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メディアグランプリ

アラサー女子、運動音痴を克服する


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋 さやか(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
その夏はとても暑かった。近い時期に最愛の祖母と担任の英語の恩師を亡くし悲しみに暮れていた。寂しい気持ちが心と体を蝕んでいた。少しでも忘れるために気分転換をしないと取り返しがつかないことになりそうだと思った。30代も半ばに突入し、体の線が崩れ始めたのもあって若い頃にお世話になったスポーツクラブに再入会した。体を一生懸命動かしている間は忘れられるだろうと思ったのだ。
 
ちょうど北京オリンピックが閉幕したばかりで日本代表選手のメダルラッシュに沸き、何かスポーツをしてみたいと思っていたところだった。
 
ところが、私は絵に描いたような運動音痴だった。短距離走ではスタートのピストルの音にびっくりしてスタートが大幅に遅れスピードに乗れずに終わってしまう。長距離走ではすぐに疲れてしまい、飛べば低く、ボールを投げると遠くに飛ばず目の前で落ちてしまう。まともなのは体が柔らかいくらい。地味な項目だが何もできないよりはマシだと思っていた。
 
せめて泳げるようにと小学校に入学したばかりの頃に通っていたスイミングスクールも全く上達した記憶がない。水泳の最後の記憶は4年生の頃の夏のキャンプで息継ぎなしのクロールをひたすら泳がされ苦しかったこと。なぜクロールだけだったかというと1年生から通っていたのに進級できなかったからである。これでいかに運動音痴かどうかが伝わるだろう。
 
話はスポーツクラブの話に戻る。手っ取り早く体を引き締めるには水泳がいいのは分かっているが、何せ顔に水をつけるのが怖かった。そこでアクアビクスや水中ウォーキングのクラスを色々受けた。水に入って無心に体を動かすと悲しい気持ちが浄化されてだんだん心が軽くなってきた。多い時は週4回ほど通っていたのであっという間にデニムが緩くなった。
 
そんな矢先に「浮き浮きウォーキング」という緩い名前のクラスがあったので受講用の整理券を取った。その後「ダイビングプールまでお越しください」という案内があり周りの人について行ったら目の前は水深3メートルのプールだった。
詳しく内容を聞くと、両腕に浮き具をつけてダイビングプールを往復するエクササイズを行うらしい。4年間で全く進級しなかった私の泳力では溺れないかと怖くなった。帰ろうとしたらイケメンコーチに呼び止められて断れなくなってしまった。いざとなったら助けてくれると思いつつ、勇気を出して参加することにした。
 
予想通り、恐怖のあまり体が硬直して動かなかった。レッスン中はずっとコーチに支えてもらってプールを往復した。
後半になって平泳ぎキックのように足を開きながら進むという高度な動きに入った途端、イケメンコーチは意外な言葉を伝えてくれた。
「関節がすごく柔らかいですね。水泳に向いていますよ。来年のアマチュアスイミング大会を目指したらどうですか」
 
一瞬耳を疑った。
 
そんな風に褒められた途端、体のこわばりが取れたのか進みがよくなって無事にクラスを終えることができた。周りの生徒さんは優しいご年配の方ばかりで終わった頃によく頑張ったねと褒めてくれて和やかな気持ちでプールを後にした。
その後足がつかないプールでエクササイズをするのだったら泳いだ方がいいと思い、体験レッスンのチケットをもらって帰宅した。
 
レッスン初日は水慣れからだった。水に潜り壁を蹴って蹴伸びやバタ足をすると子供の頃の水の中の感触が蘇った。
おまけに「進みがいいですね」と言われてやる気になった。正式に入会した後はひたすら基礎練習が続いた。背泳ぎは意外と筋がいいらしく背面でキックをすると「高橋さん、上手い!」と言われて熱心に自主練もするようになった。
 
スポーツクラブだけでは物足りず、元日本代表の有名選手が主催する練習会にも思い切って参加してみることにした。
 
有名選手の練習会ともなると周りはアマチュアレースでメダルを取ったという強者ばかり。バタ足も満足にできない私には場違いだった。それでも上手くなりたい一心で「バタ足ができるようになりたい」と伝えて基礎練習を教えてもらった。
 
練習後に「水の感覚もセンスもいい。バタ足さえマスターすれば周りの人よりも早く上達しますよ」とアドバイスされバタ足の力を抜く練習だけを繰り返した。
 
著名な選手の褒め言葉というのは特効薬のようなものだ。バタ足をマスターした途端にスイミングスクールも順調に進み、クロールの息継ぎができた時には新たな世界が広がったようでとても嬉しかった。
 
平泳ぎは関節の柔らかさが生かせるようで足首を立てて水を蹴る動きはすぐに出来た。コーチにもびっくりされた。キックが続くようになったのでいよいよ手をつけるコンビネーションに挑戦した。早い段階でキックの後に手を描く動きが繋がって「上達が早いですね」と言われた。
 
半年後には中級に進級していた。憧れのバタフライが泳げるようになって、「趣味は水泳です」と言えるようになった。
 
当時行きつけのバーのマスターに「スポーツしているさやかさん、すごくいいよ。一つできるスポーツがあれば運動音痴じゃないよ」と言われた。大きな苦手を克服した実感を得た。
 
あれから14年もの時が経つ。コロナでしばらくお休みしてしまったが区民プールで再び泳ぐようになった。気分転換にいつでもスポーツ出来る自分になれて本当によかった。
 
怖いと思っていたことに思い切ってチャレンジし、克服できた経験は仕事などにも生かすことができる。
 
泳げることになったことに対してコーチにお礼を伝えた時に「私は何もしていないですよ」と爽やかな笑顔で返してくれた。この時の澄んだ表情は今でも心の中にずっと残っている。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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