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メディアグランプリ

沖縄のおばあに負けないおじいたち

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:荒戸七絵 (ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「え! ? 牛が逃げた?」
定食屋で食事をしていた彼はすごい速さで軽トラに駆け込んだ。
お店の人に「後で来る」と言い残し、お店の人たちも「そりゃ大変んさ」と笑顔で返事をしている。
よく見る光景なのだろう。
独特の空気があるここは沖縄県西表島、今走っていった彼は80歳まじかのおじいだ。彼はこの島で牛を飼っている。
この牛が、未来の石垣牛となる。
 
少し西表島の紹介をさせてもらおう。
西表島とは、石垣島から高速船で一時間ほどにある八重山諸島の島の一つで、沖縄本島の次に面積の大きな島である。
また、2021年に世界自然遺産に登録された。
特に有名なのは島に生息するイリオモテヤマネコであろう。
そして、この島に暮らす人々も島の魅力の一つである。
 
ご飯も食べ終わった私は、定食屋さんを後にした。
夕方そのおじいと道端で出会った。
「牛大丈夫だった?」
「おー大変だったさ、10頭近く道端をうろうろしていてよ、ちょうど隣の牛舎の人と囲い込んでさ、みんな塀の中よ。ぎゃはははは」
こーで、こーで。こーやってよ。と体全身で表現している。
その姿はとても自慢げで、楽しそうだった。
聞いているこっちは、大変だったんじゃないの? と思いつつも、「ぷっ」と笑みがこぼれてしまう。
ここの島にいるおじい達は人を笑顔にする天才だ。
 
今度は別のおじいが「大変だ、大変だ」といいながら、走っている。
こんなのどかな島で大変なことなんてなんだろう?
「おじいがハブに噛まれた」
ハブは暑い地方に生息する毒蛇である。
これは大変だ。島には診療所は2棟あるが医師がいるかは別問題だ。
その日は運が悪く島の反対側の集落にある診療所にしか医師がいなかった。
「もう死ぬんだ。」とわめきまくり、家の外まで聞こえていた。
このおじいは、民宿をしている、そこに泊まっていた東京から来た若い女の子に「わしは、死ぬから結婚してくれ」といっていた。
嘘のような本当の話である。
おじいは、そのまま村人と一緒に車で反対側の診療所まで向かっていった。
これだけ、大騒ぎする元気がある人が元気で帰ってこないわけがなく、案の定、なにもなく帰ってきたそうだ。
次の日、その民宿を手伝っていながら、私と同僚でもある女性から聞いた話だが、
「わしは、ハブになんかに噛まれるような間抜けな男ではないさ、何言ってるさ」と言っていたそうだ。
「あんなに死ぬ死ぬって大騒ぎしてたのにね」と職場のみんなで大笑い。
 
こんなに同じ時間を共有することが幸せだと感じたことはなかった。
そして、今大笑いしていた人も、運転して診療所まで連れて行ってくれた人も、定食屋さんも、元は西表の人間ではない。
それをつなぎ合わせてくれるのがおじい達だった。
島には昔ながらの集落の在り方が存在する。
男性には○○おじい組のようにいくつものグループがある。
魚の釣り方、西表には琉球イノシシがいるのだが、このイノシシの取り方、処理の仕方、島で生活する上でのノウハウをそこで教わるそうだ。
その中には本州からきた新参者も含まれている。
これは、この島に来てくれてありがとう。と島に昔から住むおじい達からの感謝の気持ちがあるそうだ。
喜怒哀楽を惜しみなくだし。少し不器用で、少し頑固で、少しシャイなおじい達。
広大な自然の中で生きてきた彼らは、あるがままをそのまま受け止める島そのものである。
 
彼らのおかげで今日も西表は賑やかであろう。
 
 
 
 
***

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2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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