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トラベルプランナーの仕事の戒めのため、渋谷にあるお鮨屋さんには通わなければならない。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:須田 久仁彦(ライティング・ゼミ)

私は食べることが大好きだ。美味しいものを落ち着いた気分で食べているときは、何とも言えない幸福感につつまれる。しかも職業はトラベルプランナーだ。旅行の最も重要な要素の一つは食事である。食べることが好きなのは、仕事の上でも好都合だ。

そんな私が大好きなお店の一つが、東京都の渋谷区にある。表参道駅から徒歩で7~8分。大通りから1本離れ、閑静な雰囲気が漂う場所だ。今日はどんな発見があるのだろう? このお店に入るとき、私はいつもワクワク感でいっぱいになる。

そのお店は、お鮨屋さんだ。しかし、他のお鮨屋さんと大きく違うのは無添加にこだわっていることだ。使う食材はもちろん、調味料やガリ、お茶にいたるまで、無添加のものにこだわっている。

無添加で、身体に優しいお鮨が食べられるのも訪れる理由の一つだ。しかし、それが最大の理由ではない。

このお店の存在を知ったのは、妻からだった。私も興味があり、二人で出かけることにした。

最初に訪れたとき、まず出されたのが冬瓜とトマトの煮物だった。それを口に運んだ瞬間、驚いた。味付け自体は抑えられ、優しい口当たりだった。しかし、今まで食べたものに比べ、明らかに違っていた。

続いて握りを出して頂いた。ここでも酢飯は酢の加減が抑えられた優しい味だった。やはり、今まで食べたものに比べ、明らかに違っていた。

明らかな違いとは、素材そのものの味の濃さ、美味しさが強く感じられたことだった。

全体的に優しい味になっていたのは、素材そのものの味を引き立てるためだったのだ。しかも、それでいて、味がまとまっていたのだ。

煮物は、素材同士の味が喧嘩することなく、優しい味の中でまとめられていた。また、握りも酢飯が優しい味付けになっていることで、新鮮な魚の旨味をさらに引き立てていた。口に運んだ瞬間、ふわりと舌の上でほどける握り具合も絶妙だった。

食べ進むうち、この美味しさの秘密は何か知りたくなった。もちろん無添加の素材を使っているからなのだろうけれど、きっと他に何かあるに違いないと感じた。手間やヒマを惜しまない、仕事が無ければここまで美味しくはならないのではないかと思ったのだ。

そのことをご主人に質問してみた。しかし、返ってきた答えは意外なものだった。

「素材が良いものを使ってますからね。手間をかけなくても、いい加減にやっても美味しくなりますよ」

良い仕事には手間は欠かせないはずだ。ご主人はただ、ご謙遜なさっているのだと思った。

例えば、私がお客様のトラベルプランニングを行う時は、必ず一手間かける。お客様の希望にあわせるのはもちろんだが、どうすれば旅をさらに楽しんで頂けるかを考え、プランニングする。

しかし、次のご主人からの一言が、私を納得させてくれた。同時に、過去の失敗を思い出させてくれた。

それは、トラベルプランナーになってからしばらく経った頃だった。プランニングの面白さが分かりはじめ、考えるのが楽しくて仕方がなかった。私はお客様の希望に合わせた見学場所に、何をどれだけ加えて楽しんでもらおうかと常に考えていた。せっかくの旅行だからこそ、出来るだけ様々な場所を楽しんで頂きたい! 地図を確認し、コースに組み込めそうな見学地を、出来る限り多く組み込んでいった。

こうして手間ヒマかけて考えたコースは、お客様に好評だった。やはり手間ヒマかければかけただけ、良いモノが作れると、すっかり有頂天だった。

しかし、しばらくして、あるお客様からこんなご意見が寄せられた。私がプランニングした旅行が、十分に楽しめる内容ではなかったとおっしゃったのだ。ショックを受けながらも、理由を伺うと、様々な場所を見られたのは良かったが、その分一つ一つの見学時間が短くなり、十分に楽しめなかったそうなのだ。

それは申し訳ありませんでした、と言ってはみたが、同時にムッとした気持ちもあった。こちらも喜んで頂こうとあれこれ考え、手間ヒマかけて作り上げたコースだったのだ。それを否定されるのは、自分を否定されたようだったのだ。

しかし、次のお客様からの一言で、私は大反省をすることとなった。穴があったら入りたいくらいに恥ずかしかった。

「必要以上に手間をかけ過ぎなんですよね」

お客様がそうおっしゃった時に、私は全てを悟った。その手間ヒマは、お客様に対してかけていたのではなかったのだ。全て自分の自己満足のためだったのだ。

手間をかけさえすれば、様々な見学場所を出来るだけコースに組み込めば、素晴らしいコースになると思っていた。それはお客様に対しての努力だと錯覚させ、とんだ勘違いを引き起こしていた。自己満足の押し売り以外、何物でもなかったのだ。

それ以来、私はさらにお客様のご希望を伺うようにした。旅行の目的に合わせ、ご希望の場所をコースに組み込みながら、見学場所を足すだけではなく、引くこともするようになった。手間をかけない分、それで良いのか不安にもなった。しかし、しばらくすると、以前よりもお礼の電話やメールを頂くことが増えた。

そして、この一言こそ、お鮨屋さんのご主人がおっしゃったのと同じ言葉だった。「多くのお鮨屋さんでは、必要以上に手間をかけすぎているんですよ」

手間をかけるのは、もちろん必要だ。しかし、その手間は旅行や観光地など素材の良さを十分に引き出すためのものであって、手間をかけることそのものが意義ではない。お客様に楽しんで頂くためには手間を足すだけではなく、時には引くことで、よりお客様が旅行を堪能し、楽しんで頂けるようなコースを作らなければならない。

まさにトラベルプランナーの仕事の極意を、お鮨屋さんでも改めて感じさせて頂くことができたのだ。

つい先日も、このお鮨屋さんに寄らせて頂いた。このお店に通う理由とは、トラベルプランナーとして余計な手間をかけ、自己満足の世界に落ちないように戒めるためなのだ。そのために、これからも通い続けるつもりだ。

しかし、それも最大の理由ではない。本当の理由は別にある。それは、ここでしか食べられない、極上の美味しさのお鮨があるからだ。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-02-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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