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サルに笑われて元を取ったオカンの話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田 光(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
サルに笑われたことがある。気のせいじゃない! あれは本当に私のことを笑っていた!
 
二年前の夏のことだった。
当時住んでいた自宅の横には畑があって、毎年さまざまな野菜を植えて楽しんでいた。そしてそのときは、トウモロコシが食べごろに実っていた。
 
実際に育てたことのない人にはピンと来ないかもしれないが、トウモロコシはキュウリやトマトやピーマンみたいに毎日収穫できるものとは違い、育てる人間の期待値が爆上がりする野菜だと言ったら、植えたことのある人は激しく頷いてくれると思う。
なにしろトウモロコシは大人の背丈ほどにもなるのに、つまり畑の専有面積は広いくせに、1本の苗から収穫できる実は1~2本にすぎないからだ。
だから苗を10本植えても、5人家族なら一人当たりひと夏に2~3本食べられるかどうか。こう考えると畑の作物の中でも、メロンやスイカに次いで貴重な部類に入る。
だから家族みんな、実が熟すのを心待ちにしていた。ああそれなのに!
 
その日、畑に設置してある害獣除けの網をくぐって中に入ると、皮はていねいに剥いてあるくせに、実の方は半分くらい無造作に齧られてポイ捨てされたトウモロコシの残骸が2~3本、畝の間に転がっていた。
あんまりきれいに剥いてあるものだから、家族の誰かが「もう待てん!」とばかりにその場で齧ったのかと思ったくらいだ。
これは冗談ではない。
それくらい、収穫したての実の詰まったトウモロコシは瑞々しくて甘いのだ。
かくいう私も畑に突っ立ったまま、生のトウモロコシにかぶりついたことが何度かある。
 
だが今回のはあまりにも食べ方が汚い。
うちの人間がこんな食べ方をするわけがない。
害獣だろうか。しかし網は破られていないし、皮が丁寧に剥いてある。
しかもクマやイノシシならこんな食べ方はありえない。おかしい……
 
自宅に入って「ねぇちょっと、今トウモロコシが……」と子供たちに今見たことを話しながら、ふと視線を感じた私は台所の窓越しに、裏庭へと目をやった。
 
自宅の裏庭のそのまた奥は山になっていて、庭との境には土砂災害対策にコンクリートの防壁が作ってある。
 
その防壁の上にサルの親子がちょこんと座って、じっとこちらを見ていた。
 
「おーまーえーらーかーーーーっ!!!!!!!」
 
怒りが瞬時に沸点に達した私はガラリとサッシを開けて声をあげて威嚇したが、向こうは涼しい顔をしてこっちを眺めている。
「いやいや、そんな大きな声出さんでも聞こえますよ」てなもんだ。
あと、
「ただの脅しって分かってますし?」
という顔もしていた。だって、まったく動じない。
しかし! このままで済むと思うなよ!!!
 
「ちょっと!!! あたし行ってくるわ!!!!」
 
目が点、口ぽかーんの娘たちをしり目に、ガシっとほうきを掴むと私は玄関を飛び出し、そのまま裏庭に走った。
 
サルの親子は「はあ、来たんですか」とでも言いたげな目をして、じっとこちらを見ている。
私は防壁の下のあたりまでほうきを振り回しながら走り寄ると、「シッシッ!!! シッシッ!!!!」と声をあげた。
ん?
「シッ!」は犬猫用ワードか?
サルにはなんと言えば???
案の定サルの親子はゆったりと構えてこちらを見ているばかりだ。
何の焦りも恐れも感じていない。
舐められてるやん! そう悟った私はなんとかサルの親子にほうきが届くところまで近づこうとして、膝より高くなった雑草の中に勢いづけてザザザッと踏み込んだ。
あ~本当はこんなことしたらヤバいんだよな、マムシがいたらどうすんの!
 
するとさすがに子ザルの方がビクッと怯えて山の方へ逃げようとした。
だが母ザルは鷹揚として動かない。
やはり子ザルよりもサル生経験が長いだけのことはある。
「大丈夫。あの人間、ここまで来れないから」とでも言いたげな様子で子ザルを引き寄せると、「ですよね? それともまさか、人間の分際で私たちに身体能力で優っているとでも?」という優越感に浸った目でこっちを見ている。
 
もう怒った!!!
怒髪天を衝くとはこのことだ。
気持ちの上では一気にこの防壁を駆け上がりたかったが、ほぼ垂直なコンクリートの壁面を登る能力はサルの言うとおり私にはない。
しかしどうにかして一矢報いずにはいられず、防壁の切れ目のところから迂回して走って山に登りかけた。
ほうきを振り回しながら。
 
……いや、分かってる。
どうか突っ込まないで欲しい。
こんなことしたって、やつらの方が逃げ足が速いのも、どうせ追いつけやしないのも分かってる。
だけど悔しいじゃないか! このまま黙って引き下がるなんて!
 
私の本気を感じ取ったのか、母ザルはさっと身を翻し、子ザルとともに急な山肌を鮮やかに軽やかに駆け上がっていった。
そして姿が見えなくなるのと同時に「キキキキッ! キキキキッ!!!!」という鳴き声が、あたりに響いたのだった。
 
……今、あたしのこと、笑った……
 
ほうきを片手にトボトボと自宅に入ると、娘たちが腹を抱えて笑っていた。
「おかーさん、ほうき……持って……走って行って……ほうき……全然届いてないし……サザエさん……みたい……ほうき……あ~もうダメ……!!!」
 
失礼な。
サザエさんは「裸足で駆けて」いったのだ。
私はちゃんと冷静に靴も履いていたではないか。
マムシ対策にゴム長を履かなかったのは痛恨のミスだったが。
 
このとき娘たちは台所の窓から一部始終を見ていて、私が「まったくサルに届いていないほうきを空しく振り回し」ながら、「ドンくさいスピードで山を登ろうとしている」のを目の当たりにして、腹がよじれるほど笑っていたのだそうだ。
 
しかしまあ、結果的に娘たちがこれだけ笑い転げたわけだし。
しかもトウモロコシ3本で、今思い出しても笑えるネタになったと思えば、コスパはそう悪くなかったかもしれない。
 
ということでサルよ、今回は勘弁しといたるわ。
これは負け惜しみではないからな。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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