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メディアグランプリ

物語を飲む パート1


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Maki (ライティングゼミ4月コース)
 
 
ウチの冷蔵庫の野菜室には日本酒の四合瓶が所狭しと並んでいる。
肝心の野菜たちは、申し訳なさそうに隙間に埋まって緩衝材代わりになってくれている。
 
こう書くと生粋の日本酒好きだと思われそうだが、実はそうなったのはほんの4〜5年前。それまではご多分に漏れず、日本酒独特のアルコール臭や、飲んだときのセメダインのような味が苦手で自ら手を伸ばすことはなかった。
 
時々お店に連れて行ってくださる諸先輩方が、これは本当においしいから。と薦めてくださる高級酒も、体の中がカッと熱くなっていくのを感じながら一生懸命苦い液体を喉に流し込み、ご厚意を無駄にしないようにとお相手の目を盗んでこっそりお茶に手を伸ばしていた。
 
だから海外から来た友人が日本酒蔵に見学に行きたいと言ってきた時は、あのアルコール臭に囲まれに行くのかと正直げんなりした。とは言え彼女にとっては貴重な日本旅行。都内から比較的アクセスの良い見学可能な酒蔵を予約。2人で2時間弱、電車に揺られながら山間にあるその場所に向かった。
 
何も知らない素人2人がノコノコと出かけていった訳だが、振り返ってみると本当にラッキーだった。何より訪問したのが偶然にもちょうど絞り作業の時期だったのだ。しかも平日に有給を取って出かけたものだから、見学者は私たち2人だけ。おまけに1人は外国人だからか、案内をしてくださる蔵人さんも少しでも何か特別な体験をしてほしいと思ってくださったのだろう。なんと絞り機から直接出るお酒を試飲させてくれたのだ。そしてこれが……
 
うまい。うま過ぎる。
何だこれは。
 
飲んだ瞬間言葉を失い、彼女と思わず顔を見合わせた。「驚きのうまさ」なんて、どこかのビールのキャッチコピーになっていたが、本当にうまさで驚くと無言になってしまい、CMにならないことが分かった。数多くはないが、これまで嗜んできた日本酒たちとは全く別物だったのだ。
 
まずアルコール臭が皆無。味はというと、「フレッシュさ」がとにかく全面に放たれている。キレ良くシュワっと弾ける微炭酸感。クリアで口内をスッと抜けていく。そこに、あれ? どこかにメロンいる? と聞きたくなるような、お酒好きが恐らく一番言われたくないであろう「ジュースのように」飲めてしまう代物だったのだ。
 
ちなみに酒蔵見学において、搾りたてのお酒の試飲というのはそんなに珍しいことではない。「いらっしゃる前に絞りました」と言ってボトルを持ってきてくださり「お好きなだけどうぞ」なんて嬉しいことを言ってくれる酒蔵さんも少なくない。
 
ただ、私のようなただの一般人が、工場見学中に絞り機に付いてる蛇口から、直接カップに注がれたお酒を試飲させてもらえるなんて経験は、今のところ後にも先にもこの1度だけ。ストレスがほぼかかっていない状態で注がれたお酒は心地良く喉をするする通って行き、試飲にも関わらず、思わず「もう1杯ください」と2人同時に呟いて笑われた。
 
国酒と言われる日本酒だが、1973年にピークを迎え、その後の消費量は見事に右肩下がりとなり、2019年には約3分の1にまで落ち込んだとされる。アルコール飲料の多様化に加え、やはり独特のアルコール臭や、悪酔いすると言うネガティブなイメージが先行してしまっているのだろう。当然その消費量に伴い日本酒蔵数も減少の一途を辿っている。
 
そんな中、今さらながら日本酒のおいしさに魅了されてしまったわけだが、実は味だけでハマったわけではない。日本酒は2000年前には既に存在していたと言われ、現存する最古の蔵は1114年前に創業されたそう。日本の産業の中で、そんな長い歴史が紡がれたものが他にいくつあるだろう。その長きにわたる歴史と、酒造りに関わる蔵人さん達の職人魂になぜか勝手にロマンを感じてしまったのだ。そして今では少しでも多くの人たちに私たちが出会った感動体験してもらいたいと、これまた勝手に半径3メートル位で関わる人たちにプチ啓蒙活動をしている。
 
その1つとして先日、日本酒に全く合わないことが予想される、スパイス満載のタイ料理とペアリングしてみよう! なんてイベントを友人と開催してみた。最近では低アルコールだったり、熟成モノだったり、サクラ、イチゴ、リンゴと言った花酵母を使ったなんて言う変わり種も増えてきて、本当によりどりみどり。それだけにどの1本を選ぶのかが悩ましく楽しい。その日の一番のチャレンジはグリーンカレーとのペアリングだったが、偶然にも最適な1本を発見! それが何かは次回のイベントのお楽しみだ。
 
一旦植え付けられた苦手意識は簡単に覆されるものではないだろう。しかし2000年の歴史と物語に想いを馳せながら、世界の料理とのペアリングに興じられるなんて、これ以上の贅沢なお酒の嗜み方はあるだろうか。
 
なんてカッコよく筆を置こうとした瞬間にインターホンが鳴った。宅急便だ。新しいお酒ちゃんたちがやってきた。今晩のおかずは野菜室で幅を利かせてるキャベツを使って回鍋肉にしよう。さて、どの1本といただこうか。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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