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高所恐怖症の僕がスカイダイビングできるようになるとしたら


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記事:Yushi Akimotoさま(ライティング・ゼミ)

最近、Facebookで見かけて思わず釘付けになってしまった動画がある。もしかしたらすでに見た人もいるかもしれない。

3人のダイバーが並行して空を落下していく様子がまず映し出される。集団でトリッキーな技でも披露するのだろうかと思いきや、1人目、2人目とパラシュートを開き画面外に消えていくにも関わらず、3人目のダイバーはそのまま空を落ちていく。おかしい。しかし、どうも事故というわけではないようだ。狼狽える様子もなく、地表を見据えたまま、確信を持って一直線に飛び降りていくように見える。より低空で開く新しい技術を活用したパラシュートのテストなのだろうか。それにしても、落下距離が長すぎやしないか。あれこれ考えているうちに、最後のダイバーは、くるりと、背中を地面に向けたのだった。これは、もしかして……いや、そんなまさか……。そう、彼は、パラシュートなしでスカイダイビングに挑んでいたのだ。ダイバーを追ったカメラの端に地面が映し出されると間もなく、彼は見たこともないほど巨大なネットの真ん中に勢いよく落下した。時速192kmで飛び込んできた人間を受け止めたネットが、大きくたわむ。

地上で落下点を囲むように無謀なチャレンジを見守っていた人たちが彼に駆け寄り、偉大な大冒険の成功を祝福する様子が最後に映し出され、その動画はハッピーエンドに終わった。それがかえって、僕だけが一人取り残されたような気分を増長したのだった。なぜなら、僕は、高所恐怖症なのだ。動画を観終わってなお、ディスプレイの前で心拍数が上がりっぱなしだった僕の頭の中には、あれこれといらぬ心配ばかりが駆け巡っていた。風が吹いて落下位置がずれたらどうするのだろうか。そんなリスクにばかり目がいく。いくらなんでも、僕には無理だ。そもそも、観光客向けのインストラクター付きスカイダイビングですら、どんなに安全と言われようとも、今のところ飛びたいとは全く思わないのだから。

「ハワイに行ったらスカイダイビングした方がいいよ、絶対!」と言う友人・知人の声をたまに耳にするが、そもそもハワイに行ってみたいと思うタイミングがほとんどないし、行ったとしてダイビングにはまあ行かない。想像するだけで分かる。入念なレクチャーを受け、小型飛行機に乗り込み、機内で2人用のパラシュートを装備したインストラクターとガチガチに結び付けられる。「大丈夫、僕がパラシュートを操作するだけだから、君は目を開いてダイビングをエンジョイすればいい」きっと、そんな風に僕を安心させようと声をかけながら、サービス精神旺盛な笑顔を見せてくるはずだ。

それでも。

飛行機のドアが開く。恐る恐る、地表を見下ろす。きっと僕は床に這いつくばって何とか顔だけ出し、そして、ここまでたどり着いておきながらなお後悔の念に駆られるのだろう。無理だ。万が一パラシュートが開かなかったら、どうするんだ。いや、後ろにつくインストラクターを信頼することがかろうじてできたとしても、もしかしたら落下中にショック死するかもしれない。やはり、無理だ。そうして僕は駄々をこねて、飛ぶのを止めるに違いない。それこそ必死になって拒否するだろう。

高所恐怖症を発症したのは、東京タワーのガラス床のせいだった。足元に地上が見えた途端に、このガラスが突然割れたら、終わりだ、そんなありもしない想像に襲われた。そして自分が生まれ育った東京を秋田の田舎で暮らす孫に見せたかった祖父をなかばなじるような勢いで、すぐ戻ろう、と必死で懇願したのだった。大学時代に友人と江の島の灯台を訪れたときもそうだった。もし落ちたら死んでしまう、と思うと、手すりに近づくことすらできなかった。

