私VS腹痛。通勤ラッシュの戦いで学んだこと
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記事:Shota(ライティング・ゼミ6月コース)
「ヤバい。腹痛が襲ってきた」
私は内心呟いた。朝の通勤時、地下鉄に乗っている私を容赦なく腹痛が襲ってくる。
駅を出発したばかりのため、次の駅に到着するまでは約三分。その間当然だが外に出ることもできない。つまり、最低でも三分間はこの腹痛と格闘しないといけない。
外に出れない。という不安は、腹痛を倍増させる。
「これはまずいな」
腹痛のことを忘れるため他のことを考えよう。そう思い、周囲の人間を観察した。
一体周囲の何人が、私と同じく、腹痛に襲われ戦っているのだろうか? なんてことを考えた。
私の前でコーヒーを飲んでいる男性。彼は違うだろう。もし私と同じ状況であれば、コーヒーを飲む行為は厳禁。寒いと言いながらエアコンの温度を下げるようなものだ。
それでは私の右にいる女子高生はどうだろうか。
イヤホンをはめスマフォを終始操作している。彼女も違う。なぜなら、定期的に手鏡で自分の髪型を確認していたからだ。もし、私と同じ状況であれば、手鏡を鞄から出す。そんな単純な動作を行う余裕もない。
通勤、通学ラッシュの時間帯に加え、天候は雨。地下鉄の乗車率も増えるはずだ。私が今乗っている地下鉄もスーツを着て出社するサラリーマンと、制服を着て通学する高校生で埋め尽くされている。
「〇〇駅です」
自動音声と同時に地下鉄が止まった。目的地だった二つ前の駅で降りる。後二駅も耐えられる状態ではなかった。
地下鉄を降りると、私の脳内でトイレマップが一瞬にして作動した。
普段では考えられないスピードで脳が動く。
「このまま駅のトイレに直行しようか。いや、先客がいる可能性がある。それなら一度駅を出て近くのコンビニに……。いや、コンビニは諸刃の剣。駅の外に出るとコンビニは確かに多い。だが、先客がいた際の精神的ダメージが大きすぎる」
なんてことを考えていた。何度か同じ理由で途中下車していたため、トイレの場所やコンビニの数は把握している。しかし、今日に限っては少し状況が違う。
普段の腹痛レベルを3とすると、今日の腹痛レベルは10。三倍以上なのだ。つまりどういうことか、移動距離が限られており、駅のトイレに行って先客がいればコンビニに行く。なんてことができないのだ。
移動距離は短く、かつ、先客が絶対にいないトイレを探さなくてはいけない。
駅のトイレを使うか。それともコンビニ行くか。
そんなことを考えていると、一つの案が浮かんだ。
「確か駅をでてすぐ、オフィスビルがあるな」
人間というのは窮地にこそ力を発揮するのだろうか。この案は神様からのお告げと思われた。
オフィスビルであれば確実にトイレがある。それに先客がいる可能性が低いのだ。
私はすぐに駅をでてオフィスビルに向かった。
オフィスビルに到着すると入り口に守衛がいた。
正常な状態であればオフィスビルへの侵入を躊躇するかもしれないが、今は違う。そんなことを考えている余裕はなかった。
「おはようございます」
オフィスビルに事務所を構える従業員と思わせるため、守衛に対して挨拶する。
守衛は挨拶を返し、私の侵入を止めなかった。
もし、止められていたら……。と思うと実に恐ろしい。
急いでエレベーターに乗り込み三階を押す。何故三階か。二階は歯医者や薬局の店舗が入っている。さすがにスーツを着た男性が行くには不自然なため回避した。
三階以降は一般企業が入っているため、私の格好でも怪しまれないだろう。
三階に到着してフロアマップを確認する。トイレの場所を把握した私は小走りで目的地へと向かっていく。
少し進むと男女のトイレマークが見えた。
「勝った。腹痛に勝った」
私は腹痛への勝利を確信した。だが、簡単には勝利させてくれないようだ。
『清掃中』といった立札が、男性トイレの入り口の前に設置されていた。
まるでRPGの主人公だ。ゴールを見つけるがゴール前にバリアが張られてゴールできない。そんな主人公の気持ちになった。
『清掃中』の看板を無視して突入しようと思ったが理性が止めた。
RPGでも無理してバリアに突っ込むとダメージを負ってしまうのだ。
私は急いで一つ上の階へ向かう。幸いにも階段が近くにあった。
一つ上の四階に到着した私は、すぐ目の前のトイレマークを発見した。
トイレの電気が消えている。つまりトイレには誰もいないということだ。
私がトイレに入ると自動で電気が付いた。
この瞬間、長かった戦いが終わったのだ。
私VS腹痛は、私の完全勝利だ!
私はお腹が弱く、すぐにトイレに行きたくなる。
その為、花火大会やお祭り等、人混みが非常に苦手なのだ。花火大会の途中で腹痛に襲われたら私に勝ち目はない。
かれこれ十年近くこの腹痛と戦っている。
読者の方にも経験があるかもしれない、朝通勤途中での腹痛。
そんなとき、駅のトイレやコンビニに駆け込むことも多いだろう。しかし、今回の経験で分かった。
オフィスビルが一番最強だ!
駅やコンビニは先客がいる可能性が高いが、オフィスビルはその可能性が低い。仮に先客がいた場合も同じ建物内にトイレが複数存在する。
もし、朝の通勤時の腹痛で悩んでいる方がいれば、最寄り駅周辺のオフィスビル調査をオススメする。
確実に空いているトイレがある。という安心感は非常に心強く、頼もしい存在になってくれることだろう。
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