「君の名は。」のような風景を切り取るということは……《ふるさとグランプリ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:菊地功祐(ライティング・ゼミ)
「パシャ!」
いつものように高台から見える風景を、私は写真に撮っていた。
東京の三鷹にある、とある天文台。
天文台が設立されたのは1924年。
その頃の三鷹市は、マンション開発などが行われてなく、東京の夜空も満点の
星空が見えていたそうだ。
三鷹市にある天文台が私の家の近所にあるということもあり、
中学生の頃などはよく遊びに行っていた。
今では、周囲に家が建ってしまい、天体観測に適さないという理由で、
観測自体は行われていないが、当時使用されていた天体望遠鏡だけは残されているのだ。
私は大の宇宙好きということもあり、直径何十メートルもある天体望遠鏡を
眺めては、宇宙に想いを馳せていた。
数トンもある天体望遠鏡が設置されてある展望室の天井はくり抜かれていて、
360度、東京の夜空を観測できるようになっているのだ。
そして、天文台の周りは高台になっているため周囲の街並みを一望できる。
そこから眺める調布飛行場の景色が絶景なのだ。
調布飛行場から飛び立つ飛行機。
運が良ければ綺麗な富士山が背後に見える。
夕暮れ時に、三鷹にある天文台に行くのが私の日課だった。
つらいことなどがあったら、ひとまず天文台に行く。
そこに行って、美しい夕日に彩られた街並みを眺めるのが、私の唯一の楽しみだった。
夕日が沈むと、かすかだが星空が見えてくる。
東京の夜は、街全体が明るいため、星空はあまり見えない。
しかし、その天文台から眺める夜空は、宇宙に想いを馳せているようで、実に美しい眺めなのだ。
そこにあるはずの星の光を探し求めいると……
東京の夜空も捨てたもんじゃない!
そう思えるのだ。
天文台の近くにある高台は、地元の人には有名で、夕日を眺めに来る人が多くいる。
その日も、私はいつものように自転車で天文台へと向かった。
10月から天狼院のライティング・ゼミに通い始め、毎週月曜日の締め切りに追われる毎日で正直、結構しんどい。
毎週、記事を書き続けていると、どうしても書くことがなくなってくる。
家で、う〜と悩んでいても、何も思いつかない……
今週はどんなことを書こうか?
何を書こうか……
そう悩む毎日だ。
何も思いつかない時は、仕方ないので、
気分転換に三鷹にある天文台に行くことにしている。
自転車で坂を登っていく。
ちょうど今は4時頃だ。
天文台に着く頃は、日が沈む頃で、綺麗な夕日が見えるだろう。
天文台が見え始めた。
あれっ……
何かがいつもと違っていた。
何かが……
空を見上げると綺麗な雲の糸ができているのだ。
まるで「君の名は。」の2つに割れた彗星の尾のように、
何キロにも続く雲の糸が東京の空を覆っていた。
ちょうど夕日の時間と重なり、何だか神々しい雰囲気を出していた。
その時、私はせつなくなってしまった。
なぜだか、とてもせつないのだ。
失恋した時のように、胸が苦しくなってしまった。
高台の上には、美しい夕日を眺めようと多くの人が集まっていた。
夕日に彩られた空に心動かされ、スマホで写真を撮る人がいっぱいいた。
私も思わず、写真を撮ってしまった。
「パシャ!」
何でせつないのだろう?
何でこんなに心動かされてしまったのだろう?
いつも見ていた夕焼けなのに、何でこの日はこんなにも感動してしまったのか?
綺麗な夕焼けを眺めているうちに、
それは全てライティング・ゼミのせいではないか? と思った。
人生を変える天狼院ライティング・ゼミ。
はじめは本当に人生が変わるのか? と思っていたが、実際通い始めて記事を書いていくうちに、本当に人生が変わり始めた。
自分の人生が変わってくるというよりかは、自分の世界の見方が変わってくる。
常に世界をポジティブにとらえるようになってくるのだ。
天狼院店主の三浦さんは記事を書く際に、
「すべてポジティブに抜けてください。ポジティブに終われば、気持ちも常にポジティブになってきます」
そう言っていた。
不思議と文章をポジティブに書く癖を着くと、自分の思考もポジティブになってくるのだ。
世界を見る目が変わり、ありふれた日常が愛おしく思えてくる。
世界の隙間を覗く目が変わってくるのだ。
記事を書くための題材を探し、常にアンテナを張っている状態のため、
私はどんな些細なこともすべて前向きに捉える癖がついてきたのだと思う。
だから、ありふれた夕日を見ても、いつも以上に心動かされてしまったのかもしれない。
綺麗な景色に感動し、写真を撮ることも、ライティングに通じている。
日々のありふれた日常を切り取り、形にしていくのだ。
その切り取るものをポジティブに捉えるか、マイナスに捉えるかで生き方がだいぶ変わってくると思う。
店主の三浦さんは、どんなにつらいことがあっても、常にポジティブに捉えて、やりたいことをひたすらフルスロットルでやっている。
そんな姿が本当に羨ましいと思う。
三浦さんや天狼院のスタッフの人たちが働く姿を見ていると、
結局、自分の生き方を選ぶのは自分次第なのだなと思った。
今見ている世界をどう切り取るかは自分次第なのだと。
自分のような東京生まれ、東京育ちの人間には、特別ふるさとと呼べる場所があまり無いと思う。
そういった意味で、地方出身の人は羨ましかった。
飲み会で地元ネタを披露できるからだ。
しかし、ありふれた日常を自分の心のふるさとにしていくのは
自分次第なのだと思う。
どんな些細な場所も自分の世界の切り取り方次第でだいぶ変わってくる。
「君の名は。」の風景で感動した人も、ありふれた日常の中でも「君の名は。」のような風景がきっと眠っているはずなのだ。
いつものように天文台から夕日を眺めているうちに、そんなことを思った。
その日、私が見た夕日は、実に美しい眺めだった。
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