ふるさとグランプリ

私の愛する頑固おやじが、行方不明になった。《ふるさとグランプリ》


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記事:千代子(ライティング・ゼミ)

「マック派? マクド派?」

世界最大のファーストフードチェーン、呼び名問題。
最初に直面したのは、もうずいぶん昔のことだ。
歩いて通っていた地元の中学では、全員が『マック派』だった。(『マクド派』は隠れキリシタンのごとく、表向きはマック派として振る舞っていたのかもしれない)
しかし、電車に乗って通うようになった県内の高校では、少数ではあるが『マクド派』が存在した。その聞き慣れない響きに初めは違和感を覚えたが、3年間聞き続ければそれなりに受け入れ態勢ができた。
そして、電車を乗り継いで通う東京の大学では、『マクド派』の勢力が増していた。
入学当初、これは時代の流れで、マックと言う言葉は廃れてしまうのかと思ったが、どうやら真相は違うらしい。
あるテレビ番組によれば、東がマック、西はマクドなどと大別できるようなのだ!

しかし、である。
あたかもマクドナルドの呼び名は二種類しかないような書き方をしてしまったが、実はもう一つ、選択肢が存在する。極、極少数、ほんの一握りの『マクドナルド派』だ。彼らは、ある潜在意識のせいで、マック派にもマクド派にも属することができない。

かくいう私は、何を隠そう『マクドナルド派』だ。
自分の中に『マクドナルド派』の素質があることは薄々感じていたが、それをハッキリと自覚したのは小学生の頃だった。ある種の言葉が、どうしても受け入れられないことに気が付いたのだ。

2000年頃をピークに出現したガングロギャルが「超」「ヤバい」「マジ」に代表されるイマドキ言葉を世に広め、流行に敏感な小学生たちも負けず劣らず「今日の宿題、マジで超ヤバい」などと活用しはじめた。
待ちに待った給食の時間には、「超お腹すいた、マジヤバい」
クラスの中で一番人気だった松田くんが8段の跳び箱を飛んだ瞬間にも、「超格好いい、マジヤバーい!」
最も人気のない、教卓の目の前の席を引き当てた日には、「マジ最悪、これからヤバいよぉ……」
――嬉しい時も、悲しい時も、怒った時も、「マジで超ヤバい」で済ませてしまうのだ。
私はその言葉を聞くと、何とも言えない気持ちになった。
だからと言って同級生の言葉遣いにいちいち口を出しては、嫁をいびる姑のようになってしまうので黙っていたが、とにかく耳に障った。そして、それらの言葉を使わずに小学校を卒業してしまった私は、生徒のみならず先生やPTAもマジで超ヤバい言葉を遣う中学校の会話に、終ぞ馴染むことができなかった。

「イマドキ言葉」で一番盛り上がったであろうJK時代。
幼い頃から「今どきの若者は……」と言いかねない偏屈っぷりを発揮していた私の心は、立派な頑固おやじになっていた。既にスタンダードな言葉として馴染んでいる「超」「マジ」「ヤバい」も相変わらず受け入れられず、マクドナルドをマックやマクドと呼んだり、サイゼリヤをサイゼと呼んだりするのは禁忌を犯すに等しい行為だと思っていた。
マジで超ヤバい言葉はその後も進化を遂げ、ナウいからのキモい、うざい、そしてパネェ、リアルガチ、遂にはあげぽよ、メンディー、ショッキング・ピーポー・マックスときたが、頑固おやじには「ほぼほぼキャパ越え」であった。

そんな私が、運よく東京に居場所を見つけたのは、今から2年前のことである。
ちょっと遊びに立ち寄った場所が、たいそう居心地が良く、ぬくぬくと居ついてしまったのだ。
その街には、『マクドナルド派』の空気が漂っている。しかし、決してマック派やマクド派の人間が迫害されている訳ではない。自ら「良い」と思うものを選んで使う意志が尊重されているのだ。

その街こそ、西荻窪である。
西荻窪には、流行りを追い求める空気が薄い。
パン屋でも、家具屋でも、クリーニング屋でも、「激安」だの「最速」だのと言う売り文句が出てくることはない。
その代わりに使われる言葉が『縁』である。
「どんなものも、出会いは縁だよ。本当に必要なものは、ちゃんと巡り会えるし、それを自分で選べる」
「絶対に~ねばならない」と押し付けたりせずに、「今巡り合ったものが、必要だと思うなら、その縁を選べば良い」と教えてくれるのがこの街なのだ。むやみやたらと新しいものに飛びつくのではなく、自分が正しいと思うものを選び、他の選択肢を否定することもない。

以前の私は東京が大嫌いで、マック派とマクド派の雑踏の中に放り込まれた、聖なる『マクドナルド派』特有の心細さに押しつぶされそうだった。押し寿司の米粒のように鉄の箱に詰め込まれて東京へ出荷され、時には酒臭さの抜けないサラリーマンや、滴り落ちる汗をぬぐいもしない人に押しつぶされそうになった。香水や柔軟剤の匂いが混ざり合った空間に閉じ込められて、何度も窒息しかけた。
しかし、それが東京の全てではなかった。
マクドナルド派の土壌を持ちながらも何も拒絶しない「西荻窪」という場所で、思い切り肺を膨らませることができたのだ。何が良いとか悪いとか、そんなことを決めつけて戦っていては疲れてしまう。大切なことは、自分が「良い」と感じるものに気付き、選ぶ力だ。

西荻窪で過ごした時間のせいで、私の中の頑固おやじは……好々爺になってしまった。

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