メディアグランプリ

「ああ、『超絶かわいい子』に生まれてこなくて良かった!」という負け惜しみではない本音


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記事:土田 ひとみ(ライティング・ゼミ)

 

 

私は、生まれながらにして『超絶かわいい子』ではない。

いじけているわけでも、ひがんでいるわけでもないが、本当にそう思う。でも、今ではそれで良かったと思っている。

学生時代は、猛烈に『超絶かわいい子』になりたいと思っていたし、そう生まれてこなかった自分を憎んだり、悲しんだりしたものだ。私は、生まれながらにして『超絶かわいい子』に超、憧れていた。

 

『超絶かわいい子』というのは、小さい頃から「○○さんのところのお嬢さんよね。可愛いからすぐに分かるわ~」と近所のおばさんに言われたり、中学生になれば、他の学年の子からも知られていて告白されたり、高校生になれば、「かわいい子しかなれない」というサッカー部のマネージャーにスカウトされたりするものだ。

 

そこにいるだけで華があるし、その子と友達というだけで自慢だし、その子と隣の席になれたというだけで男子の登校意欲を引き出せる素晴らしい才能だ。

それを生まれながらにして持っているなんて、うらやましいにもほどがある。

「あーあ、私も『超絶かわいい子』だったらなあ~」

何度口にしたか分からない。

 

しかし、『超絶かわいい子』にも欠点がある。

その子に欠点があるというよりかは、周りが放っておいてくれないのだ。どこに行っても注目される彼女達は、窮屈な思いもしたと思う。

売店でイチゴオレを買えば、「何!? ピンク色のジュースなんて買っちゃって、ぶりっ子よね!」と言われる。はたまたオレンジジュースを買えば、「ビタミンCの補給にもぬかりないのね。何!? 意識高い系?」なんて言われたりするのだ。

私と言えば、「ビューティープルーン」という謎の不人気ジュースを買ったとしても誰からも咎められたりすることはなかった。

昼休みに買うジュースひとつとってもこれでは、学生時代は大変だっただろうと思う。

 

男女交際の場面では、もっと悲惨だったと思う。

イケメンで目立つ男子と付き合えば「ムカつく!」と妬まれ、地味な男子と付き合えば「奴隷にでもしているんじゃない?」と言われたりするのだ。女子の妬みは恐ろしい。

 

そんな窮屈な思いをしながらも、存在自体で周りに影響を与えられる彼女達がうらやましかった。ものすごく。

私は、「周りの人を楽しませたい」という気持ちが常にあったからだ。

私と一緒にいたら、楽しい気分や幸せな気持ちになってもらいたかった。だから、面白い話をしようと試みたし、いつも笑顔でいるように努めたし、時には自分の身を削って笑いを取っていた。

しかし、『超絶かわいい子』はそんな努力をしなくても、周りを幸せな気持ちにできる。

それを見ると、自分の無力さを感じてとても悲しい気持ちになった。

「私はこんなに努力をしているのに、彼女達には勝てない!」

その悔しさを埋めるために、私はどんどん自分の身を削って周りに接するようになっていった。周りの人を楽しませるために笑顔を作ったり、周りの人が喜ぶから自分の恋愛失敗談を面白おかしく語ってみたりした。

その場は盛り上がるけれど、一人になったときにいつも虚しさが残るようになってしまっていた。

「誰も本当の私を分かってくれない」

自分で自分を演じていたくせに、自分勝手に殻に閉じこもり、どんどん落ち込むようになっていった。

そんないじけた私は、学生時代を終えて20代後半になっても続いた。相変わらず、「誰かのための笑顔」が顔面に張り付いていた。

 

しかし、ある日私は気がついた。

「誰かのための作った笑顔じゃなくて、自分自身が最高に楽しんでいるときの笑顔ほど周りを楽しませるものはない」と。

そして、いかに今まで周りの目を気にしすぎて生きて来たかを思い知った。

「私がこう言ったら相手はどう思うかな?」「今、あの人が笑っていないのは私のせいかな?」「私、あの人に嫌われているのかな?」と、常に考えていたのだ。

 

私はいつの間にか、『超絶かわいい子』でもないくせに、それくらい周りに注目されているのではないかと自意識過剰になっていた。

「そうか! 私はイチゴオレを飲んでも、オレンジジュースを飲んでも、誰からも文句を言われないんだった!」

そう思ったら、なんだか急に軽い気持ちになった。ちょっぴり恥ずかしくもあった。

そして、コンプレックスだらけの自分がちょっとずつ愛しく感じるようになった。

 

見た目では『超絶かわいい子』みたいに、周りを楽しませることはできない。それならば、何か違うもので周りを楽しませればいいではないか。

しかも、「自分が楽しんでいる」ことが大前提だ。

自分の身を削って、自分が嫌な思いをして周りを楽しませようとしても、続かない。

だから、自分も楽しくて、周りも楽しくなるようなものを思いっきり表現すればいいのだ!

 

今、私は文章を書くことがとても楽しい。

その文章を読んで、楽しい気持ちや幸せな気持ちになる人のことを想像することが、とても楽しい。

私も楽しくて、周りも楽しいなんて最高だ!

もしも、私が生まれながらにして『超絶かわいい子』だったら、こんなことにも気づかなかったかもしれない。

だから、負け惜しみではなく本音でこう思う。

「ああ、『超絶かわいい子』に生まれてこなくて良かった!」

 

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-08-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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