高所恐怖症というやつと長年付き合ってきてなんとなくわかってきたのは、「たら、れば」のリスクへの意識が強すぎることが一つの原因らしい、ということだ。事故率という客観的なデータを見れば安全といって差し支えないレベルであっても、「もし、事故が起きたら」という想像が先立つために、恐怖の感情に支配される。

でも、恐怖が何もすべて悪いわけではない、ということも年を取るにつれてわかってきた。車の運転だってそうだ。事故を恐れるから、安全運転を心がける意識が自然と湧く。狭く見通しの悪い道でものすごいスピードを出している車とすれ違うと肝を冷やすが、あそこまでいくともしかしたら恐怖の感情がねじ切れてしまっているのではないか、と少し心配になる。長年のペーパードライバー歴を乗り越えていきなりマニュアル車で通勤をしなければならなくなったときは、それはそれは怖かったが、恐れを感じつつも、少しずつ運転技術を思い出し、慣れていけば、自然とある程度スピードは出せるようになった。今ではギアチェンジを楽しめるくらいだ。

恐怖に支配されやすい僕は、そうしてリスクを意識しつつ適切にコントロールしようとすることを繰り返すことで、ようやく世界を広げることができる人種なのかもしれない。死への恐怖ならまだしも、ある程度冷静に見つめることのできるリスクであれば、何らかの方法で回避することは可能なはずだ、という合理的な判断ができる。きっと、そういうことなのだろう。

「地方創生」や「田舎回帰」が一部で話題になっているが、テレビや新聞で取り上げられる前のタイミングで、地元でもなんでもない離島に移住した僕は、多くの人から「よくそんな覚悟ができたね! すごいね!」と言われるのだけれど、個人的にはそこまで大きな覚悟をしたつもりがないからいつも対応に困った。そこでの仕事は自分の興味関心にマッチしていた。それが最優先としてあるから、あとは暮らしの部分での不安を解消すればよかった。たまたま学生時代に島に遊びに行ったことがあって、島の暮らしがイメージできたし、どういう人がそこに住んでいるのかもなんとなく把握できていたことで、リスクを把握するのは容易だった。東京での暮らしに慣れ切った自分がコンビニもない田舎での暮らしに適応できるかどうかの問題はあったけれども、元々秋田の田舎育ちだから、その勝手はある程度分かる。やるべきことが分かっていれば、あとはそれをやるだけ。

そういう意味で、地方へ移住するという選択肢は、僕の中でそこまで恐ろしいことではなくなった。その道に進みたいと思うならば、リスクを把握し、コントロールできるかどうかを見極める。不安要素が自分の目で見えるようなら、その道を進む。どうしようもなく不安が大きい選択肢は、選ばない。いかにも臆病で頼りない心の声を無視して突き進むのではなく、むしろ耳を傾けてあげることで、かえってリスクをコントロールして決断できたということがどうも多いようだ。

こうしてリスクや不安との付き合い方を振り返ってみて、一つの結論に至る。たぶん、僕の中で何か大きな変化でも起きない限りは、やっぱりスカイダイビングができるようにはならないだろう、ということ。そして、それでもスカイダイビングにチャレンジせざるを得ない状況になったときは、やるべきことが二つある。自分の心の声が震えている様子をちゃんと見つめてあげながら、不安の源泉を出来る限り取り除いてあげること。もう一つは、空にダイブしたときの素晴らしい景色をイメージすること。

パラシュートを持たずに地上のネットを信じて飛び込んだ彼は、この1回のチャレンジのために1年半の準備期間を費やしたという。きっと、彼にとって、どうしても見たい景色が、何とかして見出したい世界が、あの空にあったのだろう、と思う。いかに準備万端で臨もうとも、後ろに経験豊富なインストラクターが控えていようとも、最後の一歩を踏み出すのは自分なのだ。だから、僕はきっと、飛行機の開いたドアから流れ込む強風に晒されながら、こう自分に問うのだろう。「これから僕が飛び込む空には、見たい景色が、あるのだろうか」と。自分の心が頷くのなら、あとは、飛ぶだけだ。

 

 

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2016-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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