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モルフォ蝶を咲かせる、オタク魂


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小西 裕美(ライティング・ゼミNEO)
※この話はフィクションです。
 
 
まるで絵具をそのまま髪に塗ったような、真っ青なボブヘアーで彼女はアルバイトの面接にやってきた。1本ずつ等間隔かつ放射状に伸びたまつげと、濃いアイライン。それに、真っ直ぐ切り揃った前髪。少し三白眼気味の瞳がとてもミステリアスだ。
 
「めっちゃ派手なギャル来たーーー!」
と、私はテンションが上がっていた。
普段、出会うことのないタイプだったから、はじめは興味本意だったけど、まさかこんなに仲良くなれるとは。
 
彼女は、強烈な第一印象とは裏腹に、とても謙虚で聞き上手。おもしろいことがあると、「ふふっ」と楽しそうに笑う。あまり自分のことを話さない彼女に笑ってもらえると、何だかとても嬉しくて、ついつい私は話しかけてしまう。
 
しかし、人事異動で私がチームを離れてしまい、働くフロアも異なってしまったことから、それからあんまり会わなくなってしまった。しかし、彼女が仕事を辞めるという噂を小耳にはさみ、ちょうどまん防も解除されたことから、飲みに誘ってみた。
 
「全部美味しそうやけど、何頼む?」
「梅くらげとほっけ頼んでも良いですか?」
「いいけど、めっちゃ意外(笑)」
なんて言いながら、少し酔ってきた頃合いをみて、気になっていたことを聞いてみた。
 
「そんなにお金稼いで、何に使うの?」
彼女の退職理由は、もっと時給の良いところで働きたいということだった。
 
「ええっと、実は……。私ジャニオタなんですよ。」
「……えええ!??」
「会社の人には初めて言うんですけど、もう全部、そこに注ぎ込んでますね。課金沼です(笑)」
「ええ…… ちょっと、顔見せてよ(笑)」
「ジャニーズでもグループに入っている訳ではないんですけど、私甘い顔が好きで」
と写真を見せてもらうと、確かに白タイツが似合いそうな感じ。
 
って、ちょっと待って。
今まで会社でそんなに楽しそうな顔は見たことないよ!
そんな可愛い笑顔も見たことない!
彼女をそんなことにさせてしまう、推しのことがもう気になってしょうがない。
 
「私、目が細くて顔がうすいから、ぱっちり二重で濃い顔は反動でかっこいいって思うんやけど、かっこいいなあって思うだけやねん。推しって、見た目だけじゃなくて、全部含めて好きって感じするけど、そんな感じ?」
「そうなんですよ、全部好きです!」
「それって、どうやって好きになるの?」
「はじめはやっぱり見た目からですね。でも、ダンス踊っている姿とか、喋ってる姿とかを見ていたら、どんどん好きになっていくんですよ」
 
はじめは見た目から入るということに、妙に納得しながらも、そこからこんなに心を持っていくなんて、さすがはジャニーズ。どうやら、意中の彼はファンサービスを結構してくれるタイプらしい。
 
「一度、彼の舞台で最前列の一番真ん中の席が取れたんですよ。めっちゃ距離が近くて、いつもファンサービスをする人やから、手でハートをつくってみたんですよ。じゃあ、彼もやり返してくれて、もう手が震えて……。そこから同じ舞台に10回通ってます(笑)」
 
私は、彼女の想定外の変化に、なんだかサナギが蝶へ羽化したような、尊さを感じはじめていた。圧倒的な熱量によって、どんどん彼女が美しい蝶になっていく。そんな気がした。
 
「でも、最近悩んでて。そうやって一度ハートをつくってもらったら、次も期待しちゃうんですよね。この間、私は最前列の一番端だったんですけど、真ん中の席の子にファンサービスをしてたんですよ。いやいやいや、そこの席より私の方がお金払ってるからって思っちゃいましたね。」
 
彼女が怒りを口にするのを、初めて聞いたので驚いた。
 
「でも、それじゃダメなんですよね。本当は見れるだけで嬉しいのに、求めすぎてしまう。だから、最近はちょっと原点回帰しようと思って自重してるんです」
 
煩悩を封じ込めようとするお坊さんみたいなことを言うから、思わず笑ってしまった。しかし、なぜなのか、先ほどから彼女はかなり周囲を確認しながら話している。
 
「たぶん、会社の人はおらんから大丈夫やで!」
「違うんですよ、同じジャニオタを警戒しています」
「え? どうゆうこと?」
 
どうやらジャニオタにも色々と型があるらしく、彼女はリア恋型を警戒しているようだ。あわよくば彼女の座を虎視淡々と狙っているガチ恋タイプらしく、ファン同士のケンカもこのタイプが起こすことが多いらしい。だから、顔を知られたくないそうだ。
 
ちなみに彼女はプロデューサー型+信者型らしく、彼が恋愛をしててもいいけど、そこはプロなんだから、隠し通して欲しいらしく、ずっと神のように崇めたいらしい。
 
しかし、彼女はどうして私に話してくれたのだろうか? すると、「社員さんからご飯に誘ってくれたのが、小西さんだけだったので」と言ってくれた。
 
私もアルバイトさんとご飯に行くことはほとんどない。いきなり誘ってびっくりしないかな? と内心どきどきしながら誘ったのだけど、どうして私は彼女を誘ったのだろう?
 
実はジャニオタには、もうひとつの型が存在する。それはオカン型だ。入社時から彼女を見守ってきた私は、どうやらいつの間にか彼女を推しメンに指名していたようだ。
 
彼女の卒業をお祝いするため、私もこの場にありがたく課金させていただいた。
一緒に食べた美味しいご飯が、ジャニーズへの活力になるのは、ちょっといやだなあと思ったけれど、この気持ちこそオタ活か……! と、またまた妙に納得しながら、酔っ払いふたりで帰路についた。
 
 
 
 
***
 
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