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転職を考えていても、なかなか1歩が踏みだせない人へ


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記事: 辰巳葉子さま(ライティング・ゼミ)

ふっとカラダに触れたときに、なんだかいつもと違う感じがした。

「あれ……、なにかあったー?」ともう聞いていた。

彼女は週に1度の整体の授業に通ってくる生徒のひとりだ。
月から金まで忙しく会社員をして、土日を利用して整体の授業に通ってくる私と同じ世代の女性だ。

ぎゅっーと口をかたく一文字に閉じているけど、目はものすごく何か語りかけてくる。
カラダは肩から首にかけて緊張が強くなっていて、ちょうど心臓があるあたりの背中周辺がカチカチに固まっているので、人間関係でストレスをためているのかな?と思った。
心がつらいときにはカラダが無理をして頑張ってしまう。

授業が終わってから、時間をとって聞いてみると、会社での人間関係のゴタゴタで自分を責めている状態だった。
彼女は会社では、新人の女性スタッフの面倒をみながら仕事を進めるリーダー的ポジションにいる。その新人女性スタッフが、会社を辞めたいと彼女の上司に相談して、その原因は彼女にあると言われているらしい。
新人女性スタッフとは年齢差もあるので、彼女なりに気をつかってはいたものの、自分の知らないうちに会社を辞めたいとまで思いこんでいたことと、それが自分のせいだといわれて、かなりのダメージを受けていた。

彼女のことを知る限りひとを攻撃するような人間ではないし、物静かでおだやかな性分なので
そんなトラブルは誤解から生じているとしか思えないが、はやく解決してほしいと願った。

整体の専門学校に通っているのは、転職や独立開業を目標としているので、そんな嫌な思いをして会社に通っているのなら、そろそろ転職も考えてみようかな……、というのが彼女の悩みだった。でもそれと同じくらい、
「転職して整体という仕事で成功できるのか?」
「自分にそんな実力があるのか?」という大きな不安も抱えていた。

彼女はわたしに背中を押してほしくて相談しているのがわかったけれど、
「チャレンジしないで後悔するより、チャレンジして後悔したほうがいい」とは、簡単には言えなかった。
彼女が今までコツコツと積み上げてきた会社のキャリアを一旦無しにして、会社員のレールから1度外れてしまうと、元に戻ることはとても難しいことも知っている。

 

いろいろ話を聞いているうちに10年ちかく前の自分の悩みとシンクロしてくる。
あのとき私は、会社を辞めようか? 独立開業できるのか? ちゃんと生活していけるか?
お客さんは来てくれるか? お店を開くのか?
転職することは大きなチャレンジだし、独立してやっていけるのか心配な気持ちは私も持っていた。そんな自信のない時期に「大丈夫よ」の言葉をかけてくれたひとがいた。
「もう充分勉強したんだから、あとは実践していかないとね」といって、
自信はね、まず10人施術してみなさい。
それができたら、今度はあと10人。
20人できたら、あと10人。
30人できたら、あと10人。
40人できたら、あと10人。
そうしたら50人になるでしょ。そのくらい場数ふんだら自信ついてるわよって。

わたしはこの言葉であれこれ頭で考えて不安になるよりも、できることからやってみようと思ったんだった。
お仕事も突然、パタッと辞めてしまうのではなくて、空いた時間に場数を踏んで、自分がやっていけるかなと自信がついたときに、また考えればいいのではないかなと思えるようになった。

実際は10人施術してみると、すこしずつ自信がつき始めて、
次の10人では自分らしさをだしてみること、
次の10人では新しいテクニックを取り入れること、
次の10人では……、とどんどんと新しいアイデアを取りこんで、施術していることが楽しくて仕方がなかった。50人の施術を終える頃には、始めたときとは全く違う自分のスタイルができつつあった。頭で考えなくても、カラダが自然に動くようになってきている。

頭で考えていることとカラダが自然に動くことがかみ合うようになってくると、自然と道が開けてきた。自分で蒔いた小さな種がちょこちょこと芽吹きだした感じで、自分らしく歩いている感じがしてくる。

以前に自分がやっていた仕事の延長線上にあることは、自分のやりたいことではなくてそれは少し苦しかった。
気がつくとなりたい自分にはなっていなくて、
このまま時を過ごしてしまうと、なりたい自分にはなれないってことだけ、わかってしまった。
その今まで来た道を1回ぷっつんと切ってみたくなった。
知っている人が誰もいないところに行きたくなって、半年の間ただただ好きなことしかしなかった時期を過ごしたんだった。飼いたかった犬たちに囲まれて、日本語の通じない場所で、太陽にあたり、散歩したり、じーっとしていた時期があった。ぺったんこだった紙風船に空気が入ったような気がした時期だった。

こんな時期を過ごしたあとわたしは、今やりたいことは、今やったほうがいいと行動する。
先延ばしにすることは、年をとることだから、
年をとるってことは、今よりも体力も気力も変化するってことだから、
思いつくことは実現できることだと思うから、今やったほうがいいと思う。
ある程度の年齢であれば、リスクを考えると転職は不利だと考えるかもしれない。
若いときの順応力もないし、体力もなくなってきている。
でもその分、応用力がついていたり、観察力もついていたりする。
なにより、なりたい自分に近づいている気がする。
わたしにとっては、そこが1番大切な部分だ。

1週間ぶりにあった彼女に「悩みは解決した?」ときくと、
「頭痛くなるくらい考えたら疲れちゃって、今休憩中です 笑。」
そう、答えは自分の中から湧き出てくるから、焦らなくても大丈夫よと伝えたい。
そのときがきたら、なりたい自分に近づいてほしいと思う。

会社を辞めようか、転職しようか悩んでいるひとには、「大丈夫だよ」と伝えたい。
今やりたいと思ったことは、今やったほうがいい。
きっと充実度が今とちがってくるということを、私が経験してきたから。

 

 

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2016-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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