メディアグランプリ

不眠を解消する「眠り屋」に行った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中園 由紀子(ライティング・ゼミ)

このところ睡眠導入が悪く、しかも眠りが浅い。寝ることが大好きで、蒲団に入ったら1分とたたずに眠れていたのに、いつまでも頭が覚醒され考えたくないことを考えて眠れない。時間ばかりたち、眠れなくて焦る。いっそ本でも読もうと起きてみたこともあるが、かえって眠れなくなったので、眠れないまま蒲団の中で眼を閉じているが睡眠時間が短くなり目覚めがすっきりせず、いつも眠い。

不眠の原因はわかっている。つい最近私に起こった非常時のことだ。あまり詳しくは言えないが、信頼いていた人、信用していた人に利用されたのだ。それがショックで不眠が続いている。そのことから、信じていた自分が情けなく、悲しく、自分の周りの全ての人を信じられなくなり、うまく眠れない日が続いている。

そんなとき、偶然「眠り屋」のことを知った。紹介制のその店は、「眠り屋」の主人直通の携帯電話だけが情報だった。
崖ぷちじゃなければ、そんな怪しげな場所に女一人行く気にならなかったろう。とにかく何も考えず深い眠りを欲していた。すとんと眠れることができたら、自分が楽になれるし、普通に過ごせる日が戻る気がした。

「眠り屋」の主人は女性だった。連絡すると主人は、「一番うれしかった話を聞かせてもらうので、考えておいてください」と言い15時に来るよう言われた。

「眠り屋」は新逗子の駅から徒歩20分と案内された。住所から携帯電話の地図を使って来るように指示があった。
「眠り屋」は普通の家で、看板はでていないが、表札があるということだ。電話で主人は、
「どうしてもわからなかったら連絡をください。けれど、今まで大抵皆さんたどり着いていますから携帯のナビでわかると思います」
と言われたら、なんとか自力で行くしかない。
新逗子は思っていた以上に何もない駅だった。携帯のGPSを頼りに歩き始めると、GPSは路線バスの道を外れ、急な坂を上り始めた。坂はだんだん細くなり、ハイキングコースのようになっていた。それでもぽつんぽつんと家があるので、人が住む場所であることはわかる。
徒歩20分をなめていた。想定していなかった上り坂と睡眠不足で汗をかいた。運動で汗をかくなんて久しぶりだ。

「目的地に着きました。案内を終了します」GPSが到着を教えてくれた。携帯ばかり見ていた顔をあげると、随分上ってきたようだ。遠くに逗子の海が見える。

「眠り屋」の主人は、60代に見えるおばさんだった。眠っている間に何かしそうには見えなかったけど、人に利用されている手前疑心暗鬼になっている。
「いらっしゃいませ。山の上までお疲れさまでした。本日は、ここで深い眠りをご提供させていただきます。メニューは2つあります。一つは、お客様が眠ってしまったあと、起きるまで起こさない。つまり、場合によっては次の日までここでお眠りいただける宿泊タイプです。お客様によっては普段ショートスリーパーでも、ここでは10時間以上眠れることもあります。欲している睡眠を満足するまで味わっていただくために起きるまで起こしません。しかし人間、病気でない限り、大抵10時間から12時間で1度必ず置きます。なので、明日には帰れますので安心してここで宿泊しぐっすりお眠りください。もう一つは、4時間睡眠です。身体が生まれ変われるのは4時間ほどの睡眠で十分です。不眠でなければ、昼寝の30分でも身体はリセットされますが、眠りが足りてない場合、一度身体を再生させるには最低4時間は必要です。本日中にお帰りいただけますので、明日のご予定を気になさらなくても大丈夫です。どちらにしますか?」
 初対面の人の家に泊まり、10時間以上寝続けることはいくらなんでも不安だったので、私は4時間コースを選んだ。
 一体何をしてくれるのだろうか、眠気より好奇心と緊張で、頭が冴え初めてしまった。

案内された部屋は、ごく普通の寝室だった。普通だけれどアロマの香りのせいか、空気清浄器のせいか、とても呼吸がしやすかった。
出されたハーブティーを飲みながら、貴重品は金庫にしまい、暗証番号を自分で決めてロックするように、命の心配は絶対ないが、安心して眠るために、あなたがここにいることを私の眼の前でどなたかへメールもしくは電話をしてくださいと言われたので、それら儀式を行った。

そして、普通にベッドに入り、「一番うれしかったこと」を主人に話すように言われた。思いの他固めのベッドと固めの枕だった。午後4時前に寝ろというのか。

主人は私の手、腕をマッサージしながら、私の一番うれしかった話を聞き始めた。私はこの課題のためにずっと、他人に話せる「一番うれしかったこと」を無理やり思い出した。主人は熱心に聞いてくれ、そしてまるで自分がうれしかったように、本当に喜んでくれたようだ。というのも、話の途中で私は眠ってしまっていたのだ。

4時間後、主人にマッサージをされている感覚で目覚めた。
「お目覚めの時間です。よく眠れましたか?」
「いつの間に寝てしまったのか覚えていません。ぐっすり眠りました」
「今、夜8時30分になります。よい眠りを得られたでしょうか? ゆっくり起き上がってください」
私の身体はとっても軽かった。すっきりとしていた。新しいエネルギーが製造されていた。
「帰り道は暗くてわかりにくいと思いますので、駅まで送ります。徒歩ですが。お帰りの準備をしたら、お声かけください。本日はご利用ありがとうございました」
主人はそういうと部屋から出ていった。私は久しぶりに熟睡し、眠れることの気持ちよさを再認識し、いい眠りができるってことは、心も良い状態でいないといけないと改めて思った。主人に話をした「一番うれしかったこと」のようないい話をするためには、しっかり自分が前を向いて、何がしたいか考えて選択をしていかないとならないし、起きてしまったことにくよくよしても何も変わらない。忘れなくてもいいけれど、そこにこだわって睡眠障害になるなんてもったいない。もうこだわらないぞ。そう決心した。

気持ちがすっきりしていた。そういえば、ここまでのハイキングのような上り坂もよかったのかもしれない。これからは、少し運動もしないといけないな。60代のここの主人が、こんな坂の上に住んで生活していることを思うと、自分は便利ばかりを優先していたが、これからはエスカレーターに乗らずに歩いてみよう。この坂に比べればたいしたことはないはずだ。

「眠り屋」は確かに安眠を売っていた。それだけでなく、眠りから覚めたとき今までどうしようもなかったことを解決してくれた。
そして、それから私はまた寝ることを楽しみにできる毎日が過ごせるようになった。そのうえ、もしまた眠れないほど苦しいことや困ったことがあっても、「眠り屋」に行けばいいんだというお守りを持ったので、落ち込むことがなくなった。

 ありふれた安眠ができる毎日がとてもうれしい。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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