中学生のアタシは三蔵法師に弟子入りした!
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記事:MK(ライティング・ゼミ集中コース)
「これ面白いから読んでみて!」
中学生になったアタシはクールな先輩に憧れて全く喋らなくなっていた。クールと根暗を取り違え、友達が出来なかった。唯一の根暗友達Iちゃんが貸してくれた漫画。この時はその漫画がアタシの人生の哲学書になるとは思ってもいなかった……。
「綺麗な絵だな~」
初めて表紙を見た時の感想。ポップな漫画を見慣れていたアタシにはすごくオトナな漫画に感じた。
根暗になってしまったアタシだったが、勉強は出来た。テニス部でもレギュラーだった。同級生や先生や両親からも優等生に見えていた。自分でも優等生だと勘違いしていた。なんでも出来ると……。その流れで生徒会に誘われた。しかし迷っていた。そんな時「迷っているなら今やらないと後悔するぞ!」という先生の一声で生徒会へ入った。何も知らない中学生にその言葉は罪だ。それが私の人生で最初の挫折になるとは……。それからアタシは生徒会というぬるま湯に毎日浸かり続けテニス部の練習を怠った。その結果中学生のアタシでは抱えきれない傷を背負うことになった。ある日の試合のことだった。サーブがただの一球も入らなくなったのだ。サーブは入れて当たり前のこと。文章で書くことで例えると「あいうえお」が書けないというくらいあり得ないことなのだ。アタシの頭は真っ白になった。時が止まった。アタシは泣いた。一人で泣いた。ただ、同情してくれる人も、助けてくれる人もいなかった。見ないようにしていた事実を突きつけられる。自己責任。こんなアタシにさらに追い打ちをかけたのがIちゃんが貸してくれた漫画
「最遊記」だった。
「西遊記」じゃないよ! 「最遊記」
題名の通り西遊記の要素を入れて書かれてある。三蔵法師も出てくるし、悟空も、八戒も悟浄も……。でもね、優しいお坊さんとか豚とかじゃない。みんな人間の姿でオマケにみんなイケメン。特に三蔵法師はイケメンで、ちゃんと法衣を着ていて肩に経文もさげているのだけれど、金髪。お酒も飲むし、煙草も吸う。麻雀もする! そして見た目だけじゃなくキャラもみんな全然違う! 三蔵法師なんて、銃でガンガン妖怪を退治していく。なんの躊躇いもなくガンガン打つ! 他の三人も「西遊記」とは全然違う。ストーリーとしてはそのイケメン三蔵一行が妖怪退治に西へ旅をするというあらすじ……。なんだけど、アタシが惹かれたのは、三蔵様のお言葉……。 銃をガンガン躊躇いなく打ちまくっている、非情に見える三蔵法師が深いことを言うのだ。 そしてそんな三蔵法師にアタシは人生というモノを教えてもらった。
「人を殺して生きる者は同時に自分が殺される覚悟を持たなきゃならん それが因果応報ってものだ」三蔵が悟浄に言った言葉だ。
今のアタシにも響くけれど、この言葉を見た中学生のアタシは衝撃を受けた。誰もはっきりとは言ってくれなかったことを三蔵は簡単にアタシに言ってくれた。苦しくなった。急いで辞書を引き「因果応報」を調べた。「人生ってこれくらいの覚悟がないとこれから先生きていけない」と強く思った。しかし堕落した人間はそんな言葉を頂いてもなかなか簡単に日常を変えることはできない。そして生徒会を辞めるとかテニス部を辞めるとかいうことはもっとできない。本当に辛い毎日が続き、生きていることに何の意味もないと投げやりになっていた。しかし誰にもそんな感情を吐き出すことは出来なかった。そんな時三蔵の言葉が再び刺さる。「神は誰も救わない 自分を救えるのは自分自身だ 死ぬのは自由だ 逃げることはできる お前が死んでも何も変わらない ―だが お前が生きて 変わるものもある」本当にアタシに向けて言ってくれているんじゃないかって思うくらいドンピシャな言葉だった。何回もこの言葉を読んで、何回も泣き崩れた。そして一つの事実を受け入れることがやっとできた。「アタシはそんなに強くないし、そんなにすごい人間じゃないと……。一歩間違えれば堕落した人間にすぐになれるということを……」三蔵がいてくれたから何とか生徒会と部活を乗り切り、生きることができた。中学校を卒業しても沢山辛いことがあった。その度に三蔵に何かを期待して、漫画のページを捲っている。そしてそれは今でも続いている。アタシの中では人生の哲学書となっている。こういう漫画に中学生の時に出逢えたことに感謝している。
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