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下手でもウケる! 吹いて楽しく聴いても楽しい「はなぶえ」とは?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田光(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「はなぶえ」という笛をご存じだろうか。
あら、かわいらしいお名前ね、と思われたとしたら多分それは違う字を想像している。残念ながらこれは「花笛」ではなく「鼻笛」、つまり鼻で吹く笛だ。
別名ボカリナともいい、英語ではノーズ・フルートやノーズ・ホイッスルなどと呼ばれている。
 
知る人ぞ知る笛、というわけでもなく、日本にもいくつかの愛好家団体があるが、かといってリコーダーやフルートレベルで世の中に広く知られているわけでもない。
 
アマゾンやフィジー、東南アジア、ハワイ、台湾などでは、鼻笛は古くから狩猟用、祭祀用として使われてきたそうだ。横笛や縦笛の形をした、見るからに「笛」の鼻笛もあるが、日本で一般的にいう「鼻笛」は筒状ではなくちょっと変わった形をしているので、知らない人が見たら楽器だと気づかないかもしれないし、これのどこから音が出るんだろうと不思議に思うだろう。
 
材質はブラスチックや木、陶器などさまざまだが、共通するのは鼻から口元までを覆うような形になっていること、そして鼻息を口の中に送り込むための穴と、いったん口の中に送り込まれた息が口腔内の空間をめぐってから外に出ていくための穴が開けてあることだ。
 
この鼻笛を顔に当てて上の穴を鼻の穴に密着させ、あごを少し前に出して受け口にし、下唇を下の穴の下に当てて鼻息を吹き込むと音が出る仕組みになっている。
音色はリコーダーに近いが、もうちょっと丸みと温かみがある感じ。なんとなく脱力感が漂ってきて、ポカポカの日差しが射しこんでくる縁側で、猫でも撫でながら吹きたくなるような癒し系の音色だ。
 
もちろん、音の高さを変えることも、曲を演奏することもできる。音程は口腔内の空間の広さを調整することで変えられる。
子どものころ、ガラス製の瓶に息を吹き込んでボーと音を鳴らして遊んだ人も多いだろう。原理はそれと同じで、口の中の広さを変えれば高い音が出たり低い音になったりする。
音の高さは自分の耳で聞きながら出さなければならないから、狙った音をすぐには出せないかもしれないが、逆に言うと、リコーダーのように指使いを覚える必要もないし、最初からちゃんと鳴ってくれるので、音を出すことそれ自体はさほど難しくはない。
 
そしてもう一つ、他の楽器にはないすごいポイントがある。
指を使わないので、顔に笛を固定しさえすれば両手が空くのだ。だからやりたければピアノやギターで伴奏しながら、それに乗せてメロディーを吹くのを一人でできる。膝の上の猫を撫でながら演奏できるという話も、ウソではないのだ。
 
木で鼻笛を作っているという鼻笛作家の方にお話を伺った。
 
――材質が色々ありますが、何か違いはありますか。
 
音色はあまり変わりませんが、陶器製のものは冬場に顔に当てると冷たいです。
 
――どれくらいで吹けるようになりますか。
 
人にもよりますが、早い人だと数時間から一日もあれば簡単な曲を吹けるようになりますよ。
 
――音域はどれくらいですか。
 
私は頑張れば3オクターブ出せますが、高い方の音は正直なところ演奏には使えませんね、あまりきれいな音じゃないので。
 
――木製の鼻笛にはサイズが色々あるようですが、なぜですか。
 
プラスチック製の鼻笛は子どもから大人まで幅広い顔のサイズの人に合うように作られていますが、木製だとそうはいかないので大小さまざまなサイズを用意しています。鼻から口までの長さは人によって違うので、自分の鼻の下の長さに合ったものを選ぶ必要があるんですね。
 
――子どもから大人、お年寄りまで世代を選ばず楽しめそうですね。
 
はい。ですがたまに、うまく音が出せない子どもさんがいます。そういうときは厚紙で作った鼻笛を吹かせてやります。下の穴のところにセロハンを貼ったものだと、すぐに音が出るので喜んでもらえますね。
 
――ちょっと吹かせてもらえますか。
 
もちろんです。初心者の方にはプラスチック製の笛で試してもらっています。音が出しやすいので。
 
ポヘーーーーー
 
――おおー、出ました! 口内の広さをちょっと変えるだけで音の高さが変わるのが面白いですね!
 
私は管楽器歴が長いこともあって、最初はつい口から息を出してしまったが、慣れてくると鼻から出すのに違和感がなくなる。音程のコントロールはかなり手ごわく、狙った音が出せるようになるにはある程度練習してコツをつかむ必要がありそうだが、楽器の演奏はちょっと難しそうなことを攻略していくのが醍醐味なのだ。
 
試し吹きだけでサヨナラしてしまうのはあまりにも名残惜しいので、一つ1000円のプラスチック製の鼻笛を購入した。
 
自宅で練習しながらああでもないこうでもないと試行錯誤していると、隣の部屋から笑い声が聞こえて、娘たちがやってきた。
 
「なんで笑うのよ!」
「だって音程が外れて面白いんだもん! なんか吹いてよ。トトロの散歩がいいな」
「まかせろ」
 
だが、
 
ミ・ソ・シー
 
ああ! そうじゃない、ミ・ソ・ドーって吹きたいんだよ本当は!
 
必死で「ド」の音に食らいつきたくて頑張っている私を、娘たちが指さしてゲタゲタ笑っている。
言い訳のようだが、今の私が出せる音域は1オクターブくらいしかないし、跳躍する音はさらに音程が取りにくいのだ。
娘たちは腹を抱えてひとしきり笑ったあと、また隣室へと戻っていったが、私が何か音を出すたびにげらげらと笑い声を上げている。
しかし考えてみれば、ヘタクソに吹いても音がきれいでこれだけ笑いが取れる楽器というのは、案外珍しい存在かもしれない。
初心者のバイオリンは耳に刺さるような不快な音になってしまうし、たどたどしいピアノも聴き続けるのは正直辛い。習い始めたばかりの管楽器の音色は、もはや騒音だ。
 
子どもから大人まで手軽に始められ、しかもヘタクソでも楽しめてその場が和むという効果もある鼻笛、手元になくても、インターネットで「鼻笛 紙」で検索すると、紙製鼻笛の型紙をダウンロードできるサイトや、作り方の説明がたくさんヒットする。
 
折しももうすぐ冬休みだ。
新年からご家族で鼻笛のとぼけた音色に笑い転げるのも、一人で音程の研究に没頭するのも、一年の始まりとしては悪くないのではないだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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