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「恥ずかしがり屋」だと「おばさん」とは呼ばれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋 さやか(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
24歳の頃にストレスで体調を崩してしまった。学生時代からの憧れの職業だった国産自動車ショールームの専属コンパニオンの仕事に就いて2年目のことだ。
 
疲れが全く取れず一つのことに悩むとドリルで穴を掘るように考え込んでしまい、心の悲鳴が体の痛みとなって現れていたが我慢をして出勤していた。
 
仕事が終わって帰宅途中に電車を降りてから家に帰るまでの道のりで泣くようになってしまった。
 
「これはおかしい」と思って本屋で健康に関する本を探して心の健康の特集をしている雑誌を見つけた。立ち読みをするつもりだった心の病の闘病記が掲載されていて気がついたら熟読してしまっていた。読みながら自分のことだと思い本屋の雑誌コーナーだということを忘れて大粒の涙をこぼしてしまった。
 
思い切って心療内科を受診したらうつ病と診断された。目の前が真っ暗になった。
 
死ぬ病気ではないがいつ治るか全く分からない。
 
死んでいるように生きていく人生なのだろうか
 
働けるのだろうか。
 
結婚や出産は難しいのだろうか。
 
色々な心配事が頭の中をぐるぐる回って、将来の希望が全く持てず愕然としてしまった。
 
仕事は契約社員だったので2年の任期満了まで残り5ヶ月だった。1ヶ月休職した後に復職したが元気だった頃の自分とは程遠く、退職までは出来る範囲の業務をこなして最終出勤日を迎えた。
 
退職後はアルバイトをしながらの闘病だった。体調が悪い時は自宅で眠って過ごした。朝起きると倦怠感で体が重く、着替えることすら出来ずにパジャマのまま1日を過ごした。
 
闘病記には10年以上の患者さんがたくさんいて一生付き合うような病気ということも書いてあり、元気になった頃は中年かもしれないととても不安になった。
 
「老け込んではいけない」
 
症状を治すことと同じくらい心を砕くようになった。
 
体調がいい日は周りの大人の女性を観察して「大人の女性」と「おばさん」の違いを考えるようになった。
 
「女性が美しく歳を重ねる」というテーマの本も読むようになった。
 
色々な本を読んで自分なりに考えたのはおばさんと大人の女性の違いは単なる年齢ではなく「羞恥心」があるかという結論になった。簡単な言葉で言い換えると「これをやったら恥ずかしい」という分別があるかどうかだ。これなら体調が優れなくても少しは意識出来るような気がした。
 
若者が中高年を嫌う理由に「図々しさ」がある。遠慮もせずに周りを押しのけたり不躾な質問をするという厚かましさに嫌悪感を持たれてしまうのだ。
 
少しでも「恥ずかしい」という感情が残っていれば言動の老化は多少なりとも防げると思う。
 
体調がよく外出して人に会う時は自分の言動が人からどのように映ったか振り返るようになった。決して全ての言動に対してストイックに反省していたわけではないが「今の振る舞いは品がなかった」とか「ちょっと図々しかった」と思うだけだったが日々意識して過ごしていると上品で知性溢れる素敵な歳の重ね方をしている女性に出会えるようにになった。
 
また若々しい外見を保つための心がけも肌・髪・体型の変化を放置することを「恥ずかしいかどうか」と思うかどうかだと思った。
 
必要以上に若作りをするのでもなければお金をかければいいというものではない。基本のお手入れが不可欠だ。
 
メイクをしたら必ず落とす、日焼けから肌を守る、保湿をする。どれも難しいことではない。軽い運動をして食事に気をつけることも心身の健康と体型を保つのに不可欠だ。このようなルーティーンを面倒臭いという理由でサボったら女性としてというより大人として恥ずかしいと思う。
 
もともと美容は大好きだったので毎日使う化粧品は香りがよく使い心地がいいものを選ぶようになり、体調が悪い毎日でもお手入れをしている時だけは辛いことを忘れられるようになっていった。肌がスベスベだと心が落ち着くから不思議だ。
 
社会復帰が出来るようになって挑戦したいと思った仕事は美容と健康の仕事となった。もともと人前に出る仕事だったので美容で人一倍悩んでいたことも生かせるし体調を崩していたことも経験になるかもしれないと思ったからだ。
 
もともと香りが大好きだったのでアロマセラピーに興味を持った。アロマセラピーには心を癒すだけではなくスキンケアや体型維持の美容面に効能があることを知った。
 
資格を取得しアロマセラピーと自然派化粧品を扱う店員の仕事に転職した。
 
ちょうど30歳になっていた。
 
周りのスタッフやお客様に年齢を教えると「若いですね」と言われるようになった。中にはびっくりしてくださることもあった。職場やプライベートで若い方から「一緒に飲みに行きましょう」と誘われることも増えて楽しい30代をスタートさせることができた。
 
闘病中に意識していたことが少しだけ実を結んだ気がした。
 
アラフィフの今は体力が衰えて色々なことが億劫になってきて若い頃よりも楽をしたいという気持ちが増えてきた。図々しくなった自覚もあるしお手入れが面倒臭いこともある。それでも「今の行動はちょっと恥ずかしかった」と反省するようにしている。
 
特に女性同士で集まると緊張感に欠けて羞恥心がなくなりがちだが一人になった時にこっそりと「さっきは図々しかったかなと振り返るようにしている。これがなくなったときはいよいよ女性が終わった瞬間だと思っている。
 
おかげさまで未だに「おばさん」とは呼ばれたことはない。影では言われていると思うけど幸いなことに面と向かって言われたことはない。相手は気を使っていてくれるのだろうが外に出たら多少の羞恥心を持って行動し「おばさん」と呼ばせない意識も大切だと思っている。

 
 
 
 
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2022-10-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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