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メディアグランプリ

お気に入りの部屋着のシャツを間違って漂白したらシマエナガになった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:早藤 武(ライティング・ゼミNEO)
 
 
週末の朝は仕事が休みでいつもより早く起きてしまった。せっかくなのでダラダラ過ごさないで眠っている妻を起こさないように掃除をしていた。
拭き掃除が終わって、シンクと排水溝をハイターの泡で掃除をして磨いていた時に事件は起きた。
 
「これは汚れが服に飛んだんじゃない!?」
 
慌てて僕は洗面台へ駆けて行き、部屋着のシャツを脱いで汚れを確かめる。
 
掃除で付いた単なる汚れであれば、服を洗濯してしまえば全く問題はなかった。
しかし、濃い緑色の部屋着の腹の左下の辺りに500円玉くらいの大きな黄緑色のシミができていた。
 
シミ汚れを取るために洗濯用洗剤を少し染み込ませて揉んで手で洗ってみた。
数分経っても、黄緑色の500円玉くらいのシミは全く取れなかった。
むしろシミがどんどん色が変わって白くなっている気がする。
気持ちよく掃除が終わったのに、がっくりと肩を落としてシャツをどうしようかと考えるけれども何も良い案が思い浮かばなかった。
 
「せっかくこの前の週末に買って、昨日使い始めたばかりの部屋着で着心地も良くて長くお気に入りで使おうと思っていたのに、たった1日でこんなに目立つシミができちゃった!」
 
汚れて欲しくなければ、エプロンを着たり、作業用の汚れても良い服に着替えて掃除をしていれば良かったのだ。
 
反省をしてみても、使い始めて間もない洋服の脱色はどんどん進んでいき、ついには白色の500円玉くらいのシミで落ち着いてしまったのだ。
 
気がつけば、妻が寝室から起きてきて僕が落ち込んでいる姿でいるのを発見して声をかけてきた。
 
「あなたどうしたの? お休みなのに洗面台の前でうずくまったりして何かあったの?」
 
声をかけられて振り返った僕は、恐らくいたずらが見つかった子供のような顔をしていたかも知れない。
 
「寝ているところを起こしちゃってごめんね。さっきまで排水溝の掃除をしていたのだけれど、失敗してしまってね」
 
手に持っていた部屋着を広げて、妻に見せてみるとあらまあと何が起こったのかを察知してくれた。
 
「確かそのシャツって、昨日の夜から使い始めて結構気に入ってたわよね? どうするの、そのまま使うの?」
 
妻の問いかけにどうしようかなと僕は迷った。
部屋着なので家族以外にみられることはないけれど、目立つシミがついているようで長くは着ていたいとはどうしても思えなかった。
 
しかし、このまま捨ててしまうのは昨今のSDGsの考えからもったいなく思えて、なんとか修復して使えたら良いなとは思っていた。
僕が気に入っていたシャツを何とか有効に使えないかを妻に話すとしょうがないわねと言って部屋着を僕から受け取り、「少しの間だけその部屋着を預かるわね? その白い丸い形を見て思いついた事があるの。たぶんだけれど、なんとかなるかも知れないわ」
 
部屋着を洗面器で予洗いして漂白剤が付いていないかを確かめて、本格的に洗濯機で洗ってから干して部屋着のシャツが乾くのを待った。
その間に他の用事を済ませて来ようと僕は妻から食料品の買い出しを頼まれて近くのスーパーへ足を運んでミッションを済ませてきた。
 
乾いたシャツのシワをアイロン台の上に乗せてからアイロンをかけて綺麗にして、裁縫道具を出してきてチクチクと何かを縫い合わせていた。
妻がこれで大丈夫そうだと振り返ると500円玉くらいの白いシミの上にシマエナガのワッペンで補修がされていた。
「最初このシャツの白くて丸い形を見た時にシマエナガに見えたのよ。これで見た目が少し可愛いシャツに変身できたでしょう? 私が見てても可愛いデザインのシャツだって見えるから白いシミのままにしておくよりも見た目の印象がガラッと変わるから良いと思うわよ!」
 
ニコニコと自信の笑みを浮かべて緑色のシャツを広げて僕に見せてくれて、下の方には白い豆大福と呼ばれるシマエナガが首を少し傾げて可愛く存在感を表してくれている。
同じ白色の形をしているのに、漂白して色落ちしてしまったシミと比べると印象がまるで違って見えた。
妻の視点の切り替えに落ち込んでいた気持ちが救われた気持ちだった。
 
せっかくお気に入りになってウキウキしていたシャツが一転して、漂白剤を自分のミスで脱色して台無しにしてしまった気分が今では元に戻ってくれていることに僕は気がついた。
 
「大人の男性が着るにはずいぶんと可愛くなってしまったけれども、僕も見ていて気分が和むから気に入ってしまったよ。思い切って手を加えてくれてありがとう! 大切にするよ」
 
喜んでくれたみたいで良かったと妻は一件落着した気持ちで笑顔を返してくれた。
もし独身時代に同じようなことが起きた時には、きっと1日かけて自分が失敗したことを思い出して過ごしていたと思う。
こういう失敗をした時に、発想を切り替えて気分良く過ごせるようにフォローを入れてくれる家族の存在に僕は本当にありがたい気持ちで週末の午後を過ごした。
 
そして家の掃除をする時には、きちんと着替えて作業にふさわしい格好をしてシャツのシマエナガが増えないようにしようと密かに心に決めた。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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