弁当は雄弁に語る
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記事 : 鼓星(ライティング・ゼミ)
メインのおかずは、竹輪のシソチーズ詰め天ぷら。副菜は素揚げニンジンの生姜醤油和えとウズラ玉子の目玉焼きダブル。目玉の1個が壊れてぐちゃっとなったのはご愛嬌。ご飯の余白にソラマメを3粒並べて彩りを添えた。スープの具材は椎茸の軸と大根と牛肉の細切れ。野菜たっぷり。チーズと肉でボリュームもある。起床からちょうど1時間の午前6時55分。よしっ、完成!
同居する相方のために週6日の弁当を作るようになって1年が過ぎた。
きっかけは間もなく結婚しようという友人の泣き言だった。「ダンナ様からの唯一のリクエストがお弁当作ってほしいってことなんだけど、今までほとんど料理なんてしてないし。全く、できる気がしない!」と頭を抱えていた。都会での気ままな独身生活に終止符を打ち、一大決心して東京から遠く離れた青森に嫁入りする友人にエールを送るつもりで「じゃあ、私もお弁当作り始めるよ! フェイスブックにアップするから、一緒に頑張ろう」と言ったのは、その場のノリ。何しろ、私は同居人からリクエストされたわけではないし。1カ月ぐらいは友だちに付き合って、適当なところでフェードアウトしてもいいか……と軽い気持ちだった。
我が家は土鍋でゴハンを炊いているので、寝る前にタイマーセットという訳にはいかない。
今までよりも1時間早く起きて米を研ぎ、30分間水に浸けて、13分炊飯、15分蒸らす。キッチンに立ってから、土鍋の蓋を開けるまでのちょうど1時間でおかず3品とスープを作ると効率が良い。
「早起き」「起きた瞬間からフルスロットルで動く」という2つのハードルを超えるのは、最初はキツかった。けれど、1カ月過ぎる頃にはすっかり習慣として定着して、なんだか弁当作りが楽しくて、フェードアウトするのが惜しくなった。何しろ、短径9.5cm、長径14cmのシンプルな楕円の弁当箱は、私が自由に使っていいキャンパスであり、「私そのもの」でもあるのだ。
メインのおかずに使った竹輪と副菜のウズラの玉子は賞味期限が迫っている半額見切り品。会社帰り、閉店間際のスーパーでの見切り品ハンティングは趣味と実益を兼ねた私の日課。節約できるだけでなく、動物としての狩猟本能が満たされて、テンションが上がる。晩ご飯のおかずも、弁当にも見切り品フル活用。
ニンジンは福島県相馬市で農業を営む友人からお取り寄せしているお野菜セットに入っていたもの。昨年、農場を訪ねて遊びに行った時に、奥さんが「ニンジンやダイコン、インゲンを素揚げしてたっぷりのおろし生姜で和えると、いくらでも野菜が食べられるのよ」と教えてくれた。それ以来、我が家の定番おかずの一つになっている。
竹輪に詰めたチーズとシソは、実家への差し入れのために購入したものの流用。両親は何とか自力で暮らしているものの、高齢のために食事が単調になりがち。食卓に変化つけるために、私が毎週末におかずを2~3品作って届けることにしている。先週末届けたうちの1品は、鶏ささみにシソとチーズを挟んだフライ。ちょっとずつ余っていたプロセスチーズとシソが弁当の材料に化けた。彩りとして添えたソラマメは、おかずを届けたお礼に、実家でお裾分けしてもらった初物。
毎週金曜日の昼休みは、ランチもそこそこに、会社の近くで開催されているマルシェでお買物。スーパーで買うよりも断然新鮮で活き活きとした野菜が並んでいる。先週末にゲットした山梨県の農家さんの立派なシイタケは、カサの部分はバター醤油で焼いて晩ご飯のおかずにして、太い軸の部分を残しておいてスープに入れた。同じくスープの具になった大根は危うく干からびる寸前だったし、使い残しで冷凍庫に突っ込んでおいた牛肉はメイン料理に使うには少なすぎる50グラム足らず。でも、中途半端な食材も、ごった煮スープにしてしまえば、味わい深く、無駄もない。
弁当の具材一つひとつに「私の考え」「私の行動様式」「私の生活スタイル」が詰まっている。
同居している相方は小学校・中学校時代の同級生だったが、大学時代に1度食事をしたのを最後に20年間以上、音信不通だった。お互いの20歳代、30歳代の日々を知らない私たちだけれど、弁当に入っているものを通じて、少しずつ「私」が伝わっているはずだ。ついでに毎日、野菜たっぷり目にしているのは「風邪ひくなよー!元気で働け!」のメッセージも込めているつもり。弁当は私を語る。誰よりも雄弁に。
ダンナ様のリクエストに応えてヒーヒー言いながら弁当作りを始めて新米主婦の友人も、結婚から1年が経って、すっかり料理上手になってきた。結婚当初は玉子焼きとウインナーに白いご飯にふりかけを掛けた幼稚園児向けの弁当みたいだったのに、最近は、近所の漁師さんにお裾分けしてもらったというブリの照り焼きや、家庭菜園で育てたホウレン草の胡麻和え、自家製のキュウリのぬかみそ漬けなど、大人がホッとできるおかずが詰められている。遠く離れた友人とは、年に数回しか会えなくなったけれど、FBにアップされる写真を見ていると、少しずつ地元に根を張り、幸せな毎日を送っているのが伝わってくる。
弁当は雄弁だ。
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