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思いつきで旅行に行ったら人生変わった話


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記事:福居ゆかり (ライティング・ゼミ)

我が家は毎朝、テレビをつけている。支度をしながら、横目で今日のニュースを知るためだ。
そんなある時、ふと懐かしい言葉が聞こえた気がして振り返った。そこには九州地方のアナウンサーが方言で、お天気について話していた。
九州。もう一度、行けるかどうかわからないけど、私のターニングポイントとなった場所。思い出すと、複雑な思いが込み上げる。

私は数年前、一度死んだようなものだった。
九州のとある場所で。

独身、20代半ば、楽しみといったら読書と旅行と女子会くらい。
その頃の私は忙しく出張に飛び回り、会社に住んでいるのではないかと錯覚するほど仕事漬けになり、少しの余暇を上記のことに費やす生活をしていた。
職場では、自分はこんなに任されているのだから仕事ができる! と思い上がり、女子会ではお互い日々の愚痴を冗談交じりで言い合うのが常で、彼氏できた? できてないよー、を合言葉に飲み明かしていた。それで、仕事もプライベートも充実していると自分では思っていた。
暮れに差し掛かったある日のこと、友人から「たまには年末年始に旅行に行かない?」と、旅行の誘いをもらった。特に予定がなかった私は、二つ返事で了承した。

そうして、クリスマスに私と友人は九州へと旅立った。

空港からはレンタカーを借りた。当時は九州新幹線が開通していなかったため、移動手段は車が主だった。普段から運転をしている私と友人なので、特に困ることもなかった。
福岡市内をあちこち周り、太宰府天満宮へ立ち寄った。高校生の時に訪ねた思い出を辿りながら、梅ヶ枝餅を食べ、カラフルなおみくじを引いた。
凶だった。
見事に悪いことばかりで、「これから家族を巻き込んで辛い事が起きるが、辛抱して乗り越えよ」という内容が書いてあり、妙に頭に残った。
けれどせっかくの旅行中だし、悪いことは忘れよう、と枝に結び、あまり考えないようにした。

翌日、それは起こった。
高速道路での事故だった。
私が気が付いた時には噴煙舞う車の中で、何が起きたのかわからなかった。そして、次に意識が戻った時は病院でCTを取るために台に乗せられており、自分の叫び声で目が覚めたのだった。

診断は「第3腰椎圧迫骨折」。
背骨の、腰の部分にあるちょうど真ん中の骨が潰れている、という事だった。
運転していた友人は幸運なことにほぼ無傷だったため、責任を感じて泣き、駆けつけた両親にも泣かれ、私だけが呆然としていた。
とにかく背中が痛いし、今後の事を考えなくてはいけないし、多方面に連絡しないといけないし、といろんな事が頭に浮かんでは消えていった。
起きている現実に気持ちがついて行かなかった。

そこから私の世界は一変した。
コルセットで固定され自由に動けない体、外の景色を見ることもままならない日々。好きなものも食べられず、もちろん仕事なんて出来ず、ただベッドの上でぼんやりと過ごした。
世界への窓はテレビと母と携帯電話という、現実味の薄い日々だった。

動けない私ははじめ、自分で清拭することも着替えることも、トイレに行くことすらできなかった。何もできない自分が歯痒く、辛く、そしてそんな事を他人にしてもらうことがとても恥ずかしかった。申し訳ない思いで一杯だった。
しかし、そんな私に看護師さんたちは笑顔で接し、励ましてくれた。これから先の未来を考えるとストレスでイライラが募る日もあったが、看護師さんはそんな私を笑顔で受け止めてくれた。
「若いのにかわいそうに、でも大丈夫よ、ここで辛い分、これからいい事あるからね」と励ましてくれた看護助手のおばさん、「高速の事故でなんて生きててよかったねー、君はとってもラッキーだよ!」と言ってくれた先生たち。やわらかな、独特の方言がとても温かく耳に残っていた。

ずっと付き添いしてくれ、明るく振舞ってくれた母。友人からは宅急便で本が届き、職場からは千羽鶴が届いた。暇つぶしに数えてみたら千羽なかったけれど、それもうちの職場らしい、と同僚の顔が思い浮かんで可笑しかった。

人のあたたかさが、身に染みるようだった。それまでの自分がいかに、傲慢で、肩肘張って、突っ張って生きていたのかがわかった。
「自分は一人でも生きていける」というのは、過信からくる錯覚だった。
こんなにも優しさは身近にあるのに、いつの間に周りは敵であり、競争相手になってしまったんだろう。いつの間に、そういう目でしか見られなくなってしまったんだろう。
恥ずかしく、情けなかった。消えてしまいたい、そう思った。

けれど、生きている。そして、手を伸ばしてくれる人がこんなにも周りにいる。
それなら、ここから変わろう。私は私を一度リセットしてやり直そう、と。

その後、数ヶ月かけて順調にリハビリは進み、退院し、今に至っている。ただ、後遺症として重いものはもう持ち上げることもできず、無理もできない。
おかげで職場には復帰したものの、仕事内容を変えることになり、出張も残業もなくなった。
ヒールも履けなくなり、それによって服装も変化した。転んで腰を打つとまずいので、外で羽目を外して飲むこともなくなった。
けれどその分、体を労わり、自分を大切にし、無理をしなくなった。
そして、自分の中での比較ではあるけれど……これまでより、人の気遣いに気がつけるようになった。私の世界はみんな、気づけば、優しかった。

また、入院中にお世話になった方の紹介により、私は今の主人と出会い、家庭を持つことになった。
縁とは何がキッカケとなるかわからないものだ。

こうして思いつきの旅行により、私の人生はすっかり変わった。
ほんの些細な意思、行動で、人生はいくつにも分岐する。だからこそ今のこの一瞬を大切に、自分で選択して生きることが大事なのだと思う。

そして、おみくじの内容には気をつけた方がいいのかもしれない。

 
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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