メディアグランプリ

心の支えはピンチになると助けてくれるウルトラマン


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記事:尾崎コスモス(ライティングゼミ2月)
 
 
人間、どん底だと思う時期が人生に何度かある。
そんなとき、救ってくれる人はいるだろうか。
私にとっては、高校からの友人がそんな存在だ。
彼とは高校一年生の時に出会った。
正反対な性格の彼は、いつも明るく、周りに人が絶えなかった。
うらやましく思ったことも、一度や二度ではない。
「彼のようにはなれない」
私は彼をいつもそんな目で見ていた。
性格が正反対だったことで、彼は私に興味を持ってくれた。
友人になるのに、まったく時間はかからなかった。

私の中では、彼は友人というよりは憧れの存在だった。
彼のことが憧れに変わったきっかけは、『合コン』だった。
高校は男子校だった。女子は保健のおばちゃんただ一人。しかも還暦を迎えたような容姿をしており、女子と呼ぶには40年遅い。彼女がいる男子もあまりいなかった。(と認識している)
そのため彼女が欲しければ、近隣の女子校との『合コン』しかなかった。
 
合コンのセッティングをするのは、彼女がいる奴がその彼女の高校とセッティングするか、女子校に女友達がいる奴がその女子校とセッティングする。
ほとんどはその二択。
合コンは争奪戦だった。
地元には当時、『三大お嬢様学校』が存在していた。
その三校との合コンは特に争奪戦だった。
じゃんけんという、古典的な方法で選抜されるのだが、単純明快な方法だからこそ奥深い。この時ほどじゃんけんを研究したことはなかった。
初手は『チョキ』を出す確率が何%だの、『あいこ』のあとは『パー』の確率が何%だの、研究に研究を重ねていた。
それほど苦労して『合コン』の権利を勝ち取ったにも関わらず、いざ合コンが始まると話せない。なにせ中学以来、女子とは話していない。圧倒的に実践が足りない兵士と同じだ。
 
それなのに、彼は違った。
お笑い芸人のように喋り笑いもとる。
キムタクと明石家さんまが同居している彼をみた時、「負けた……」と思った。イケメンなコメディアンに勝てるはずがない。
悔しさよりも尊敬し、憧れた。
そんな彼はアクティブで、いろいろなことを共に経験させてもらった。
合コンはもちろん、柔道やカラオケ、料理や好きな本まで。

カラオケなどは毎日のように通った。
当時は『カラオケボックス』なるものが登場したての頃で、物めずらしさもあって、ハマっていた高校生は多かった。イケメンなコメディアンの彼は歌も上手いから嫌になる。私も負けじと歌唱力を磨いては、合コンのカラオケでは気合を入れていた。
まあ、それでも話せなくては意味がなく、結局コミュニケーションが上手いやつが女子をかっさらっていった。そんな中に彼もいた。
彼の優しさで女子を紹介してもらうこともあったが、紹介してくれる女子も彼のことが好きでついて来る子を紹介してくれる場合が多かったため、私のスキル程度ではその日一日と持たずに飽きられた。
女子だけではなく、友人としてもコミュニケーションに長けていた彼と時間を積み重ねるうち、知らず知らずのうちに親友となっていた。
元々人を寄せ付けない雰囲気を持っていた私は、人と関係性を深めるのに時間がかかるタイプだった。
しかし彼とは時間をかけずに親友になれたのは、彼の人の心に寄り添う人柄だろう。
 
彼とは、高校を卒業しても友人関係を保っていた。途中はぐれたこともあったが、偶然の再会などもあったお陰で30年の間、友人で居てくれている。長いようで、長い。
私にとっては、誰にも話せないことを話す相手として、ずっと彼の存在があった。
ピンチの時に助けてくれるウルトラマンであった。ずっと心の支えだった。
 
私が住む場所をなくしては自分の家に居候させてくれ、働く場所をなくしては自分の会社に呼んでくれた。
私が好調な時にはほとんど顔すら見せないが、私がピンチになると知らないうちに目の前にいる。
こんな友人がいることを、私は誇りに思う。
私は築き上げてきたものもなく、地位もお金もないが、この友人を持てたことが何よりも誇れることだと心から言える。
その場を救ってくれるだけではなく
「今がどん底なら、這い上がるしかねえじゃねえか! 」
と勇気までくれる。
立ち上がるまで見守ってくれ、歩き出すまでみていてくれる。
「友達は多い方がいい」と聞くが、本当にピンチになったとき、助けてくれる友人が一人でもいたら、人生というのは捨てたもんじゃない。
「この人のために生きよう」
そう思える人がいる。
 
何度転んでも、立ち上がる勇気をくれた彼。
今度は彼が転んだ時、手を差し伸べるのは私だ。
その時が来るまで、頑張って生きよう。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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