことを3歳児が覚えているはずもない。ブラウスについているボタンと鼻から出てきたボタンを見比べると、明らかに鼻からの方が色褪せしていた。プラスチックは鼻水で退色するのだろうか。やはりこれを詰めたのは前回のアレルギー検査より前だったのだろう。
数か月後、再び病院を訪ねたときに「前回、右の鼻粘膜だけ腫れていた件ですが、あのあとくしゃみをしたらボタンが飛び出てきました」と伝えると、主治医は絶句していた。あのときに鼻鏡で中を覗いても見えなかったのだから、かなり奥に詰めていたに違いない。
ここで考えるべきは防止策だが、本人が忘れていることを今さら言って聞かせても意味がないし、言えば言うほど余計にそちらに意識が向く。つまり基本的には私が気を付けるしかないのだ。ああ、いつまで続くこの緊張感。
それなのに次女も3歳のときに鼻に小豆を詰めた。畑で採れた小豆を私と母が選別していたときのことだった。幸い本人が「豆が取れん」と自己申告したのでよかったが、次女は私たちのすぐ横にいたのに私も母も気づけず、長女のときの教訓は生かせなかった。鼻の中を覗くと確かに奥に紫色の丸いものが見える。これは私の手には負えない。こんなときこそ餅は餅屋、豆は耳鼻科だ。
急いで病院に車を走らせたが、そこからは展開が早かった。医師は「よくあることですよ」と言うと、あっという間に小豆を取り出した。ほんと勘弁して。
さて、ここまで仕上げて娘たちに読ませた。こんなカッコ悪いことは書くなと言われると思いきや、ゲラゲラと大笑いして私をどれだけ困らせたかを聞きたがり、手を叩いて喜んだ。子どもは褒められるときだけでなく、もっと大きなくくりで親の注意が自分に向いているときに嬉しさを感じるのだろう。喜んでもらえて何よりだ。
さて今後は「穴」ではなく「悪い虫」か何かに注意すべきだろうか。いや、私が鼻豆を防げなかったのを棚に上げるわけではないが、失敗から学ぶという経験は貴重だ。これからは子どもたちの失敗する権利を尊重しつつ、こっそり後ろからハラハラしながら見守るのが私の役目なのだろう。
 
 
 
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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