ワンオペ育児とマミートラックに苦しんでいた40代ワーママが1冊の本に出会っただけで人生が180度変わったのは本当か?
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:宮島 浩美(ライティング・ゼミ12月コース)
「浩美さん、僕はもう読んだんだ。
だから、よかったら」
あれはいまから10年ほど前のクリスマスが近づいて来た頃、
退職のためデスクの整理をしていた先輩から
渡された1冊の本
タイトルは
『 嫌われる勇気』
ベストセラーになっていたことは知っていても
当時の私は40歳という高齢で次女を出産し
2児の育児+正社員としての仕事を
平均睡眠時間4時間のワンオペでこなす日々
とてもじゃないけど
本なんて買う気力も読む余裕もなかった
「もらったところで読む暇ないけど」
と思いつつ、
ただでもらえるならと受け取った時、
なぜかずっしりと感じた感触
いまでも覚えている
デスクの袖机にそのまましまわれたそれは
引き出しを開けるたびに目に飛び込んできた
気になりながらも数週間が過ぎた頃
査定の面談で
「浩美さんはさ、
なんかいつもとっちらかってるよね」
いきなりである
詳しく聞けば
仕事への姿勢や
成果
どちらもとくに問題ないという
ならば、仕事の成果だけでなく
性格というか、性質というか
わたし自身を全否定するようなことを言われなければならないのか
上司が言わんとしていることはわからなくもない
あくまでもアドバイスとして、
行動を起こす前にいったん落ち着いて考えたほうがいい
ということを言いたかったのだと思う
小学校のころから通知表に書かれ続けてきたからよくわかる
行動に移す前に慌てちゃったかなという自覚もある
でも、改めて査定という場で聞かされると
40歳を過ぎても成長できてない自分が情けない想いと
時間短縮勤務をしていても仕事の質と量が落ちないように
子供たちを寝かしつけてから夜中にパソコンへ向かっていた日々が
その一言で足元から崩れ去ったような絶望感、
それに
「あなたにそこまで言われなきゃいけないの?」
という怒りに近い感情が一気に押し寄せて
涙をこらえるのが精いっぱいだった
30分ほどで終わった査定の面談
すぐに仕事に戻る気持ちにもなれず
かといってデスクで何もしないわけにもいかず
なんとなく資料を探すふりをして袖机の引き出しを開ける
その時、まっさきに目に飛び込んできた
『 嫌われる勇気』
なんとなく手に取って1ページ目をめくる
1ページ、もう1ページ
はじめは哲学者と対話している青年が屁理屈を言っているだけのように見えて違和感があったのに
いつの間にか引き込まれ、気が付くと終業時間になっていた
家に持ち帰り、
その日は子供たちを寝かしつけた後、パソコンには向かわず夢中で読んだ
そして、久しぶりに熟睡した
夫も仕事が忙しく、
深夜帰宅が多くて
家事育児に協力してもらえず
時間短縮勤務のため会社からも評価されない
睡眠時間を削って働き、
家事と育児を頑張っても
仕事、家事、育児
それぞれを単独でみてみると
どれもこれも中途半端
そんな状況を誰にも理解されず苦しかった
でも、その状況は他の誰でもない自分が ”選んだ” もの
頼らない
ひとりでやる
誰にも相談しない
苦しいって言わない
と自分で決めたのに
「わかってもらえない」
と周りに対して怒っていた
読み終わった後
妙にすっきりした気分になった
抱えることを
自分で決めたのなら
やめることだって自分で決めていい
そう思えた瞬間、
目の前にあった解決の糸口が見えない山積みだった問題が
跡形もなく消え去ってしまったのだ
その後、すぐ夫に
「時短勤務、やめようと思うの」
と話した
決して軽い気持ちで言えることではない
フルタイム働くとなれば
保育園のお迎えなど
夫の両親の協力がないとできないから
すると
「うん、いいんじゃない。子供たちのことは(俺の)親にも手伝ってもらおうよ」
とあっさり
義両親も
「働けるうちに好きなだけ働いた方がいいわよ。」
とこちらもあっさり快諾
電車とバスを乗り継いで1時間弱かかる我が家まで
子供たちを保育園へ迎えに行き、
私が帰宅するまで面倒を見てくれた
子供たちが小学校に上がっても
2020年の3月にコロナで学校が休校になるまで
週に3日を孫のために我が家で過ごしてくれたのである
会社での査定も
時間短縮勤務だからという理由で
5段階の下から2番目だったのに
上から2番目になった
そして、その年の昇格試験に推薦までしてくれたのだ
「浩美さんはさ、
なんかいつもとっちらかってるよね」
と言っていたのに、
時間短縮勤務をやめたので
仕事も持ち帰らなくなったのに
である
『嫌われる勇気』の第一夜にあった通り
「誰も私の苦労をわかってなんかくれない」
自分がみじめで
誰にも感謝できず
むしろ恨めしい気持ちで過ごしていた
私の不幸
それは、他の誰でもないわたしが選んだことだった
コロナが落ち着いて月に2回は行き来している義両親には
いまでも感謝以外の言葉が思いつかないし
当時の上司にも感謝している
あの衝撃な一言がなかったら
きっと今の私はいないと思うから
気が付けば、もう12月
あの頃保育園児だった子供たちはもう中学生と高校生になった
今年は2人で仲良く渋谷に行き、お小遣いから義両親へプレゼントを買っているらしい
それならママだって頑張っちゃうわよ
今年もチキンの丸焼きを焼いて
義両親と一緒に16度目のクリスマスを過ごそう
***
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