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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:くらもと けいこ(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「今日……どうする? 行く?」
夫にお伺いを立ててみる休日の夕方。
 
二人で近所へ散歩に行くかどうか、決めるのだ。
 
自身の健康の重要性に気が付き始めたお年頃の私たち。
夫の大きくなりつつある腹囲に
「もうすぐ生まれそうね」
と撫でてあげるのが日々のご挨拶になってきた。
 
健康診断の結果に「要検査」を発見し、うんざりしながら病院の予約を入れる。その予約日までの禁酒を慌てて始めて見たりも毎年のことになっている。
去年より良くなったの少し悪くなったの、マイナスベースからの一喜一憂に今年こそは何とかしなきゃと誓いを立てるのも毎年の事。
 
スポーツジムに行くほど力を入れたくないが、屋外を歩くことで運動をしたことにしたいのだ。面倒なことはやりたくない性分だからお腹が気になるようになるわけだが……
手っ取り早い散歩はしたい。が、ひとりで行くよりどうせなら一緒に行きますか、という事になってきた。
 
このところの日中の暑さと日差しはひどいものだ。毎日のように過去最高記録を塗り替えているのではないだろうか。
さすがに真昼間に直射日光を浴びての外歩きは、熱中症になりにわざわざ出かけるようなものだし、紫外線は肌の老化を早める原因らしいし控えたい。
という事で夕涼みがてらの散歩に落ち着いてきたのだ。
 
家にいる時間が長くなった生活に慣れてきたことで、固まってきた習慣だ。
そして何より、一緒の時間を意識的に作ろうとしているのだ。
 
子どもが社会人になって、家から巣立った後、会話が少なくなったのも理由の一つだ。
本当に仲が良いなら、あえて時間を作ろうとしなくても一緒にいるのでは、とも思う。
他のお宅はどうしているのだろう?
 
子どもが社会人になるまでずっと家にいたことで、私たち夫婦の会話は子どもの事が中心だった。小学校中学校時代はもちろん、高校、大学に進んでからも受験や入院や就職活動と、イベントがあるごとに気を揉む事で夫婦の会話が成り立っていたと思う。
 
そんな会話の中心になっていた子どもはあっさり一人暮らしを始めてしまった。あれよあれよという間にアパートが決まってサクッと引っ越してしまった。
 
同時に私たち夫婦の会話もめっきり少なくなってしまった。
 
朝、出勤時にいつ帰るかの予定や、帰宅時にこれから帰るLINEのほぼ業務連絡。
それらを除けば、家で食事の時もTVを間に挟んでそれをネタに話を振るくらい。
その後は各々ネットを見ているか映画を見ているかの生活になっていた。
 
夫婦の45%は平日1日の会話時間は30分未満というアンケート結果を見かけたが、(しゅふJOB総研より)それより我が家の会話時間は短い日が多かったかもしれない。
 
同居人のような立ち位置、笑いもおしゃべりもない毎日。
別れたいわけでもないのだから、良い方向に向ける手はないのかな。
 
何となく話を振りやすいのが「一緒に散歩」だった。
夫は色々言いながらも付き合ってくれる。
健康にも良さそうだし、一石二鳥。ゴールでビール一杯……になるときもあるから一石三鳥か。それだとあまり肝臓にはよろしくないが。
 
身体の気になるところ、膝とか腰痛とかの話から、これから先のお金の事。お互いの親の気になっていること。子どもはちゃんとご飯をたべているのかねぇ、と相変わらず気を揉んでいる話。
TVがない分、お互いにしょうもない話もおやじギャグもそれを聞く以外の選択はないので、何でも言いたい放題、聞かされ放題。
 
そしてご近所散歩と言っても、意外に知らない場所があることに驚く事がある。
地元は梨もぎができるような畑や生産緑地が結構残っているような土地柄だが、新しい住宅が気が付くと増えている。狭い通り沿いの家がいつの間にか建て替え工事で解体されていたり、竣工されていたり、オープンしたてのパン屋が出来ていたり、古くからあるお店が見当たらなくなっていたりする。
それに、何度も通っていたはずなのに、竹林があることや馬頭観音の石碑があるのに今さら気づいたり、立派なお地蔵様を発見して消えかかる文字を読もうとしてみたり、入ったことのなかった小道に進んでみたりと探検気分になれる。地元でトリップだ。
 
一緒に歩くと、その人の一面を垣間見ることができる。
車道側をいつも歩いてくれたり、神社にお参りするのに丁寧にお辞儀をするということや、疲れないか気遣ってくれたりすること。
長い付き合いなのに知らないことがまだあるということ、忘れていたことを思い出すということ、というおまけもできる。
 
ずっと住んでいる町、長い付き合いの相手に飽きる時期もあるかもしれない。
それでもあらためて一緒に歩いてみるとまた違った面を見ることができる。
それも健康であればこそ。また来週も散歩に行こう。
夫婦2人の生活はまだ始まったばかりだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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